Bitcoin・クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
ゼロ知識証明をBitcoinに導入するZeroSync Association
OpenAIの共同創業者等が取り組むWorldcoinプロジェクト
米地方裁、ガバナンストークンには法的責任を伴うとの見方示す
Coin Center、米RESTRICT法の広範な適用が暗号資産の遮断に繋がる可能性を指摘
米CFTC、BinanceとCZを起訴
欧州議会、AML/CFT政策の法律案を可決し、暗号資産送金に€1000の上限設定
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●Bitcoinトランザクション手数料見積サービスリスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information/fee-estimates.html
●Bitcoinの統計値・メトリクスに関するリンク集
https://www.lopp.net/bitcoin-information/statistics-metrics.html
●ゼロ知識証明をBitcoinに導入するZeroSync Association
ZeroSync Associationは、Bitcoinにゼロ知識証明を導入することを計画している。
Geometry ResearchとStarkWare Industriesからスポンサーを受けている。
チェーン全体をダウンロードしたり、第三者の仲介者に頼ること無しに、所有者データや取引履歴を含むBitcoinブロックチェーンの現在の状態を認証することができるプロトタイプの開発に成功したとのこと。
取引所におけるproof-of-reservesや、L2プロトコルにおけるトランザクション履歴の圧縮など様々な用途に活用できるツールキットを設計しているとしている。
Blockstreamとも提携を発表し、年内に衛星ハードウェアを使ったトライアルブロードキャストを実施予定。
https://zerosync.org/
●調整可能なペナルティを使用してLNの資本効率を向上させる提案について|Bitcoin Optech Newsletter #244
https://bitcoinops.org/ja/newsletters/2023/03/29/
1.1.2. L2:Lightning Network
●Lightning スペックBoltにRoute Blindingがマージ
●Lightning チャネルをアップデートするSplicingの解説スレ
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●Ethereum、Shapellaネットワークアップグレードは4月12日に有効化の見込み
https://blog.ethereum.org/2023/03/28/shapella-mainnet-announcement
1.2.2. L2
●Polygon zkEVMネットワークのローンチに際し、Vitalikがトランザクションに“A few million constraints for man, unconstrained scalability for mankind.”とするメッセージを織り込む
https://decrypt.co/124672/vitalik-buterin-hidden-message-polygon-zkevm
●Ethereum L2であるBase、インフレ率に連動するStablecoin「Flatcoins」を提唱
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●dYdX、EthereumからCosmosに移行へ
https://decrypt.co/124623/dydx-reveals-launch-date-move-ethereum-to-cosmos
1.3.2. 要素技術
●OpenAIの共同創業者等が取り組むWorldcoinプロジェクト
OpenAIの共同創業者によるWorldcoinプロジェクトのブログ(3/31発表)
Worldcoinでは、オンラインで人間性を証明すべく、スケーラブルでプライバシーを保護し、分散型のプロトコルを開発した、としている。
検証された人間のネットワークとなり、分散型アイデンティティと金融を含むツールへのアクセスをあらゆる人に提供するとのこと。
開発者やプラットフォームも、World ID SDKを通じて、この証明を利用することができる、としている。
World IDは、匿名のまま、ユニークで実在する人物であることを証明できるデジタルパスポート。
プライバシーファースト/セルフカストディアル/非中央集権、を謳っている。
Worldcoinはゼロ知識証明を使用して、アプリケーション間でWorld IDの使用状況をリンクすることを数学的に不可能にしている。(2/10記事)
World IDを使用する際には、ゼロ知識証明が使用されるため、第三者がWorld IDや公開鍵を知ることはなく、追跡できないとのこと。
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. 投資
●米国議会議員のBitcoin保有量リスト
https://bitcoinpoliticians.org/
●米国検察によるSam Bankman-Fried氏への追加起訴状が公開。
特定の口座の凍結解除の一環として、中国政府関係者への贈賄が告発されている
https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.nysd.590940/gov.uscourts.nysd.590940.113.2.pdf
2.1.2. マイニング
●書籍「Softwar」について。マイニングと国防の観点から
https://blockworks.co/news/pentagon-mine-bitcoin-space-force
●エネルギーソースで見たBitcoin
マイニングエネルギーの23%を占める主要エネルギー源は水力発電に。
2.1.3. 社会生活
