Bitcoin・クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
Bitcoinのmempool、確認待ちトランザクションが430,000件以上に
EthereumのBeacon Chain、一時的にトランザクションのファイナライズを停止
Binance、Lightningによる引出しを可能にするために取り組んでいることを発表
Bittrex、連邦破産法第11条を申請
米テキサス州、デジタル通貨を所有・保有・使用する権利について議決
米内国歳入庁(IRS)、Alameda Research LLCに$20Bの請求
米SECによる投資顧問カストディに係るルール変更について、Coinbaseやa16・JPMorganが懸念を表明
G7 財務大臣・中央銀行総裁声明、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性のリスクについて言及
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●ブロック788695で、Bitcoinブロックスペースの需要の高さによる取引手数料(6.7BTC)がマイニング報酬(6.25BTC)を上回り、手数料と報酬の合計が12.95BTCに
手数料がマイニング報酬を上回るのは、2017年以来のこと
https://twitter.com/lopp/status/1655342492840087552?s=20
https://twitter.com/simpleminingio/status/1655333993804431363?s=20
●Bitcoinのmempool、確認待ちのトランザクションが430,000件以上に(その後落ち着くも、直近も300,000件前後)
●ブロックあたりの平均マイナー手数料、2ヶ月前の約0.19BTCから4.5~6.5BTCに高騰
https://explorer.btc.com/btc/blocks
●Bitcoin Ordinalsのトランザクションが落ち着きを取り戻してきている
https://dune.com/domo/ordinals-marketplaces
●AntpoolとFoundry Pool USAの間の競争で、Bitcoinの長さ2のチェーンスプリットが発生
https://twitter.com/BitMEXResearch/status/1655339317835726848
●OrdinalsとBRC20がBitcoinネットワークの混雑を引き起こしていることを踏まえ、「検閲」をノードレベルで行い、非標準的なTaprootトランザクションを即座に削除するruntimeオプション導入が提案されたものの、同意は得られにくい模様
https://lists.linuxfoundation.org/pipermail/bitcoin-dev/2023-May/021620.html
●ビットコイン手数料の高騰とBRC-20トークン/ブータン王国のビットコイン採掘
|Diamond Hands Magazine Vol.80
●Bitcoinに関する教育的資料や情報のリスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information.html
●Bitcoinは単なるテクノロジーではないという影響力を知ることができるドキュメンタリーのリスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information/documentaries.html
●Bitcoinの歴史に関するリソースリスト
Bitcoinは何もないところから現れたわけではなく、多くのデジタル通貨プロジェクトが失敗した後に、何十年にもわたる研究の上に誕生
https://www.lopp.net/bitcoin-information/history.html
●Bolt Cardの実演 By AndGo 原利英 & nilnull 【第三回DHミートアップ】
●Bitcoin Builders Conference(5/17、マイアミ)
https://www.bitcoinbuildersconf.com/event/10a5f7cf-7c5e-426c-a1b8-b65ceea0eb8c/summary
●Bitcoin Optech、5周年で250号を迎える
https://bitcoinops.org/en/newsletters/2023/05/10/
●DLCについての技術概要、想定する応用/ユースケースの解説 By Thibaut Le Guilly 【第三回DHミートアップ】
●BLS署名とIDベース暗号でステートレスなDLC | Yuya | Spotlight
https://spotlight.soy/detail?article_id=7uvfst6oz
1.1.2. L2:Lightning Network
●2017年5月にLitecoin上で行われたLightning決済から6年が経過
●Lightningのプロジェクト一覧
https://www.lightning-landscape.net/projects
●Lightningのキャパシティおよびチャネル数をめぐる2018年からの変遷
●BRC20トークンがBitcoinのトランザクションコストを引き上げている中、Lightningが重要な役割を担っているとするスレ
https://twitter.com/ambosstech/status/1655966253171998724?s=20
●Lightningチャネルのフォースクローズ(強制終了)の仕組みと手数料が高額になるメカニズムについて
https://twitter.com/LN_Capital/status/1656003932047523841
●Lightning Appsを増やすのではなく、Lightningを使ったアプリを増やすことが必要
「Lightningをさらにスケールさせる上では、Lightningを使ったアプリがもっと必要である」として、「開発者が好きなようにアプリにLightningを統合してトランザクションをプログラミングできることに焦点を当てるべき」と述べている
●Lightningノードにおける流動性の管理の際に手動介入の必要性を排除すべく、スワップによる流動性管理のための自動化ルールを設定できるワークフローベースのソリューション「Auto Swaps」
●取引所がLightningの統合を検討すべき理由について
より安価で迅速な入出金を実現できる
取引量の増加の可能性がある
取引所のUTXO管理を改善できる
●PTLC(Point Time Locked Contracts)がLightningにもたらす長所
受信者の難読化を通じて、受信者プライバシーを改善
