Bitcoin・クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
資金決済法・犯収法を改正する政令が閣議決定
G7首脳、G7広島首脳コミュニケを発出
BIS、CBDCを巡って現在進行形の政策的視点についてペーパーを発表
香港、6月1日から仮想資産取引プラットフォーム運営者向けのガイドラインが正式発効へ
13年目のBitcoin Pizza Day
Boltzhqによる新しいLightning<>Liquidアトミックスワップサービスがゴーライブ
安価で匿名のオフチェーン決済を行うためのL2プロトコル「Ark」
米FRB、成人の10%が暗号通貨の保有・使用とするレポートを発表
Binanceが顧客資金分離義務に違反していたとする報道
証券監督者国際機構(IOSCO)、「暗号・デジタル資産市場に関する政策提言レポート」を発表
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●2010年5月22日に初めてBitcoinで取引が行われたBitcoin Pizza Dayから13年目。
2010年に10,000BTCを使ってピザを買ったからこそ、同じ10,000BTCが今日何億ドルもの価値を持つようになったと言えるのではないか、との見方。これがなければ、Bitcoinが今日のようになることはなかった。
2010年に10,000BTCでピザ🍕2枚を購入したLaszlo Hanyecz氏は、2018年にはLightningを使って0.00649 BTCでピザ🍕を買った最初の人物(その後も合計すると、全部で8枚のピザを合計40,000BTCで購入しているとされる)
https://bitcoinpizzaindex.net/
●Bitcoin 2023 conferenceの動画リンク集
https://www.youtube.com/playlist?list=PLe0djdakvnFb0T-oZAeF49A-EZChise4n
●Bitcoin前史を綴ったドキュメント。eCash、Hashcash、B-moneyなどを経てホワイトペーパーに至るまでの系譜
https://twitter.com/BitMEXResearch/status/1660022154736402433?s=20
●Bitcoinの価値やオペレーションの基礎について詳しく解説している書籍リスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information/books.html
●Bitcoin Blogsリスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information/blogs.html
●Bitcoinおよび関連プロトコルのためのゼロ知識Validity ProofによるStateの圧縮に関する研究|Bitcoin Optech Newsletter #252
https://bitcoinops.org/ja/newsletters/2023/05/24/
●Bitcoinの新しいmempool設計の提案
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2023/05/25/200300
●CheckTemplateVerify(CTV)についての解説スレ
CTV(BIP119)は、新しいopcodeであるOP_CHECKTEMPLATEVERIFYを導入することによって、スケーラビリティと汎用性を強化することを目的としたBitcoinのソフトフォーク案
CTVは、Bitcoinのoutputがどのように使われるかを規定するスマートコントラクトである「covenants」の作成可能にする
CTVは、「congestion controlled transactions」(CCT)に道を開く
単一のトランザクションを時間の経過とともに複数トランザクションに分割することで、一連の取引を作成することを可能にする
これによって、サブスクのような定期支払用途に利用できる
この他、CTVは、Bitcoinのセキュリティ機構であるVaultsを実現することにも寄与できる
Vaultは、時間差で回復するプロセスを導入することによって、不正な支出をより困難なものにするもの
さらに、CTVは、1つのオンチェーン取引で複数のLightningチャネルを作成する方法として提案されているChannel Factoriesの効率を向上させることによって、LNを強化する可能性も
https://twitter.com/LN_Capital/status/1660301969016209417
●ビットコインの大型カンファレンス「Bitcoin 2023」が開催|Diamond Hands Magazine Vol.82
●Ledger Recover に批判殺到/Bitcoin 2023: 政治とオレンジピル|Diamond Hands Magazine Vol.83
1.1.2. L2:Lightning Network
●Boltzhqによる新しいLightning<>Liquidアトミックスワップサービスがゴーライブ