●ベトナムでビットコインの重要性を再認識した話 - by Koji Higashi
●次のブルサイクルを睨む米国資産運用会社とNasdaq/コスタリカでNostrica|Diamond Hands Magazine Vol.69
●インターネット接続がないアフリカでビットコインにアクセスする方法 - by ごっつ|Diamond Hands Magazine Vol.68
2.1.4. RegTech
●北朝鮮のAPT43グループが、クラウドマイニングサービスを通じて盗難資金洗浄を行ったとする、Mandiant社レポート
https://mandiant.widen.net/s/zvmfw5fnjs/apt43-report
2.2. NFT
●Ordinalsのマーケットプレイスとして、Magic Edenが台頭
https://decrypt.co/124965/magic-eden-new-bitcoin-nft-marketplace-dominates-ordinals-market
2.3. DeFi
●Noble、Circleを発行パートナーとして、CosmosにUSDCをネイティブに提供
https://mirror.xyz/nobleassets.eth/WDLXdp7xt0-kkN7zE5aTzxblynh_SHDO_AtHsGtpUnk
●米国、外交ルートを通じてDo Kwon氏のモンテネグロからの身柄引き渡しを要求したとの報道
2.4. 金融機関のデジタルアセットサービス
●欧州最大の先物オプション取引所Eurex、Bitcoin指数先物を4月にローンチ
https://www.ledgerinsights.com/eurex-bitcoin-futures/
2.5. 中銀デジタル通貨
2.5.1. 米国
●Citiデジタルマネーシンポジウム、「決済は法的なものであり、技術的なものではない」 として、CBDCが銀行預金トークンや規制されたStablecoinとネットワーク上で共存できる共有台帳技術を利用したインフラ「Regulated Liability Network(RLN)」の構想を紹介
共有台帳技術を共通のプラットフォーム上ですべての規制対象マネーに適用できることを実証することを目指している。
CBDCとStablecoinの提案の間のスペースを埋めるための議論への貢献としている。
RLNは、常時接続、マルチアセット、プログラマブルといった利点の多くを活用した上で、参加者間の決済の法的ファイナリティを実現する新たな金融市場インフラを構築する可能性を検討しているとのこと。
現在の技術パートナーはSETLとDigital Assetとのこと。
https://www.ledgerinsights.com/digital-currency-messaging-is-done-citi-rln/
https://regulatedliabilitynetwork.org/
2.5.2. 欧州
●欧州中銀ECBワーキングペーパー、「現金に勝る価値貯蔵手段としてのCBDC の導入は、一部の預金者がCBDC への切り替えを選択するため、銀行の中抜きをもたらす」とするモデルを提示している。
現金と比較して技術的に優れた価値貯蔵手段である無金利のCBDCの発行は、公的貨幣を保有する魅力を高める。
現金保有者と既存の預金者の一部がCBDCに乗り換え、銀行の中抜きを誘発する。
CBDCは部分的に預金に取って代わるが、残りの預金者は平均して銀行の安定性についてより楽観的であり、銀行はそれに応じてポートフォリオのリバランスを行うため、銀行貸出と生産的投資は預金に比例して減少するわけではない。
報酬や数量制限といったCBDCの設計上の特徴を適切に調整することによって、銀行の中抜きやCBDCが価値の貯蔵として利用される度合いを緩和できる。
https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/scpwps/ecb.wp2801~f906c36f0b.pt.pdf
2.5.3. 日本
●日銀の黒田東彦総裁、デジタル円「実現していく」 重要性強調 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB284JZ0Y3A320C2000000/
2.6. デジタル証券
2.6.1. 米国
●現実世界資産のトークン化について述べたCitiのレポート
金融資産や実物資産のトークン化は、ブロックチェーンの躍進を牽引するキラーユースケースとなる可能性があり、トークン化は民間市場で80倍の成長を遂げ、2030年までに約4兆ドルの価値に達すると予想されている。
ブロックチェーンが主流になるには、(1)分散型デジタルID、(2)ゼロ知識証明、(3)オラクル、(4)セキュアブリッジなどの技術的なイネーブラーの助けが必要となる。
グローバルな商取引や金融を動かすための全く新しいレールとなるスマートリーガルコントラクトを可能にするために、法的側面を変更する必要がある。
2.6.2. 欧州
●Euroclear、DLTベースの債券発行・決済ソリューションを立ち上げ準備中
https://www.ledgerinsights.com/euroclear-dlt-bond-issuance-settlement/
2.6.3. 日本
●JPX、野村系IT企業に5%出資 デジタル証券普及
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB303UK0Q3A330C2000000/
●日本取引所グループによるBOOSTRYへの資本参加およびセキュリティ・トークン事業の推進に関する契約締結のお知らせ
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20230330-02.html
●セキュリティトークンの取引において適用除外電子記録移転権利の私募が可能なWeb サービス 『E-Prime Investors』 の提供・利用開始について|株式会社 BOOSTRY
https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/etc/20230328/bstr20230328.pdf
