クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
米国、デジタル資産に関する大統領令に署名
ドバイ、バーチャルアセット分野におけるUAEの地位を確立するための第一歩として、バーチャルアセット法を承認
日本暗号資産取引業協会、4/1からのトラベルルール導入を発表
Stripe、暗号通貨取引所やウォレットプロバイダー・NFTマーケットプレイス向け支援を開始。KYCプロトコル改良へ向けFTXと提携
Fantomの創設者でもあるAndreとAnton、DeFi/クリプトへのコントリビューションをクローズと発表
Astar、Coinbase Venturesからの出資を受けたことを発表
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●DLCを使ったサブスクリプション決済方法の提案
アダプタ署名を用いて、サブスクサービスがUTXOから引き出せる金額を制限するもの。
所有者は、いつでもUTXOを移動でき、サブスクに資金を提供できる。
https://suredbits.com/recurring-subscriptions-on-bitcoin-implemented-with-dlcs/
●2者間で互いの関係のないUTXOを交換することを通じてチェーン分析を断ち切ることができるCoinswap
https://github.com/bitcoin-teleport/teleport-transactions/
●Okcoin、web3要素をBitcoin上にもたらすべく、Stacksと協業でグラントプログラム「Bitcoin Odyssey」を立ち上げ
https://decrypt.co/94836/165-million-bitcoin-odyssey-okcoin-stacks-aim-accelerate-btc-adoption
●Bitcoin 2022 と Sound Money Festは4/7-4/9にMiamiで開催
https://b.tc/conference/registration
●4/6-4/9に予定されている「#Bitcoin2022」カンファレンス、35,000人の参加者が見込まれており、これまでで最大規模のBitcoinカンファレンスになる見込み。
https://www.tixr.com/groups/bitcoinconference/events/bitcoin-2022-26217
●開発者むけBitcoin入門。mempoolやscript、BIPなどについて
https://hackernoon.com/an-essential-introduction-to-bitcoin-for-developers
●Cathedra Bitcoin、「米国がBitcoin業界におけるリーダーシップを発揮し、プライバシーが尊重され、オープンソースかつ自由市場で、全体主義的なCBDCに代わるものとして、Bitcoin受け入れることが最も抵抗の少ない道である」と提案。
米国のような国における「adopting Bitcoin」とは
(i) Bitcoinを法定通貨として認可
(ii) 有害なキャピタルゲイン税制の廃止
(iii) マイニング事業への補助・後援
(iv) FRBや財務省による準備資産としてのBitcoinを購入
(v) 固定為替レートでドルをBitcoinに交換可能に
この初期の兆候として、主たる政策立案者がBitcoinを既に重要な通貨資産・新興産業としての支持を表明していることや、クリプトセクターはワシントンD.C.で重要なロビー活動として成長し、熱心・意欲的な有権者を代表しているものと注目していることを挙げている。
https://www.cathedra.com/investors/letters/2021-letter-to-shareholders
1.1.2. L2:Lightning Network
●Bitcoin のL2ソリューションについて
https://blog.liquid.net/exploring-bitcoin-layer-2/
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●PoSへのMergeに向けた最終テストネット「Kiln」がローンチ
https://www.trustnodes.com/2022/03/10/ethereum-launches-the-final-proof-stake-testnet
Kilnの独自ノード実行ガイド
Kiln向けexplorerリスト
https://kiln.themerge.dev/
1.2.2. L2
●Argent、zkSync上のL2アカウント使用にむけたウェイティングリストに50万人以上がサインアップ
●StarkWare、$6bの評価額で新たな資金調達ラウンド。少なくとも$100mの調達に
https://www.calcalistech.com/ctechnews/article/rjm00s7wbq
●Arbitrum上で「Kyberswap DEX」がローンチ。Avalancheの他、Ethereum、Polygon、BSC、Fantom、Cronosで利用可
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●Astarのエコシステムマップ
●Astar、Coinbase Venturesからの出資を受けたことを発表