Lightningノードのリバランスを安く行うためのツール「Liquid Swaps」
L-BTC経由でLiquidまたはstack satsでLightningチャネルを迅速かつ安価にリバランスし、メインチェーン手数料を回避可能に
https://twitter.com/Boltzhq/status/1661448905253429248?s=20
https://twitter.com/Liquid_BTC/status/1661450366100164629?s=20
●信頼されていない仲介者を介して匿名のオフチェーン決済を可能にする共有utxoモデルを使ったL2スケーリングソリューション「Ark」。
「Lightningのインバウンド流動性は、常にバグのように感じられた」とし、Arkは、受信者のプライバシーを守りながら、受信者がインバウンド流動性を獲得すること無しに支払いを受けることを可能にするとのこと。
●Arkについて、「インバウンドの流動性制約は適用されないと宣伝しているものの、コーディネーターは各ラウンドで交換された全UTXOを完全にバックアップするのに十分な資本が必要。最悪、すべてがアンロールされる必要があるため、送信量はチェーン手数料に対して経済的である必要がある」との見方
その上で、「Arkの開発者は、一時期プロトコルの寵児だったTumbleBitで何が起こったのか、なぜそれが現実のシステムにならなかったのかを研究するのが賢明だろう」と述べている
「TumbleBitで起きたのは、コーディネーターになるにはロックされた資本が必要であり、リスクがないわけではない」とのこと
https://twitter.com/roasbeef/status/1661194382450774017
https://twitter.com/roasbeef/status/1661194898161430528
https://twitter.com/NicolasDorier/status/1661345361863262209
●Lightning Networkで少額支払いを行う場合に、特にオンチェーン手数料が高い環境においては、HTLCシステムのセキュリティ上の利点がやや限定的となる可能性ありという問題点について
https://blog.bitmex.com/lightning-payments-when-are-they-too-small-to-secure/
●HTLC (Hashed Time-Locked Contract) 図解スレ
https://twitter.com/BTCillustrated/status/1660753626791280641
●DH Wikiでライトニング関連の情報やリソースを集約しています。
Wikiチームにより定期的にアップデートされているので活用してください。
https://twitter.com/Coin_and_Peace/status/1660982600306151426?s=20
1.2. Ethereum
●Vitalik、コンセンサスのスコープはコアなプロトコルルールの検証以外に増やすリスクのある行動をとることに警戒すべきであり、チェーンのミニマリズムを維持すべきとする記事を発表
https://vitalik.ca/general/2023/05/21/dont_overload.html
1.3. 他チェーン・要素技術
●Bitcoin Conferenvce 2023の Opensource Stage で発表された「Web5 - Open to Build」の内容紹介スレ
https://twitter.com/pippellia/status/1661032660460863488
●Ledgerの前CEO、Ledger Recoverサービスを利用すると、政府が資金へのアクセス権を召喚できることを認めたとされる
https://twitter.com/NFTherder/status/1659746365851795456
●LedgerのCEO、コードをできるだけ多くオープンソース化すべくオープンソース化のロードマップを加速させると発表。
LedgerのOSのコアコンポーネントから始まり、Ledger Recoverまでを対象とし、この作業が完了するまでLedger Recoverはリリースされないとのこと
https://www.ledger.com/blog/ledger-recover-a-message-from-pascal-gauthier-chairman-ceo-at-ledger
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●カナダNeutronpay、Pouch.phと提携し、カナダとベトナムに住むフィリピン人向けLightning送金サービス提供へ
カナダドルやベトナムドンをBitcoinに変換した上で、フィリピンペソに変換して、受取人の口座に直接送金するもの
2.1.2. 投資
●「メルカリ」のビットコイン取引サービス、提供開始2か月強で利用者数30万人を突破 | 株式会社メルコイン