Lightningチャネルが開いていても、P2TRと変わらないように見えるためオンチェーンプライバシーを向上できる
なお、HTLCとPTLCは混在しないため、どちらか一方を経由する必要あり
https://twitter.com/cryptoquick/status/1654976403010383874?s=20
●bitcoin++において、新しいL2として提示された「Tbdxxx」
・セルフカストディを維持したまま、一方的にL1へ退出可能
・新たなcovenantを必要とし、APOを推奨しているものの、代替も可能とのこと
https://twitter.com/lightcoin/status/1652392614258257921?s=20
https://twitter.com/4moonsettler/status/1654287460568842241?s=20
1.2. Ethereum
●EthereumのBeacon Chain、一時的にトランザクションのファイナライズを停止し、25分後に回復
https://twitter.com/superphiz/status/1656761424222253064
●VISA、Ethereumについて①通貨政策の変更、②ネットワーク内のバリデーターが最適な行動に対してインセンティブを与え悪意のある行動に対しては罰する方法、および③Stakingモデルについてブログを発表
https://usa.visa.com/solutions/crypto/cryptoeconomics.html
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●欧州ブロックチェーンサービス基盤(EBSI)によって管理される独自チェーン
23カ国に45のノード
不動産の権利や運転免許証などのユースケースを想定
Proof of Authorityによる
Hyperledger Besu Ethereum Enterprise Clientを実行
https://www.trustnodes.com/2023/05/09/eu-develops-its-own-official-blockchain
1.3.2. 要素技術
●Ledger、BitcoinアプリのMiniscriptの実装における脆弱性を公開
https://wizardsardine.com/blog/ledger-vulnerability-disclosure/
●5/1-5/3、クロアチアで開催された「Financial Cryptography and Data Security 2023」(FC2023)の発表内容のAbstract集
https://scrapbox.io/masatojames/FC2023
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●PayPal、顧客の利益のために保有する重要な暗号資産として、Bitcoinを$499m、Ethereumを$362m、その他あわせ計$943m保有していることを発表
https://www.sec.gov/ix?doc=/Archives/edgar/data/0001633917/000163391723000072/pypl-20230331.htm
2.1.2. 投資
●Binance、大量の保留中トランザクションが原因でBitcoinの引き出しを一時的にクローズ
再発を防ぐため、手数料を調整した他、Lightning Network による引き出しを可能にするために取り組んでいることを発表
https://twitter.com/binance/status/1655419624962527233?s=20
●Binance、「取引所に提供されたStablecoinと投資家制限に関連する新しいガイダンスによって、もはや耐えられない」として、カナダ市場から撤退へ
https://twitter.com/binance/status/1657099651210969088?s=20
●Binance、5月下旬からNFTマーケットプレイスでBitcoin Ordinals(Bitcoin NFT)をサポートへ
外部ウォレットを利用することなく、Bitcoin Ordinalsを取引可能に
BinanceのNFTマーケットプレイスは、BNB Chain、Etherum、Polygonの3種類のネットワークをサポートしており、これにBitcoin Ordinalsを追加する
●仮想通貨「脱米国」加速も - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70833540Z00C23A5ENG000/
●Grayscale、「Ethereum Future ETF」「Bitcoin Composite ETF」「Privacy ETF」を新たに申請
「Privacy ETF」は、ブロックチェーンベースのプライバシー・ソリューションを開発する企業に投資するもの。
●Bittrex、連邦破産法第11条(Chapter11)を申請
資産・負債ともに5億ドル以上、債権者数は10万人以上
https://twitter.com/Chapter11Cases/status/1655682757647818752?s=20
2.1.3. マイニング
●米国政府のデジタルアセットマイニングエナジー(DAME)物品税について、「業界を海外に移転させ、排出量を増加させ、電力網から有用なデマンドレスポンスを奪うことになる」とするNic Carter氏のブログ
2.1.4. 社会生活
●リヒテンシュタイン、市民が特定の国家サービスをBitcoinで支払可能に。国家の暗号投資にも前向きとのこと
2.1.5. RegTech
●米内国歳入庁(IRS)の犯罪捜査部、グローバルな制裁関連の執行活動の一環としてウクライナの法執行機関にサイバー研修とブロックチェーン分析ツールを提供
制裁を受けたロシアのオリガルヒが資産を隠そうとする際に利用する金融ネットワークを対象とした、情報共有の可能性を高めるべく、Chainalysis Reactorのライセンスを15ユーザーまで寄付
2.3. Stablecoin
●Tether、積立金剰余金が$2.44Bと過去最高。純利益は$1.48Bの増加
●MakerDAO、Spark Protocolのローンチを発表
Spark Protocolの最初のバージョンであるSpark Lendは、DAIを中心とした暗号資産の供給と借用に特化した貸出マーケットプレイス
https://twitter.com/MakerDAO/status/1655575088547127311?s=20
●MakerDAO、効率性・回復力・参加性を高めるべく設計されたメジャーアップデート計画「Endgame」を発表
オープンかつスケーラブルなプロセスに微調整されたAIツールを適用するもの
