Bitcoinを中心とした今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
Kraken、暗号資産ユーザーの48%が、自身のデジタル資産の安全性における最大のリスク要因として「自分自身の行動」を挙げているとの調査結果示す
北米最大のBitcoin ATM運営会社Bitcoin Depotの決算を踏まえ、Bitcoin ATMは極めて収益性の高いビジネスであるとの見方
Fidelity Digital Assets、Bitcoinの歴史上初めて「10年以上動いていないコイン」が新規発行量を上回るようになったとする記事を発表
オハイオ州下院、200ドル未満のBitcoin決済を非課税とする「Ohio Blockchain Basics Act(HB 116)」を可決
タイ、Bitcoinおよびその他のデジタルアセットの売却による利益に対する5年間の所得税免除措置を正式に承認
Section1: Technology
1.1. Bitcoin L1
●OP_RETURNデータサイズの制限(現在80バイト)を拡大する提案について、ビットコインを“通貨台帳”から“汎用データプラットフォーム”へと変質させる危険性があると警告。
これにより分散性が損なわれ、金融主権という本質的価値が脅かされると論じている。
https://lightning.news/the-op_return-debate/
●Bitcoin Optech Newsletter #359|Bitcoin Coreリポジトリへの一般参加を制限する提案
https://bitcoinops.org/ja/newsletters/2025/06/20/
1.2. Lightning Network
●ペイメントチャネルネットワーク全体の支払い成功率を最大化するためのチャネルリバランスに関する考察
●x402プロトコルを用いて、Ghostブログ向けに設計されたマシンフレンドリーなペイウォール。
Coinbaseハッカソン向けに開発されたものでx402決済プロトコルとCoinbase CDP(決済処理基盤)を用いて支払い処理を行うもの
●AIエージェント向けのBitcoin決済機能「Alby MCP Server」。
NWC(Nostr Wallet Connect)およびAlby Hubを用いて、AIツールがLightning決済の送受信を自律的に実行可能に。
satsの送受信/ウォレット残高の照会/トランザクションの自動化が可能となる
https://x.com/getAlby/status/1935352237129134258
1.3. セキュリティ
●Kraken、暗号資産ユーザーの48%が、自身のデジタル資産の安全性における最大のリスク要因として「自分自身の行動」を挙げているとの調査結果示す。
米国の仮想通貨保有者の5人に1人以上が、詐欺や盗難の標的となった経験があり、さらに36%が「自分も次に狙われるのでは」と不安を感じている。
しかし、保有者のほぼ半数(48%)は、盗難や詐欺に遭うことよりも、自分自身がセキュリティミスを犯すことを恐れている。
この懸念は現実的で、回答者の67%が「誤って別のウォレットに送金する」「秘密鍵を紛失する」といった、一般的なミスを少なくとも1回は経験している。
こうしたセキュリティ不安が、仮想通貨の普及を妨げている。回答者の半数は、「セキュリティへの懸念から、これ以上の投資を控えている」と述べている。
95%は、2段階認証や強力なパスワードなど、何らかの安全対策を講じていると報告しているが、それでもパスワードの使い回しやシードフレーズの安全でない保管といった行動が見られる。
回答者の約3分の1(31%)は、「今後5年で、生体認証やAI駆動のセキュリティ技術が仮想通貨の安全性に最も大きな影響を与える」と考えている。
セキュリティ管理における「自己責任」が、ユーザーに完全な資金管理の自由を与える一方で、多くの投資家にとって不安の原因にもなっている。
https://www.kraken.com/learn/crypto-safety-survey
●Chainalysisによる、Stablecoinのセキュリティリスクに関する記事。
中央集権型Stablecoinには「カストディリスク」や「中央集権的な単一障害点」「規制リスク」、分散型Stablecoinには「スマートコントラクトの脆弱性」や「オラクル依存」といったリスクがある
https://www.chainalysis.com/blog/stablecoin-security-risks/
Section2: Business
2.1. ペイメント
●北米最大のBitcoin ATM運営会社Bitcoin Depotの決算を踏まえ、Bitcoin ATMは極めて収益性の高いビジネスであるとの見方。
Bitcoin Depotの取引量は、Bitcoin価格の変動とは低相関で、主に送金など投機以外の用途での利用が中心。
マイニングと比べると、難易度調整がないためATMの方が収益安定性が高く回収期間も短い。また、ASICのように性能陳腐化しないため経済耐用年数も長い
https://blockspace.media/insight/bitcoin-atm-the-best-btc-business-youve-never-heard-of/
●Serendipity AI、LLMが出力するMarkdown形式のテキストを、高品質なPDFファイルに変換する実験的サービスを開発。
LLM出力 → Markdown → LaTeX → PDFというワークフローを、sats払いだけで完結
https://x.com/serendipity_ai/status/1934980915668869385
2.2. マイニング
