クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
MakerDAOのcofounderであるRune Christensen氏、DeFiが価値を生み出す「機会の窓」が閉じられたとしてDaiのフリーフローティングモデルを提案
コード、表現、トルネードキャッシュ・ミキサー:何が制裁対象で、何が制裁対象ではないのか
シンガポールMASが、「デジタルアセットイノベーションにYes、暗号通貨投機にNo」との見方を示す
米FBI、サイバー犯罪者がDeFiプラットフォームのスマートコントラクトの脆弱性を悪用して暗号通貨を取得し、投資家が損失を被るケースが増加している旨、投資家へ警告
Ellipticによる、NFTと金融犯罪に関するレポート
Web3.0の落とし穴、ブロックチェーンのスケーラビリティー問題を考える
デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会第4回でお話しした内容
エルサルバドルのBitcoin債、今年後半までさらに延期との報道
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●Baltic Honeybadger2022(day 1)の動画(アジェンダはこちら)
●「Baltic Honeybadger」が9/3-9/4で開催されるRigaの「Riga Bitcoin Week 2022」(9/1-9/5)
https://baltichoneybadger.com/riga-bitcoin-week
●ソフトフォークを必要することなしに、ノードがチェーン自体の状態を確信する上でSTARK proofを受け入れ可能とする取組み
●日本でビットコインを流行らせるにはどうすればいいのか本気で考えてみる①
金銭的利益に関わらず新しい技術やトレンドをフォローしたがるアーリーアダプター的な人、いわゆる「ビットコイナー」というやつが一定数以上いることを、日本のポテンシャルとして挙げている。
●ビットコイナー気質を感じる連銀総裁/岐路に立つEthereum
NYDIGがライトニング特化のアクセラプログラム創設
G20各国のクリプト規制進捗
連銀総裁に見え隠れするビットコイナー気質
1.1.2. L2:Lightning Network
●NYDIG、Lightningアクセラレータ構想の立ち上げを明らかに
●「Baltic Honeybadger」が開催されている「Riga Bitcoin Week 2022」(9/1-9/5)の模様
●LN版エクスプローラーが公開/LN支払いで画像生成AIをお試し
Mempool、ライトニング版エクスプローラーを公開
LightningTipBotにOpenAIのDALLE-2 APIを組み込み
P2Pでビットコイン取引ができるRoboSatsが、umbrelノード上でアプリとして利用可能に
1.2. Ethereum
(特になし)
1.3. 他チェーン・要素技術
●web3開発者スタックの俯瞰図
https://blog.coinbase.com/a-simple-guide-to-the-web3-developer-stack-8364b612d69c
●全ての“入り口”はIDから~Microsoft Entraで学ぶ、やさしいID基礎知識 第3回:組織を超えたID管理の新アプローチ~ ビジネスユーザー向けの初めての Microsoft Verified ID
●コード、表現、トルネードキャッシュ・ミキサー:何が制裁対象で、何が制裁対象ではないのか
https://p2ptk.org/freedom-of-speech/3812
●Web3.0の落とし穴、ブロックチェーンのスケーラビリティー問題を考える | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02132/082900006/
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. 社会生活
●アルゼンチンのメンドーサ税務局が、暗号通貨で税金や手数料を支払可能とするガイダンスを発表している
●エルサルバドルのBitcoin債、今年後半までさらに延期との報道
https://fortune.com/2022/08/30/el-salvadors-bitcoin-bond-delayed-again/
2.1.2. RegTech
●Ellipticによる、NFTと金融犯罪に関するレポート。
Tornado Cashについても、「2022年8月にOFACから制裁を受けるまで、NFTマーケットプレイスで処理された1億3760万ドルの暗号資産の出所であり、NFT詐欺の収益の52%に選ばれたロンダリングツールとなっていた」との指摘。
NFTベースのプラットフォームには、制裁措置のスクリーニングソリューションがますます不可欠になってきているとしている。
https://www.elliptic.co/hubfs/NFT%20Report%202022%20-full.pdf
2.2. NFT
2.2.1. トラディショナルプレイヤー
●Meta、facebookとinstagramを横断してデジタルコレクティブルを投稿できる機能を導入。デジタルウォレットをどちらかのアプリに接続し、双方でNFTを共有可能に。
2.2.2. NFTエコシステム
●Web3.JP 有志一同による自由民主党 デジタル社会推進本部 Web3PT 宛の「NFTホワイトペーパーへの追加的提言ペーパー」
https://www.hottolink.co.jp/download/pdf/220831_Web3JP_tsuikateigen.pdf
2.3. DeFi
●MakerDAOのcofounderであるRune Christensen氏が、Daiのフリーフローティングモデルを提案している