●Avalanche Foundation、DeFiに特化したインセンティブキャンペーン「Avalanche Rush」の補完として、「Multiverse」インセンティブプログラムを開始。サブネット、アプリ専用ブロックチェーンインスタンスの開発を後押し
1.3.2. 要素技術
●EthSign、Sequoia Indiaなどから$12Mの調達を発表
●オンチェーンデータ分析ツールとして、Etherscan・Dune Analytics・Nansenの他に、Token Terminal・Contextが挙げられている
Token Terminalは、プロジェクトやネットワークの収益指標・価格対売上高比率などを確認できるダッシュボード
Contextは、NFTの活動を追跡するリアルタイムフィード
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●Stripe、暗号通貨取引所やウォレットプロバイダー・NFTマーケットプレイス向け支援を開始。KYCプロトコル改良へ向けFTXと提携
https://stripe.com/jp/use-cases/crypto
●ウクライナへのクリプト寄付はこれまでに総額$63.8mに
https://www.elliptic.co/blog/live-updates-millions-in-crypto-crowdfunded-for-the-ukrainian-military
2.1.2. 投資
●Paxos、シンガポールMASの承認を取り付け、NYとシンガポール双方で承認得た初めてのブロックチェーンインフラプラットフォームに
●Bain Capital Ventures、クリプト専門チーム「Bain Capital Crypto」を新設。
ガバナンスやペイメント・マーケティングなどのツール・サービスをDAO向けに提供する企業に投資予定とのこと
●FTX、機関投資家向けにアドバイザリーサービスのほか、インデックス商品・取引執行・分析ツールなどを提供する「FTX Access」を立ち上げ。
今後、カストディやデリバティブ、ストラクチャード商品、その他の資産運用商品の提供を検討
●Binance、クリプト業界の拡大にむけ、Forbesへの出資に続いて非クリプト分野での買収を検討中と、Financial Timesが報道
https://decrypt.co/94685/binance-plans-acquisition-spree-non-crypto-businesses-report
●Wirex Wallet、DEXアグリゲーターParaswapとの提携を発表。モバイルウォレットアプリ上にネイティブな取引・スワップ機能を追加するもの
2.1.3. 社会生活
●Stanford(CS 251: Cryptocurrencies and Blockchain Technologies)コースのfinal exam
https://cs251.stanford.edu/hw/final2021.pdf
2.1.4. RegTech
●Chainalysis、制裁モニタリングツールとして「Chainalysis oracle」を提供。ウォレットアドレスが制裁対象を含むかを検証するコントラクト。Chainalysisと取引関係の無い者も利用可能
https://go.chainalysis.com/chainalysis-oracle-docs.html
Chainalysisがこれまで取引所に提供している、トランザクションモニタリングツール「Chainalysis KYT」
2.2. NFT
2.2.1. トラディショナルプレイヤー
●Stripe がNFTセールス向けサポートを開始。これにあわせて、Nifty Gateway上でオープン記念のNFTコレクションを発表
2.2.2. NFTエコシステム
●FTX、元WB GamesとSegaの幹部をゲームパートナーシップの責任者に招聘。
FTX Gamingはゲーム会社むけにplay-to-earnやNFT関連の機能をcrypto-as-a-serviceとして提供すべく検討中とされる
https://decrypt.co/94762/ftx-hires-steve-sadin-of-wb-games-as-head-of-gaming-partnerships
●クリエイターやキュレーターが数分でNFTプラットフォームを構築できるDIYサイトビルダー「Artiva」
プロジェクトの大小に関わらず利用でき、ノーコードで構築プロセスを大幅に効率化。
アーティストが手数料無しで作品をmintできる「クリエイターモード」と、アーティストが掲載したい作品をリクエストし、作品を販売されると手数料が得られる「キュレーターモード」がある。
●NFTデータのオーバービュー
https://www.theblockcrypto.com/data/nft-non-fungible-tokens/nft-overview
2.3. DeFi
2.3.1. DEX
●クロスチェーンのスポット・デリバティブ市場にgas代ゼロでアクセス可能な分散型オーダーブック交換インフラを提供する「Injective」
2.3.2. レンディング
●Fantomの創設者でもあるAndreとAnton、DeFi/クリプトへのコントリビューションをクローズと発表。「yearn.finance」「keep3r.network」「bribe.crv.finance」などを2022年4月3日に終了と。
2.3.3. 証券・デリバティブ
●Solana上で仕組債などのスマートコントラクトや個人投資家向けのステーキングサービスを展開するCega Finance、430万ドルの資金調達