●2025年6月の取引手数料のブロック報酬に占める割合が0.96%に下落。2022年以降で最も低い水準に。
手数料収益は激減する中にあって、マイナーの収益構造はブロック報酬依存度が極めて高く、かつ脆弱な状況に陥っている
採掘難易度と収益圧迫の二重苦
https://theminermag.com/news/2025-06-16/bitcoin-transaction-fees
●フランスの国会議員、国家の電力システム最適化および余剰エネルギーの有効活用のため、Bitcoinマイニングの導入を提案
フランスの電力の70%以上は原子力で賄われており、余剰電力が慢性的に発生
マイニングはこの余剰を経済的資源へ転換できる可能性がある
電力需要と供給の変動に応じて、マシンの稼働を即座にオン・オフ可能
2.3. 社会生活
●パナマで地域住民1,000人にBTCウォレットを配布し、全住民(子どもから高齢者まで)に$5分のBTCをプレゼントした上で、ビットコイン教育ワークショップの開催を行う、Bitcoin循環経済を目指すプロジェクト
https://geyser.fund/project/bitcoinbocas
2.4. 投資
●Coinbaseのグローバルリサーチ責任者が、企業によるBitcoin購入トレンドが暗号資産市場にシステミックリスクをもたらす可能性があるとの見方を示す。
複数企業が債務返済のために同時に一斉売却に動いた場合、市場の大量清算や広範な仮想通貨の売り圧力を引き起こす可能性
価格が下落し、企業が出口(売り抜け)の狭まりを感じた場合に、他の企業もパニック売却に走ることで、市場は実際に債務返済の問題が顕在化する前に不安定化する可能性
https://archive.md/8P3xZ#selection-5821.0-5829.142
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.5.1. 米国
●Fidelity Digital Assets、Bitcoinの歴史上初めて「10年以上動いていないコイン」が新規発行量を上回るようになったとする記事を発表。
10年超保有カテゴリが1日平均566BTCであるのに対して、1日あたりの発行量は450BTC
https://fidelitydigitalassets.com/research-and-insights/increasing-impact-bitcoins-ancient-supply
●BofA、最新のリサーチノートにて、21世紀における技術革新の中で、ビットコインを印刷機やフォード・モデルTと同等の破壊的イノベーションと比較し、ソーシャルメディア・iPhone・AIといった技術と並ぶとの見方を示す
2.5.2. 欧州
●スペインの大手銀行BBVA、富裕層顧客に対し、ポートフォリオの3%〜7%をBitcoinおよびEtherに配分するよう推奨しているとDigiAssetsカンファレンスで語る。
リスク許容度の高い顧客には、最大で7%まで暗号資産を組み入れるよう助言しているとのこと
https://www.pymnts.com/news/retail/2025/labubu-is-becoming-its-own-asset-class/
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米国上院、包括的なStablecoin制度を整備するGenius法案を可決
https://bitcoinmagazine.com/news/u-s-senate-passes-stablecoin-bill-the-genius-act
●The New York Timesによる、Genius法案は経済的混乱を引き起こすとの記事。
「1ドルのStablecoin = 1ドルの流動資産」の裏付けが求められているが、バランスシートの完全性/監査の正確性/規制当局の監視能力がすべて100%機能していることが前提であり、あまりにも楽観的な仮定。
https://archive.md/HBMps#selection-693.0-949.319
●米オハイオ州下院、200ドル未満のBitcoin決済を非課税とする「Ohio Blockchain Basics Act(HB 116)」を可決
200ドル未満のBitcoin決済に対する「de minimis(少額)免税」規定
デジタル資産マイニングや、自己保管(セルフカストディ)やノード運用に関する個人の権利に関する基礎的な法的定義
https://cryptoslate.com/ohio-passes-blockchain-bill-allowing-200-tax-free-bitcoin-payments/
3.2. アジア太平洋ほか
●タイ、Bitcoinおよびその他のデジタルアセットの売却による利益に対する5年間の所得税免除措置を正式に承認。
タイ証取により認可された仮想通貨交換所・ブローカー・ディーラー経由の取引について、所得税(キャピタルゲイン税)を免除するもの。
実施期間は、2025年1月1日から2029年12月31日まで
https://atlas21.com/thailand-abolishes-taxes-on-bitcoin-five-year-tax-exemption/
●ブラジル、小口取引に対する暗号資産の非課税制度を撤廃し、自己管理型ウォレットや国外保有資産を含むすべての利益に一律17.5%の税率を適用すると決定
https://cointelegraph.com/news/brazil-ends-crypto-tax-exemption-imposes-flat-17-5-rate
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