https://about.mercoin.com/news/20230523_bitcoin300k/
●米国連邦準備制度理事会(FRB)、「米国世帯の経済的幸福度」レポートを発表
暗号通貨の保有・使用は、2022年には成人の10%(2021年から2%ポイント減少)
暗号通貨を取引に使用する理由として最も多く挙げられたのは、「お金を受け取る人や企業が暗号通貨を好むこと」「お金をより早く送ること」「プライバシー」の3つ。
所得が$100,000以上の成人は、所得が低い成人に比べて、暗号通貨を投資として保有する傾向が強い一方、所得が$25,000未満の成人は、所得が高い成人に比べて、金融取引に使用する傾向が強い。また、人口動態や社会経済的特性によっても異なり、投資と取引の両方で、若年層と男性に多くみられる。
●Binanceが顧客資金と会社収益を混同し、顧客資金の分離を義務付ける米国の金融規則に違反していたとするReuters報道。
2021年2月10日に、Binanceが法人口座から$20mを、顧客の資金を受け取る口座からの$15mと混合したことを示す銀行記録を確認したとしている
Binanceはこれを否定し、これらの口座は顧客の預金を受け入れるためではなく暗号資産の購入を促進するために使用されたとしている
https://www.reuters.com/investigates/special-report/crypto-binance-money/
●Paradigm、焦点を従来の「暗号資産のみ」から、AIなどのフロンティア技術に広げているとのこと
ウェブサイトのトップページから暗号/Web3に関する記述を削除
https://www.theblock.co/post/232247/crypto-vc-paradigm-ai
2.1.3. NFTエコシステム
●RGBを活用したBitcoinNFTマーケットプレイスDIBA、メインネットローンチ。デジタル資産(UDA)を保存できる専用ウォレットも提供
https://bitcoinmagazine.com/business/first-rgb-powered-nft-marketplace-launches-at-bitcoin-2023
2.1.4. Stablecoin
●Circle、Avalanche上でユーロ担保のstablecoin提供開始
https://www.circle.com/en/pressroom/circle-takes-euro-coin-multi-chain-with-launch-on-avalanche
2.2. 中銀デジタル通貨
2.2.1. グローバル
●BIS、CBDCを巡る現在進行形の政策的視点についてペーパーを発表
https://www.bis.org/publ/othp65.htm
2.2.2. 欧州
●欧州議会、デジタルユーロのための法的枠組みに関するペーパーを発表。
導入期の金融安定化に対するリスクを管理するための重要な手段として、一人あたり3,000~4,000ユーロの保有限度額を提案
https://www.europarl.europa.eu/thinktank/en/document/IPOL_IDA(2023)741518
2.2.3. 中国
●中国証券当局、ICBC銀と証券会社の共同によるデジタル人民元を使った店頭資産管理商品の試験運用開始を承認
https://www.ledgerinsights.com/digital-yuan-cbdc-securities-china/
2.2.4. アジア太平洋ほか
●ブラジル中銀、CBDCパイロットの参加者リストを発表。Visa、Santander、Microsoftなどが参加
第一段階では、プライバシーとプログラマビリティに焦点を当て、国債の決済をテストする予定
https://www.bcb.gov.br/detalhenoticia/17897/nota
2.3. デジタル証券
●三井物産グループ発、個人投資家の新しい選択肢「ALTERNA(オルタナ)」がサービス開始。デジタル証券(ST)を活用し、「貯蓄から投資へ」を推進
1号案件は日本橋エリアの1棟レジデンス、投資申込の受付は6月2日から
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000056997.html
●「Progmat(プログマ)」と「ALTERNA(オルタナ)」の連携による、“デジタル証券製販一体”の新たなビジネスモデルについて|三菱UFJ信託銀行株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000036656.html
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●G7首脳、G7広島首脳コミュニケを発出。
「効果的なモニタリング、規制及び監視は、責任あるイ ノベーションを支援しつつ、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性の リスクに対処し、規制裁定を避けるために、極めて重要である。」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page1_001700.html