●みずほ証券、丸紅とデジタル証券:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69634670X20C23A3EE9000/
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●G7、仮想通貨の規制推進へ
https://jp.reuters.com/article/idJP2023032601000422
3.2. 米国
●米カリフォルニア州南部地区連邦地方裁判所、「ガバナンストークンであるBZRXの所有者は、法的責任を伴い、5500万ドルのハッキングに対して責任を負う可能性がある」との見方示す
BZRXトークンはプロトコルとその収益をコントロールするものであり、一般的にビジネスの所有権を決定するために用いられる基準であると指摘している。
また、bZxの開発者がフィッシング詐欺に引っかかってプロトコルがハッキングされたため、「カストディアルとノンカストディアルの区別が無意味になる」と指摘。
ファウンダーは「ゼネラル・パートナー」である可能性があり、LLCの所有者が通常負うべき法的責任から保護されないビジネス・オーナーのカテゴリーであると結論付けている。
https://thedefiant.io/gov-tokens-legal-risk
https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.casd.732409/gov.uscourts.casd.732409.49.0.pdf
●米SEC委員長、暗号資産の規制に追加の法律は不要であり、既存のルールで対応可能との見方
●Coin Center、Tik-Tokのような企業が対象とされる米RESTRICT法(Restricting the Emergence of Security Threats that Risk Information and Communications Technology)について、広範なものであるためBitcoinの禁止など暗号資産への災禍をもたらす可能性があると指摘
RESTRICT法は、国家安全保障にリスクをもたらす外国の敵対者が関わる取引や金融保有を遮断または混乱させることを目的としている。
そのため、この法案の主なターゲットはTik-Tokのような企業であるものの、法案の文言は暗号通貨取引の遮断や混乱に使われる可能性があり、極端な場合、米国人がBitcoinのようなオープンソースのツールやプロトコルにアクセスするのを遮断することもできると警告している。
RESTRICT法は、外国の敵対者が利害関係を持つ取引を禁止するよう商務長官に指示している。
その権限が特定の受取人を含む特定のBitcoin取引に関して狭く使用されることに異議を唱えないが、例えば、すべてのBitcoin取引のクラス全体が、米国の外国の敵対者が利害関係を有する取引のクラスであると主張しようとする、「利害関係」の行き過ぎた解釈には異議を唱えたい、としている。
上記のような不合理で広範なRESTRICT法の解釈がなされた場合には、Tornado Cashの一見と同様に、法廷闘争になるだろうとの見方。
https://decrypt.co/124892/coin-center-restrict-act-ban-bitcoin
●米連邦預金保険公社(FDIC)、Signature Bankの暗号資産顧客に対して、4月5日までに口座を閉鎖して資金を移動するよう通知
●「米国の規制当局が暗号を窒息させている理由」と題したWSJ記事
●ワシントンD.C.の法律事務所Cooper & Kirk、米国の規制当局が暗号業界を潰そうとする取り組みを仕掛けていると指摘するホワイトペーパーを発表
https://www.cooperkirk.com/wp-content/uploads/2023/03/Operation-Choke-Point-2.0.pdf
●米CFTC、BinanceとCZを取引およびデリバティブ規制に違反したとして起訴。
米国ユーザーに対してVPNの使用を奨励することによって、コンプライアンス管理を回避することを支援した旨
暗号取引所として登録しなかったこと、事業の監督を怠ったこと、KYC/AMLプロセスを実施しなかった旨
BTC、ETH、LTCを商品として分類
https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.ilnd.431767/gov.uscourts.ilnd.431767.1.0_1.pdf
3.3. 欧州
●欧州議会、AML/CFT政策に関する3つの法律案を可決。
欧州議会は、EUにおけるマネーロンダリング、テロ資金調達、制裁回避の対策における既存のギャップを埋めるために、より厳格な規則を承認した。
現金と暗号資産の取引を制限するために、商品やサービスを提供する人が受け取ることのできる支払いに上限を設定する旨が述べられている。
顧客を特定できない場合、現金での支払いは€7000まで、暗号資産の送金は€1000までという上限を設定するとのこと。
●欧州議会、匿名のセルフホストウォレットからの€1000以上の暗号資産送金を禁止する法案の投票へ。
ただし、顧客の身元が確認できる場合、または規制対象の暗号プロバイダーが関与している場合は、その取引を許可する旨
●欧州連合理事会におけるData Actの改正案、「スマートコントラクトを中断・終了できるようにするための必須要件」に関する言及
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-7413-2023-INIT/en/pdf
●英国政府、暗号資産マネーロンダリングとを厳しく取り締まる旨のポリシーペーパーを発表
https://www.theblock.co/post/224054/uk-economic-crime-plan-crypto-regulation
3.4. アジア太平洋ほか
●香港当局、暗号企業と銀行家の間の会議を4月28日に招集へ
「直接対話を促進し」「銀行口座の開設と維持における実践的な経験と展望を共有」する狙い。
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