Bitcoin・クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
クリプトガレージ、Lightning channelを開設し、その中にDiscrete Log Contract (DLC) を設定した上で、channel全体を閉じることに成功。
米テキサス州の送電網運営会社ERCOT、冬場の電力ピーク需要を満たす上でBitcoinマイニングに抑制効果があるとするレポートを発表
Bitcoinネットワークのゼロエミッション(太陽光・水力・地熱など)比率
Lightning Networkのプライバシーについて
TBD、web5に該当する属性について基本方針を発表
ブラジル議会、暗号通貨の取引と使用に関する規制を承認
欧州ECB、Bitcoinの立ち位置について考察するブログ記事を発表
三菱UFJ信託銀行、「パーミッションレス型ステーブルコイン」の健全な導入・普及に向けたワーキンググループの設置を発表
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●クリプトガレージ、Lightning channelを開設し、その中にDiscrete Log Contract (DLC) を設定した上で、channel全体を閉じることに成功。
DLCを組み込んだ初のメインネット Lightning channel開閉
https://medium.com/crypto-garage/dlc-on-lightning-cb5d191f6e64
●DLC on Lightningについて、Bitcoin Magazineのサマリー記事。
これまで解決されていなかった大きな設計課題の1つである、DLCに関わる異なる当事者が、一方に不当な優位性を与えること無しに、LightningチャネルとDLCチャネル内でcontractの状態を更新できるようにするもの
https://bitcoinmagazine.com/technical/dlcs-on-lightning-and-bitcoin-smart-contracts
●‘This Month in Bitcoin Privacy’ newsletter |November 2022
FINMA Lowers KYC Threshold
Quantitative Measuring of Fungibility
Coinsquare Data Breach
Anti-CBDC Campaigns
Tornado Cash Update
Legends of Lightning Finalist
https://enegnei.github.io/This-Month-In-Bitcoin-Privacy/November_2022/
1.1.2. L2:Lightning Network
●Lightning Networkのプライバシーについて
Lightningは、中央台帳や全取引の永久記録が無いほか、すべてのトランザクションがP2Pで実行され、取引同士に関連性がないため、Bitcoinの使用におけるプライバシーの向上に大きく貢献できるものの、プライバシー上の課題が知られている。
LightningトランザクションがBitcoinトランザクションと関連付けることができると、当該トランザクションのプライバシーを継承することになる。
ightningトランザクションに関わるノードは当該トランザクションについて一定の事実を知っているため、そのデータを他者と共有したり、他の情報と関連付けたりすると、Lightningトランザクションの匿名性が損なわれる。
多くの接続先を持つノードは、Lightning Network上のオペレーションについて多くの情報を知ることができるため、それをもとに有効な推論を作成できる可能性が高くなる。
https://lightningprivacy.com/en/introduction
https://abytesjourney.com/lightning-privacy/
●chaincodelabsが発表したLightning Networkに対するDoS攻撃に関する最新の研究結果「Unjamming Lightning: A Systematic Approach」についてのスレ
https://eprint.iacr.org/2022/1454
●ライトニングに関する新アイデアが続々。ハッカソンPJの紹介 - by ごっつ
https://diamondhandscommunity.substack.com/p/
●Diamond Handsの新サービスやWikiサイト、イベントが続々と発表 - by ごっつ
●Nayuta Wallet v0.1.3リリース
https://medium.com/nayuta-inc/nayuta-wallet-v0-1-3%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9-470c42fd92f5
1.2. Ethereum
●rollupsの一つであるStarkNetについて、解説記事
1.3. 他チェーン・要素技術
●TBDが発表した、web5に該当する属性について基本方針