https://forum.makerdao.com/t/the-5-phases-of-endgame/20830
2.4. 金融機関のデジタルアセットサービス
●Digital AssetとGoldman Sachs・Cboe・Deutsche Börse・Moody's・SBI Digital Asset Holdings等、機関投資家むけ資産アプリケーションを相互運用・同期させることを目的とした「Canton Network」立ち上げを発表
https://www.canton.network/press-release
●Visa、ブラジルの農家むけにプログラマブル・ファイナンス・プラットフォームを開発
Microsoft、トークン化プラットフォームのAgrotoken、ソフトウェア会社のSinqiaと提携
農家が既存のブラジルの法的文書をオンチェーン取引可能なNFTに変えて競売にかけることができる
https://blockworks.co/news/digital-dollar-visa-brazil-cbdc
2.5. 中銀デジタル通貨
●BISイノベーションハブ、CBDCのオフライン決済むけハンドブックを発行
https://www.bis.org/publ/othp64.pdf
https://www.bis.org/press/p230511.htm
2.6. デジタル証券
●Carlyle傘下のCalastone、資産運用における投資商品のトークン化に関するホワイトペーパーを発行
https://www2.calastone.com/tokenisationinassetmanagement
●EY、トークン化による排出量と炭素クレジットのトレーサビリティを実現するプラットフォーム「EY OpsChain ESG」の提供開始を発表
InterWork AllianceのCarbon Emissions Tokens標準に基づき、企業の現在のCO2排出量ポジションに関する不変のレポーティングをEYブロックチェーンSaaSプラットフォーム上で提供するもの
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●暗号G7 財務大臣・中央銀行総裁声明(仮訳) (2023 年 5 月 13 日 於:日本・新潟)、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性のリスクについて言及。
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/g7/g7_20230513_1.pdf
●暗号資産の個人間取引、G7財務相が規制検討を要請へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1069N0Q3A510C2000000/
3.2. 米国
●米テキサス州、デジタル通貨を所有・保有・使用する国民の権利を含む州の権利章典の更新を議決
「財やサービスの取引や契約に際して、現金・コイン・地金・デジタル通貨など、相互に合意した交換手段を所有・保有・使用する国民の権利は、侵害されてはならない」とするもの
https://capitol.texas.gov/tlodocs/88R/billtext/pdf/HJ00146I.pdf#navpanes=0
●米国内国歳入庁(IRS)、Alameda Research LLCに$20Bの請求
https://restructuring.ra.kroll.com/FTX/Home-ClaimInfo
●米金融サービス・農業合同小委員会によるデジタルアセットに関する公聴会の模様
https://financialservices.house.gov/calendar/eventsingle.aspx?EventID=408754
●米大統領、裕福な暗号投資家を助けるとされる「税の抜け穴」を終わらせるようTwitterで呼びかけ
抜け穴をカットすることで、$18bの節約になるとしている
https://twitter.com/POTUS/status/1655988502079602690
●米SECのHester Peirceコミッショナー、Financial Timesのイベントで「MiCAは我々のモデルとなり得る」とコメント
https://decrypt.co/139558/europes-crypto-regulations-can-be-model-rules-us-says-hester-peirce
●Coinbase、米SECの投資顧問カストディに係るルール変更について、「カストディ業務について不当な仮定をしていることを懸念する」旨のレターを提出。a16やJPMorganも続いている
a16zも、「登録投資顧問(RIA)が顧客の暗号資産をセルフ・カストディすることを認める例外がなければ、セーフガード・ルールが実行不可能である」との懸念を表明
JPMorganも、「我々の顧客や取引相手、そして最終投資家にとって不利益を被ることになる」との見解を示している
https://api.a16zcrypto.com/wp-content/uploads/2023/05/a16z-Safeguarding-Rule-Comment-Letter.pdf
https://www.sec.gov/comments/s7-04-23/s70423-186140-340145.pdf
3.3. 欧州
●欧州銀行監督局(EBA)、Stablecoinの広範な導入に中銀が拒否権を持つべきとの考え示す
●英歳入税関庁HMRC、納税を怠った企業から暗号通貨を差し押さえることを可能にする規則の導入を検討
https://www.telegraph.co.uk/business/2023/05/07/hmrc-hold-bitcoin-seize-crypto-tax-dodgers/
●アイルランド中銀、「暗号と消費者を守るための方法」と題したリリースで、「裏付けのある暗号」と「裏付けのない暗号」を区別して考えている旨を表明
適切な準備と管理が行われている場合、MiCAに基づく電子マネートークン(EMT)や資産参照トークン(ART)など、「裏付けのある暗号」の可能性には前向きな見方。
一方、「裏付けのない暗号」(裏付けが不十分な暗号や信頼性の低いものを含む)については、宝くじの購入に似ているとし、十分な懐疑心をもって接するべきと主張。「投資」と表現するのは言うまでもなく言葉の乱用であり、「ねずみ講」の方がより正確であるとしている。
https://www.centralbank.ie/news-media/press-releases/blog-crypto-and-how-we-can-protect-the-consumer
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