https://www.coindeskjapan.com/129085/
2.4. DAO
●投資家としてのDAOの出現。クリプトネイティブで、完全にオンチェーンで生活し、DeFiに関する運用経験と洞察力を持つ新しいタイプの市場参加者として影響力を増している。
①ユーザーへの製品の品質を高めるためにガバナンストークンを蓄積する「サービス・プロバイダー」
例:Convex Finance、StakeDAO、BadgerDAO
②担保として様々なトークンを備蓄し準備資産を発行している「リザーブアセット発行者」
例:Frax Finance、Olympus DAO、Tribe DAO、Alchemix Finance
③異なる戦略的に重要なプロトコルでガバナンスパワーと影響力を蓄積する意図でトークンを蓄える「ガバナンスDAO」
例:Cartel、Lobis、Congruent Finance
CRV・CVX以外で最も広く保有されているのは、FXS、ANGLE、TOKE。
Stableconプロトコル「Frax Finance (FXS)」
ユーロにペグされたagEURを発行するStableconプロトコル「Angle Protocol (ANGLE)」
分散型マーケットメーキングプロトコルTokemakのネイティブ・トークン「TOKE」
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
●Citiのデジタルアセット部門トップ、クリプトスタートアップ立ち上げにむけて退社
●米State Street銀、機関投資家向けデジタルアセットカストディおよび取引インフラのプロバイダーであるCopper.coと共同で、デジタルアセット向けカストディサービスを開発・提供する意向を発表
2.6. 中銀デジタル通貨
●シンガポール財務相、リテールCBDCについて、「現時点ではMASとシンガポールにとってあまり関係がない」とし、近い将来に発行の緊急な必要性はない旨を言明。
金融包摂が大きな問題でないことに加え、効率的で広範な電子決済システムを構築済であることを理由。
https://www.ledgerinsights.com/why-singapore-sees-no-pressing-need-for-a-cbdc/
2.7. デジタル証券
●野村證券株式会社、丸井グループ、Securitize Japanの3社で、本邦事業会社として初の仕組みとなる「公募自己募集型デジタル債」の発行について協業を発表
https://www.securitize.co.jp/news-press-releases/press-releases/20220308
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●G7が発表したロシアへの経済制裁に関する共同声明。
第4項として、国際制裁の影響を回避または相殺する手段としてデジタルアセットを活用できないようにする旨が記載されている。
3.2. 米国
●ホワイトハウス、バイデン大統領が、デジタル資産とその基盤技術のリスクに対処し、潜在的な利益を活用すべく「史上初の政府全体によるアプローチ」の概要を示す大統領令に署名する予定と発表
背景認識
デジタルアセットの台頭は、世界の金融システムと技術的フロンティアにおける米国のリーダーシップを強化する機会を生み出すだけでなく、消費者保護・金融安定性・国家安全保障・気候リスクにも大きな影響を与える。
米国は、この急成長する領域で技術的なリーダーシップを維持し、消費者・企業・広範な金融システム・気候に及ぼすリスクを軽減しながらイノベーションを支援するとともに、民主主義の価値と米国の国際競争力に見合ったデジタルアセットのガバナンスにおいて、主導な役割を果たす必要がある。
そのため、今回の大統領令は、消費者と投資家の保護・金融の安定・不正資金・世界の金融システムにおける米国のリーダーシップと経済競争力・金融包摂・責任あるイノベーションという6つの重要な優先事項にわたって、デジタルアセットに関する国家政策を打ち出すものとなっている。
指示内容
デジタルアセット分野の拡大と金融市場の変化が消費者・投資家・企業・公正な経済成長に与える影響を評価し、政策提言を行うよう財務省および他の省庁に指示し、消費者・投資家・企業を保護する。規制当局にも、デジタルアセットがもたらすシステミックリスクに対して十分な監視と保護を確保を求める。
金融安定化監視評議会に対し、デジタルアセットがもたらすシステミックリスクを特定・軽減し、あらゆる規制上のギャップに対処するための適切な政策提言を策定するよう奨励し、米国および世界の金融安定性を保護し、システミックリスクを軽減する。
デジタルアセットの不正使用でもたらされる不正金融・国家安全保障上のリスクを軽減する。このリスクを軽減すべく関連機関にわたって、これまでにない集中的な協調行動をとるよう指示する。国際的な枠組み・パートナーシップの整合性とリスクへの対応力を確保すべく同盟国等との協力を各機関に指示。
金融システムにおける米国のリーダーシップを強化すべく、技術・経済競争力における米国のリーダーシップを強める。商務省に対し、デジタルアセット技術における米国の競争力およびリーダーシップを強化し、これを活用するための枠組みを、米国政府全体で構築することを指示する。
安全で手頃な金融サービスへの公平なアクセスを促進する。安全で手頃な金融サービスの重要な必要性を確認し、デジタルアセットのイノベーションへのアプローチに反映させなければならない米国の国益とする。