●TBD、「Web5」を商標登録する計画について保留する旨を発表
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●Stripe、開発者向けに、プラットフォームに直接埋め込み可能なウィジェット「Fiat-to-Crypto onramp」を発表。Bitcoin・暗号通貨への法定通貨のオンランプを可能に
従来、エンドユーザーをオンチェーンとのインターフェイスに必要な暗号通貨をウォレットに入金してもらうことが困難であり、開発者は、不正行為対策・KYC要件をクリアした上で、ユーザーがアプリケーションを使用できるよう、シームレスで高い換金性を持つ決済体験を提供する必要があった。
このような複雑さを解消するために、カスタマイズ可能なウィジェット「Fiat-to-Crypto onramp」を構築したもの。
開発者はDEX・NFTプラットフォーム・ウォレット および dAppに直接埋め込むことができる。
KYC・決済・詐欺対策・コンプライアンスはStripeが処理するため、複数のサードパーティサービスを統合する必要なしに、10行ほどのコードで統合可能に。
StripeのFiat-to-cryptoオンランプは、Audius・Magic Eden・Argentなどのパートナーと共に実用化されているとのこと。
https://stripe.com/en-au/blog/crypto-onramp
2.1.2. 投資
●Blockchain Associationがまとめた、FTX破綻に関するメモ
●BlockFi、連邦破産法第11条の適用を申請し再建手続を開始
https://www.businesswire.com/news/home/20221128005451/en/
2.1.3. マイニング
●米テキサス州の送電網運営会社ERCOTが発表した、冬場の設備発電能力の妥当性を評価するレポートによると、Bitcoinマイニングが冬場の電力ピーク需要を満たす上で、1.7GWの抑制効果があるとのこと。
これは、エネルギー貯蔵(0.9GW)、太陽光(1.5GW)、水力(0.4GW)よりも多くの容量であり、Bitcoinマイニングがテキサス州の送電網に利益をもたらす可能性。
テキサス州は2021年に異常気象に見舞われ、送電網に負担がかかることで被害をもたらしたが、Bitcoinマイニングは、こうした異常気象の際に送電網が嵐を切り抜けるための容量バッファーを提供できる。
●Bitcoinネットワークのゼロエミッション(太陽光・水力・地熱など)比率について
オングリッド型(電力網を用いてマイニング事業者)のみでなく、オフグリッド型(自社で発電所を保有したり、発電機に配管された排気メタンなど電力源を用いるマイニング事業者)も考慮してした算定モデル。
52.8%がオフグリッド型であり、その65.5%がゼロエミッションを利用
オングリッド型ではゼロエミッション比率は37.5%
Bitcoinネットワーク全体では52.2%がゼロエミッションエネルギーを利用しており、Bitcoinネットワークは主たるエネルギー源として石炭を用いない数少ない産業の一つ
https://batcoinz.com/a-more-complete-picture-of-bitcoins-energy-usage/
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
●インターディーラーブローカーTP ICAP、英FCAにデジタル資産プロバイダーとして登録。
Fidelity Digital Assetsと協働で、暗号資産のスポット取引をマッチングして実行するプラットフォームを提供
https://www.coindesk.com/policy/2022/12/01/tradfi-giant-tp-icap-gains-uk-crypto-license/
2.6. 中銀デジタル通貨
2.6.1. グローバル
●CBDC Research List(Last updated: November 2022)
https://docs.google.com/document/d/1c8iGtoG7BkPr-iufnIPELEWvtZiNtouOyJp2IYjhAEY/edit
2.6.2. 米国
●米DTCC、ホワイトペーパー「米国中銀デジタル通貨によるポストトレード証券決済の検討」を発行。
トークン化証券とホールセールCBDCの運用方法を探るパイロットの結果を概説したもの。
パイロットには、Bank of America、Citi、Nomura、Northern Trust、State Street、Virtu Financial、Wells Fargoなどの大手市場参加企業が参加。
2.7. デジタル証券
●「パーミッションレス型ステーブルコイン」の健全な導入・普及に向けたワーキンググループの設置について|三菱UFJ信託銀行株式会社のプレスリリース
三菱UFJ信託銀行株式会社が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム」(略称DCC)が、本邦における「パーミッションレス型ステーブルコインの導入・普及を目的とした「パーミッションレス型ステーブルコイン・ワーキンググループ」を設置し、検討を開始することを発表した。