その理由として、①クリプトに対する取り締まりが事前通告なしに行われ、②正当で無実のユーザーであっても回復の可能性がないことがある、という2点によって、DeFiが価値を生み出す「機会の窓」が閉じられたことを挙げている。
唯一の選択肢は、RWAに対する相対的なエクスポージャーの上限を設定し、RWAエクスポージャーの削減を通じて攻撃対象を限定することだとしている。Endgame Planは、これに対処するために効果的なツールとして、「MetaDAOs」と「Protocol Owned Vault」を提供するもの。
DeFiが銀行として規制されず、公共的で中立的な金融ユーティリティとみなされることで、RWA統合を通じて金融システムに適用された場合、大規模な再生エネルギーインフラへの大量融資や、発展途上国が金融サービスへの大規模なアクセスなどが可能になる「チャンスの窓」を想定していた。
しかし、この窓は、DeFiが真の価値を何も提供できず、TerraやCelsiusなどの大暴落でイメージが台無しになったため、現在では閉じられている。ブロックチェーン業界は、価値のあるものを生み出すことに失敗しただけでなく、詐欺によって嘘をつかれた無実の一般人の貯金を破壊してしまった。
「チャンスの窓」を信じていたことは甘かった。現実に即して世界観を再調整する必要がある。クリプトに対する物理的な取り締まりは、事前通告なしに行われ、正当で無実のユーザーであっても回復の可能性がないことがあることが分かった。
①RWAの押収・担保凍結など取り締まろうとする試みは、無実の正当なユーザーが対応する時間を確保するため、事前告知されると考えていたが、Tornado Cash制裁事件では、罠にかかるまで秘密にされ、無実のユーザーがTornado CashのスマートコントラクトでUSDCを凍結されてしまった。
②RWA担保の凍結が起きても、無実のユーザーがお金を回収できる道があると考えていたが、残念ながら、TC制裁に見られるように、USDCブラックリストの影響を受けリスクと指定されたETHは、たとえ完全に無実で合法的にTCを使用したとしても、その資産を合法化する容易な道はない可能性がある。
このように、コンプライアンスを遵守し銀行にならなかった場合の影響は極めて深刻であることから、根本的な選択肢は2つしかない。
選択肢①:コンプライアンスを遵守し、最終的には十分な時間をかけて、Makerをある種の次世代フィンテック製品/ネオバンクに変える道
選択肢②:「分散化」によって、規制当局の取締りがプロトコルに与えるダメージの程度を厳しく制限する道
結果的に、Daiの意図と目的が常にそうであったように、「分散化の道」を選ばなければならない。
「分散化の道」は物理的な脅威、特にポートフォリオ全体に占めるRWA担保の割合で攻撃対象を限定することを意味するため、その道を選ぶということは、Daiがフリーフローにならざるを得ない可能性があることに備えるということである。
2.4. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.4.1. 欧州
●Credit Suisse、31mスイスフランのデジタルアセットの顧客資産保有と開示
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0001053092/000137036822000068/cs-20220630_991.htm
2.4.2. 日本
●シンガポール金融管理局(MAS)のイニシアチブ「プロジェクト・ガーディアン」へ参画~資産トークン化の可能性と付加価値のあるユースケースを模索~(SBIデジタルアセットホールディングス)|ニュースリリース|SBIホールディングス
https://www.sbigroup.co.jp/news/2022/0902_13282.html
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米FBI、サイバー犯罪者がDeFiプラットフォームのスマートコントラクトの脆弱性を悪用して暗号通貨を取得し、投資家が損失を被るケースが増加している旨、投資家へ警告
https://www.ic3.gov/Media/Y2022/PSA220829
●Michael J. Saylor氏、10年以上コロンビア特別区に居住し、何億ドルもの所得を得ながら一度もDCの所得税を納めたことがないとして提訴される。
MicroStrategyも被告として名を連ねており、同社がSaylor氏の合法的な脱税を手助けするために共謀したと主張されている。
https://oag.dc.gov/release/ag-racine-sues-dc-based-billionaire-michael-saylor
3.2. アジア太平洋ほか
●シンガポールMASが、「デジタルアセットイノベーションにYes、暗号通貨投機にNo」との見方を示している。
MASは暗号通貨へのリテール投資に対して強い警告を発しており、暗号通貨へのリテールアクセスを制限するため、ますます強力な措置を講じているとの言及。
MASは、デジタル資産のエコシステムに大きな可能性を見出し積極的に推進している一方、暗号通貨の投機は強く阻止し制限しようとしているとの旨。
3.3. 日本
●デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会第5回
https://www.fsa.go.jp/singi/digital/gijiroku/20220606.html
●「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会第5回でお話しした内容」|Shin’ichiro Matsuo
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