財務長官は、関連機関と協力して、貨幣と決済システムの将来について、経済成長・金融の成長と包摂・国家安全保障、および技術革新がその将来にどの程度影響し得るかについての示唆を示す報告書を作成予定。
デジタルアセットの責任ある開発・設計・導入において、プライバシー・セキュリティ・不正利用への対処・気候への悪影響の軽減を優先しつつ、技術の進歩を研究・支援する具体的な措置をとるよう、米国政府に指示することにより、技術の進歩を支援し、デジタルアセットの責任ある開発・利用を確保する。
CBDCの可能性の研究開発を緊急に行うことにより、発行が国益に適うと判断された場合には、米国CBDCを検討する。潜在的なCBDCのための技術的インフラと能力の必要性を、米国人の利益を保護する方法で評価するよう指示する。
●デジタルアセットに関する大統領令に関する米財務長官の声明(アーカイブ)
デジタルアセットの潜在的な金融安定化リスクを評価し、適切な保護措置が講じられているかどうかを評価すべく、金融安定化監視委員会を召集予定、とのこと。
●米Blockchain Associationは、昨日発表された大統領令を受け、クリプトエコシステムが今や国家経済にとって不可欠で切っても切れない存在であることを証明するものだと歓迎のコメント
●米FinCEN、ロシアの制裁回避をはかる兌換性仮想通貨(CVC)に注意するよう金融機関に対して警告を発出
https://www.theblockcrypto.com/linked/136637/us-fincen-russia-crypto-sanctions-alert
●米バージニア州上院、特定の銀行がBitcoin等のデジタルアセットの保管サービスを提供することを認める法案修正案を承認
https://www.btctimes.com/news/virginia-banks-to-offer-digital-currency-services
●米司法省連邦検事局、BitMEX創業者が銀行機密保護法違反で有罪を認めたとの発表。
暗号通貨ハッキングの収益のロンダリングにBitMEXが使われているとの疑惑を含め、2014年から2020年9月まで「疑わしい活動報告書」を提出しないなど、2015年9月から2020年9月の起訴時まで、BitMEXが故意にKYC/AMLプログラムを実施しなかった結果、BitMEXが実質的にマネロンプラットフォームとなったとしている。
3.3. 欧州
●欧州委員会、3月14日にデジタル資産市場(MiCA)規制法案の最終版を採決へ
●欧州MiCA指令、草案で記載されたPoWの禁止を取りやめたとされたが、禁止の条項が文言は変わったものの、「持続不可能と判断された暗号資産は、発行、提供、取引の承認が禁止」という、実質的に同じ効果を持つものとして復活しているとのこと
●EU、対ロシア制裁において暗号資産を含むあらゆる手段でローンやクレジットの供与が可能であるという共通認識を確認。
「譲渡可能証券」の概念に暗号資産を明確に含むようにさらに明確化へ
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_1649
3.4. アジア太平洋ほか
●ドバイ、バーチャルアセット分野におけるUAEの地位を確立するための第一歩として、バーチャルアセット法を承認し、ドバイバーチャルアセット規制局を設立したことを発表。
UAEの仮想資産サービスプロバイダーのコンプライアンスと情報開示にフォーカスし、ライセンス体制も扱っていくとのこと
https://www.theblockcrypto.com/linked/136994/dubai-creates-agency-for-virtual-asset-regulation
ドバイ金融サービス庁(DFSA)は、クリプトトークン(NFT・CBDC・証券トークンを含まず)に関する提案書を発表
バーチャルアセット法において、認可の対象となる活動は以下のとおり(1/2)
仮想資産プラットフォームサービスの運営・管理
国内外を問わず、仮想資産と通貨の交換サービス
仮想資産間の交換サービス
仮想資産譲渡サービス
仮想資産の保管・管理サービス
仮想資産ポートフォリオに関するサービス
仮想トークンの提供および取引に関するサービス
3.5. 日本
●トラベルルール導入について|日本暗号資産取引業協会
4/1以降、利用者が、会員に預託している暗号資産を受取人に移転させるためにその暗号資産の送付を会員に依頼する場合、以下の事項について申告を求められることになる。
①受取人の氏名
②受取人のために暗号資産の送付を受ける暗号資産交換業者(受取側の暗号資産交換業者)の有無
③受取側の暗号資産交換業者が有る場合はその名称
本年 10 月1日以降は、受取人の住所に関する情報及び移転取引目的等に関する情報の申告もあわせて求められることになる。
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf
●犯罪収益移転防止に関する年次報告書|警察庁
業態別の疑わしい取引の届出受理件数
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/nenzihokoku/data/jafic_2021_zantei.pdf
●(メモ)改正法案における「暗号資産」の定義
資金決済法2条14項において、暗号資産の定義として、電子決済手段を除くことが示された。
https://masudalaw.wordpress.com/2022/03/06/2022kaisei/
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