パーミッションレスステーブルコインについては、ネットワークアクセスに許可が必要なパーミッションドブロックチェーンと異なり、パーミッションレス型ブロックチェーンが内在するリスク特性を踏まえたスキーム面・技術面の工夫が必要。
あわせて、2023年に施行予定の改正資金決済法を見据えながら、民間事業者の声を1つにまとめ、関係当局の皆さまと適切かつ迅速にコミュニケーションを取りながら進めていくことも重要。
そのため、関係当局・協会のオブザーブの下、金融機関、取引所/PTS、証券会社、暗号資産交換業者、ソフトウェア会社及び法律事務所等の計42組織とワーキンググループを設置。
2022年内を目途に、国内発行および海外発行パーミッションレスステーブルコイン導入に必要なスキーム案および機能を公表予定。
2023年初より、上記スキーム案のうち国内規制に照らして独自実装を施す必要がある場合には、ステーブルコインの発行・管理基盤である「Progmat Coin(プログマコイン)」を用いて適切なパーミッションレスステーブルコインを発行するための、業務・システムの設計、合意形成、及び社会実装の開始 (マルチチェーン対応)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000036656.html
●「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック東京汐留」の取得に関するお知らせ~将来的にデジタル証券での商品化を目指す~|三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000056997.html
Section3: Regulation
3.1. 米国
●ブロックチェーン上のトークンは「証券」なのか、最新の米判決にみる日米の違い | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02132/112800010/
3.2. 欧州
●欧州ECB、Bitcoinの立ち位置について考察するブログ記事を発表
Bitcoinは法的取引に使われることはほとんどない
Bitcoinの実際の取引は、面倒で時間がかかり、費用もかかる。
Bitcoinは、法的な現実世界の取引にかなりの程度として使用されたことがない。
規制が承認と誤解されかねない
暗号資産のリスクは、規制当局の間でも議論の余地がなく、FSBは、暗号資産と市場がもたらすリスクに見合った効果的な規制と監督を受けるよう呼びかけている。
現在の暗号通貨の規制は、誤解によって形成されている部分がある。イノベーションには何としてもスペースを与えなければならないという信念が頑固に残っている。BitcoinはDLT/ブロックチェーンという新しい技術に基づいているため、高い変革の可能性を持っていると思われるが、これらの技術は、これまで社会に対して限られた価値しか生み出してこなかったし、有望な技術の利用はその技術に基づく製品の付加価値の十分な条件ではない。
規制による制裁は、顧客がBitcoinにアクセスすることを容易にすべく、従来の金融業界を誘惑してきたと思われる。金融機関の参入は、Bitcoinへの投資が健全であることを小口投資家に示唆してしまっている。
さらに、Bitcoinのマイニングは、オーストリアに匹敵する電力を年間消費すると推定されるほか、Bitcoinシステム全体ではオランダ全体と同量の電子廃棄物が発生しているといった、前代未聞の汚染者であることも注目すべき。
Bitcoinのプロモーションは銀行にとってレピュテーション・リスクを伴う
Bitcoinは決済システムとしても投資形態としても適切ではないため、合法化されるべきではない。
同様に、金融業界も、Bitcoin投資を促進することによる長期的なダメージに注意すべき。
顧客関係への悪影響や業界全体への風評被害は、Bitcoin投資家がさらなる損失を出すと甚大なものになる可能性がある。
https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2022/html/ecb.blog221130~5301eecd19.en.html
3.3. アジア太平洋ほか
●ブラジル議会、暗号通貨の取引と使用に関する規制を承認。
支払い手段や投資資産として使用できる価値のデジタル表象物であるとしているものの、Bitcoinや暗号通貨を法定通貨とするものではないとのこと
https://bitcoinmagazine.com/legal/brazil-approves-use-of-bitcoin-as-payment
3.4. 日本
●Web3.0研究会(第5回)議事要旨|デジタル庁
【資料1】討議資料
【資料2】(別紙)関係省庁検討状況について
【資料3】(参考資料)米欧の取組状況について
【資料4】Web3.0研究会DAOの立ち上げについて
https://www.digital.go.jp/councils/43542a45-1ee6-4309-95f0-0893eb52d501/
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