●証券監督者国際機構(IOSCO)、暗号資産をめぐる活動から生じる市場整合性と投資家保護に関連する懸念に対処すべく、「暗号・デジタル資産市場に関する政策提言レポート」を発表。
暗号資産サービスプロバイダー(CASPs)が関与する様々な活動(募集、取引許可、継続取引、決済、市場監視及びカストディ、および個人投資家に対するマーケティング及び流通(助言販売及び非助言販売を含む))をカバーするもの
DeFiについては、本レポートは対象外であり、別途夏以降に勧告案を含むレポートが発表される予定とのこと
https://www.iosco.org/library/pubdocs/pdf/IOSCOPD734.pdf
●WEF、暗号資産規制を巡るグローバルなアプローチへの道筋についてホワイトペーパーを発表
https://www.weforum.org/whitepapers/pathways-to-crypto-asset-regulation-a-global-approach/
3.2. 米国
●MicroStrategy、Bitcoinなどの特定の暗号資産の会計処理と開示についてFASB(米国財務会計基準審議会)が提案したアプローチを支持すると表明
3.3. アジア太平洋ほか
●香港SFC、仮想資産取引プラットフォーム運営者に対する規制要件案に関する協議結論を発表。
改訂された規制要件案は2023年6月1日に施行予定
https://apps.sfc.hk/edistributionWeb/gateway/EN/news-and-announcements/news/doc?refNo=23PR53
●中国中央電視台(CCTV)、香港で2023年6月1日から仮想資産取引プラットフォームの運営者向けのガイドラインが正式に発効される旨を報道。
なお、香港SFCはまだ個人投資家向けにサービスを提供する仮想資産取引プラットフォームを承認していないとのこと
https://twitter.com/CryptoHub210/status/1661402138696732672
3.4. 日本
●暗号通貨資産取引を追跡するため、6月1日からより厳格なマネーロンダリング防止措置を実施することを閣議決定
犯収法などの改正を行う政令が閣議決定。
犯罪収益の追跡をより適切に行うためのトラベルルールの施行が特徴。
暗号資産の送金を処理する金融機関が次の金融機関に顧客情報を渡すことが義務付け。
(その情報には送金者と受取人の名前と住所が含まれている必要)
●令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について|金融庁
> 本件の政令は、令和5年5月23日(火曜)に閣議決定、本日公布されており、令和5年6月1日(木曜)から施行されます。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230526/20230526.html
●犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメントの結果等について|金融庁
> 本件の政令は、令和5年5月23日(火曜)に閣議決定、本日公布されており、令和5年6月1日(木曜)から施行されます。
犯罪収益移転防止法上の特定事業者の特定事業者の業務のうち、取引記録等の作成・保存義務等の対象となる業務(特定業務)及び取引時確認義務等の対象となる取引(特定取引)の要件を定める。
電子決済手段・暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)の対象から除外する国又は地域の要件を定める。
犯罪収益移転防止法上の特定事業者による取引時確認の方法や電子決済手段の換算基準を定める等の規定の整備を行う。
電子決済手段及び暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)に基づく通知事項を定める。
電子決済手段等取引業者及び暗号資産交換業者がアンホステッド・ウォレット等と取引を行う際の取引時確認等を的確に行うために講ずるべき措置について定める。
電子決済手段等取引業者及び暗号資産交換業者が移転に係る提携契約を締結する際の確認義務に基づく契約相手のマネロン対策状況の確認方法・基準について定める。
トラベルルール、アンホステッド・ウォレット等との取引のリスクに応じた態勢整備義務等に関する所要の規定の整備等を行う。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230526-2/20230526-2.html
●トラベルルール、アンホステッド・ウォレット等に関して|金融庁
> 電子決済手段及び暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)に基づく通知事項を定める。
> 電子決済手段等取引業者及び暗号資産交換業者がアンホステッド・ウォレット等)と取引を行う際の取引時確認等を的確に行うために講ずるべき措置について定める。
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