クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
米財務長官、TerraUSD(UST)の価格下落を挙げて、年内のStablecoin法案可決を重要かつ緊急であると言及
独財務省、暗号通貨やその他トークンの所得税の取り扱いについてガイダンスを発表
暗号通貨に懐疑的な姿勢をとってきたNouriel Roubini氏、tokenized dollarの開発に取り組んでいると発表
分散型経済には、裏付けが凍結・没収されない分散型Stablecoinが必要、とするスレ
野村證券、アジアの顧客向けにBitcoinデリバティブの提供を開始
ノルウェー議会、エネルギー集約的であるとして、暗号通貨マイニングの禁止することを求める提案を否決
米FRB、金融安定性報告書においてStablecoinの市場暴落リスクを指摘
Diemの共同創業者David Marcus氏、Bitcoinの機能と実用性の探求・構築・拡張にむけてLightspark社を立ち上げ
エミレーツ航空、決済サービスにBitcoinを採用
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●Rigaのビットコインウィーク(9/1-9/5)。NOOBデー、Layer2デー、Baltic Honeybadger Conferenceを挟んで、BTCServerデー
●MIT Bitcoin Expo(Day2)の模様(動画・スケジュール)
https://www.mitbitcoinexpo.org/
1.1.2. L2:Lightning Network
●Diemの共同創業者David Marcus氏、Bitcoinの機能と実用性の探求・構築・拡張にむけてLightspark社を立ち上げ。Lightning Networkをより深く掘り下げるべく、チームを編成中。
●Taroのアセットツリーの構造 - Develop with pleasure!
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2022/05/09/204000
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●Ethereum Mergeに関するリソースリスト
https://notes.ethereum.org/@MarioHavel/merge-resources
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●エミレーツ航空、新規顧客獲得にむけてデジタル通貨とメタバースを導入へ
決済サービスにBitcoinを採用。
同社のウェブサイトにNFTコレクティブルを追加。
メタバースとNFTのための新しいスタッフを雇用。
https://www.arabnews.com/node/2079876/business-economy
●ビットコイン支払いで美味しいお酒を飲もう。銀座 クリプトバーでLN決済がスタート! | bcats | Spotlight
https://spotlight.soy/detail?article_id=afy38kim8
2.1.2. 社会生活
●エルサルバドル、暗号通貨下落が続く中、次回の債務支払いに対応できるかどうか懸念されているとする報道
●ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルへ行ってみた|体験記寄稿5 〜 ビットコインを世界で初めて法定通貨に採用し7ヶ月が経過したエルサルバドルで垣間見た現実
https://coinpost.jp/?p=348476
https://coinpost.jp/?p=345965
2.2. NFT
2.2.1. トラディショナルプレイヤー
●Starbucks、「デジタルなサードプレイス」として、Web3・NFTを用いて、コラボレーション・体験・共有オーナーシップによって定義されるコミュニティを創り出すことを発表
https://stories.starbucks.com/stories/2022/starbucks-creating-the-digital-third-place/
2.2.2. NFTエコシステム
●ChainalysisのNFTレポート。
2021年以降、NFTの活動量は伸びているものの、機関投資家向けNFT取引とともに、一貫していない。
中央・南アジアがリードし、北米と西ヨーロッパが続く。2021年初頭以降、40%以上を占める地域は無く、拮抗している。
https://blog.chainalysis.com/reports/chainalysis-web3-report-preview-nfts/
2.3. DeFi
2.3.1. Stablecoin
●Luna Foundation Guard、USTペグを保護するために、OTC取引会社に$750M相当のBTCを貸し付ける旨を発表。あわせて、市場環境の正常化に伴い、BTCを蓄積するために750M USTを貸与するとしてる。
●Binance、急落に伴いLUNAおよびUSTの引き出しを停止
https://www.binance.com/en/support/announcement/dc02bedd65be40f7b10022f26bc06879
●Luna Foundation Guard、米ドルとのパリティを失ったUST Stablecoinを支えるべく、$1b以上の調達を検討しているとのこと
●Terraform Labsの創設者が、USTの準備金として最大$10bのBitcoinを取得する旨を発言して以来、Bitcoinコミュニティの間で認知度が高まったTerra。
この購入は、シンガポールを拠点として、「USTペグの安定性を補強し、Terraエコシステムの成長を促進する」ためのNPP「Luna Foundation Guard」によって行われた。
このとき、アルゴリズムによるStablecoinのペグの持続可能性には疑問が残るとし、Bitcoinの購入はUSTを「Bitcoinに支えられた」Stablecoinにするものではないと報じられた。
USTとLUNA
1USTを1ドル相当のLUNA(価値は需給で変動)と交換できることを「約束」していた
USTのペグが上向きに崩れた際、LUNA1ドル分をUST1ドルに交換し、そのプレミアムを利用して利益を得られる
USTがペグを解除して下落した際、1USTを1UST相当のLUNAと交換し、利益を得られる
USTが「死のスパイラル」に陥った経緯
USTのペグが下降し始めた中で、トレーダーはUSTを1ドル相当のLUNAと交換することで脱出を試みた。
しかし、切下げスピードが速かく、USTがLUNAに交換できた量よりも大量のUSTが流出。
onchain swap spreadが40%に拡大し、LUNAに圧力がかかり、価格が急落。
https://bitcoinmagazine.com/markets/terra-collapse-teaches-about-crypto-and-bitcoin
●Terraform LabsのCEO Do Kwon氏が2020年にローンチされたBasis Cashの共同創業者であったとの報道
●分散型経済には、裏付けが凍結・没収されない分散型Stablecoinが必要、とするスレ
純粋に技術的なチームが発行する模倣アルゴStablecoinに手を出してはいけない。
様々な規制上の理由から、米国に拠点を置くチームがアルゴStablecoinで成功することはありえない。
アルゴStablecoinが機能するには、基盤となるチェーンが高いキャパシティと負荷に対する回復力を提供する必要がある。
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
●野村證券、アジアの顧客向けにBitcoinデリバティブの提供を開始。
現金で決済されるノンデリバラブル・フォワードとノンデリバラブル・オプションおよびBitcoin先物とオプションの取引が可能。
Cumberland DRW LLCと、CME Group Inc.のプラットフォーム上で初のデジタル取引を実施したとのこと。
グローバル市場部門におけるクリプトの拡大にむけ、2018年に設立された、シンガポールに拠点を置く外国為替チームとホールセール・デジタル・オフィス内のリソースを活用。
野村では、クリプトガレージの第三者割当増資に合意しているほか、デジタル資産カストディーベンチャーKomainuも$25mの資金調達済。
●Fintertech、日本初の暗号資産担保型不動産ローンを個人向けに提供開始|Fintertech株式会社のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000056375.html
2.6. 中銀デジタル通貨
2.6.1. グローバル
●IMFによる、金利チャネルに注目し、デジタルマネー(特にCBDC)が金融政策と中央銀行のオペレーションを変えるかどうかについて検討しているペーパー。
2.6.2. 欧州
●欧州ECBによる、「中央銀行デジタル通貨と銀行仲介」に関するペーパー。
デジタル・ユーロがユーロ圏の銀行のバランスシートに与える影響を評価し、適切に設計されれば、デジタル・ユーロの導入が金融政策の伝達と金融の安定に与える影響は管理可能であると結論付けている。
https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/scpops/ecb.op293~652cf2b1aa.en.pdf
2.6.3. 日本
●「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」から、中間整理が発表されている
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220513b.pdf
2.7. デジタル証券
2.7.1. 米国
●暗号通貨に懐疑的な姿勢をとってきたNouriel Roubini氏、Atlas Capital Teamとtokenized dollarの開発に取り組んでいると発表。
短期の米国債や金・気候変動の影響を受けにくい米国の不動産を組み合わせたもので裏付け予定とのこと。
このtokenized dollarは、United Sovereign Governance Gold Optimized Dollar (USG) と呼ばれ、まずインデックス、次いでETF、最後にAML/KYC機能を備えた実物/金融資産に裏打ちされた証券トークンになる予定とのこと。
インフレ・政治/地政学的リスクへのヘッジを目指すと。
2.7.2. アジア太平洋ほか
●インドの証券預託機関National Securities Depositary(NSDL)、債券発行の健全性を監視するシステムを稼動させたと発表
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米財務長官、TerraUSD(UST)の価格下落を挙げて、年内のStablecoin法案可決を重要かつ緊急であると言及
●米FRB、金融安定性報告書においてStablecoinの市場暴落リスクを指摘
「Stablecoinは通常、ドルと額面通り交換できることを目指しているが、ストレス時に価値を失ったり、流動性が低下したりする可能性のある資産に裏付けられているため、償還リスクに直面する。」と述べている。
「この脆弱性は、裏付資産のリスクや流動性に関する透明性の欠如によって、更に悪化する可能性がある。また、他の暗号通貨のレバレッジ取引に必要な証拠金を満たすためにStablecoinを利用するケースが増えているため、Stablecoinの需要変動が増幅され、償還リスクがさらに高まる可能性がある」とも指摘している。
https://www.federalreserve.gov/publications/files/financial-stability-report-20220509.pdf
3.2. 欧州
●スペイン中銀総裁、国際スワップ・デリバティブ協会の年次総会において、「暗号通貨や分散型金融市場が経済システムの金融安定性に影響を与えるほど成長する前に、迅速に規制する動きが必要である」と主張。
●ノルウェー議会、エネルギー集約的であるとして、暗号通貨マイニングの禁止することを求める提案を否決
https://e24.no/norsk-oekonomi/i/Po8z3b/roedt-faar-ikke-medhold-i-forbud-mot-kryptoutvinning
●欧州委員会、欧州議会で承認された暗号規制案に同意せず修正案を準備中。マネーロンダリングおよびテロ資金調達対策を目的とした特定の措置について、特に懸念とされている。
●独財務省、暗号通貨やその他トークンの所得税の取り扱いについてガイダンスを発表。
BitcoinやETHなど取得した暗号通貨の売却は、資産を所有して1年後に個人にとって非課税に。
ステーキングやその他の方法で利益を得るために使用された暗号通貨は、非課税を受けるために最大10年間保有しなければならかったが、資産の取得から売却までの期間が1年以上の場合、利益の全額が非課税と規定しているとのこと。
独財務省の発表によると、仮想通貨などのトークンの売買に加え、Bitcoinのマイニングを扱っている。
また、stake、lending、hardfork、airdrop、所得税法上のutility tokenおよびsecurity tokenの特殊性、雇用による所得としてのトークンについても触れている。
https://decrypt.co/100086/germany-wont-tax-bitcoin-ethereum-sold-after-one-year-of-possession
3.3. アジア太平洋ほか
●アルゼンチン上院、IMF債務解消にむけて、同国国民が暗号通貨を含む外国で保有する非申告資産に課税する法案を可決。
暗号通貨以外にも、不動産・株式といった、これまで税務当局に申告されていなかったあらゆる種類の資産に対して、最大で50%課税するもの。
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