クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
Google、デジタル通貨を用いたクラウドサービスの支払いを来年にも可能に
Mastercard、「暗号通貨を日常の支払い手段にする方法」として自社取り組みをまとめた記事を発表
OECD、暗号資産に関する報告および情報交換を提供する新たな透明性フレームワーク「暗号資産報告フレームワーク(Crypto-Asset Reporting Framework: CARF)」をG20に提出。
Coin Center、Tornado Cashのスマートコントラクトを制裁したとして、米国財務省を提訴
米国財務会計基準審議会(FASB)、暗号資産の評価に公正価値会計を用いるべきと発表
Grayscale Investments、Bitcoin Futures ETFを認めながらスポットETFを認めないのは差別的であると、SECに対して法的措置を開始
River Financial、Lightning Network Nodeレポートを発表
Bitcoinネットワーク上の大規模なマルチシグトランザクションをうけ、LightningNetworkの多くのノードがバグにより同期が取れなくなる事象発生
Devcon VI Bogotá 開催
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●Bitcoin Amsterdam(10/12-10/14) - Day 1の模様
●Bitcoin Amsterdam(10/12-10/14) - Day 2の模様
●Bitcoin Amsterdam(10/12-10/14)のアジェンダ
https://b.tc/conference/amsterdam/agenda
●zebedeeio、Bitcoinオープンソース部門「NBD」を発表。
Bitcoinで動く現代の主権者個人のためのオープンソースソフトウェアを構築するとのこと
1.1.2. L2:Lightning Network
●Bitcoinネットワーク上の大規模なマルチシグトランザクションをうけ、LightningNetworkの多くのノードがバグにより同期が取れなくなった件について
●lnd v0.15.1-beta以下で発生したチェーン同期の障害
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2022/10/11/194929
●Lightning Networkの基本 (3)
https://medium.com/nayuta-inc/lightning-network%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC-3-876ffafc832d
●Taro Asset の生成と転送
https://medium.com/nayuta-inc/taro-ed6b93b09a75
●River Financialが発表した、Lightning Network Nodeレポート
Lightningで支払いを送受信するためのLightningノードを実行するのは比較的簡単だが、ノードをビジネスシステムと統合したりするのは、より労力がかかる。
Lightningインフラを独自に運用したい企業は、予期せぬシステム障害、ソフトウェアアップデート、およびメンテナンスを考慮し、複数のノードを構築して運用する必要がある。また、ユーザーが常にLightningで決済できるように、流動性を補充するためのアラートシステムも必要。
そして、正確なレポーティングを行うためには、多くの会計上の考慮事項や業務システムとの統合が必要。さらに、Lightningのキャパシティはホットウォレットよりも安全ではないため、セキュリティも重要。
Lightningの決済は、予期せぬ流動性の枯渇により、失敗したり行き詰まったりすることがある。例えば、ノードがその時点で利用可能な経路がないために成功する経路を見つけることができない、あるいは経路を見つけるのに時間がかかりすぎて1分後にタイムアウトするなど、決済が失敗するさまざまな技術的要因がある。
この9月にルート化に失敗した1467件の支払いのうち、866件はタイムアウトによるもので、558件はその時点でルートが利用できなかったことによるもの。ノードが経路を計算してから支払いを送信するまでに流動性が枯渇して残高不足になったことも28件。
このように、Lightningを大規模に利用する上では、特に会計・セキュリティ・メンテナンスに関連して、企業が取り組むべき多くの独自の課題があるため、Lightningノードを運営する能力を社内に導入することは意味がない。
そこで、多くの企業がこうした業務をアウトソーシングすることで利益を得られる可能性があると考えられることから、より多くの企業がLightningを業務に取り込めるよう、「River Lightning Services」を開始した。
https://river.com/learn/files/river-lightning-report.pdf
●River Financial、Lightningの機能をアプリケーションに統合しようとする企業むけパブリックAPI「River Lightning Services」のローンチを発表。
エルサルバドルのChivoウォレットに1年近くLightningトランザクションを提供し続けているとのこと
https://blog.river.com/announcing-river-lightning-services-rls/
開発者向けLightningゲートウェイ「River Lightning Services (RLS) 」のウェブサイト。
Lightning インフラを自分で実行することなく、Bitcoin Lightningの入出金を可能にするシンプルなAPI
https://www.rls.dev/
River Lightning Services (RLS) のAPIドキュメント
https://docs.rls.dev/
River FinancialによるLightningの解説ページ
https://river.com/learn/what-is-the-lightning-network/
●BitcoinとLightningを使った革新的なアプリケーションやツールを学び、つながり、協力し、構築するメーカー向けの新しいオンライングローバルトーナメント「Legends of Lightning」
https://makers.bolt.fun/tournaments/1/overview
●Lightning Networkを悪用してテストすることを意図したターミナルUIベースのツール「LNsploit」
https://stacker.news/items/80134
●ビットコインネットワーク上でスマートコントラクトを実現する、RGBプロトコル関連プロダクトのオープンソース開発を開始
https://www.value-press.com/pressrelease/305674
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●DevCon 6 - Opening Ceremony
https://www.youtube.com/playlist?list=PLaM7G4Llrb7xOQ31CmApHlPpaNpFizV4D
●Devcon 6 - Day 1
https://www.youtube.com/playlist?list=PLaM7G4Llrb7zOctAF73nzl0RwaQYvsV2z
●Devcon 6 - day 2
https://www.youtube.com/playlist?list=PLaM7G4Llrb7wPaWK47GNSGvPoXUZGYVKX
●Devcon 6 - day 3
https://www.youtube.com/playlist?list=PLaM7G4Llrb7xa1QmJY44GX0bnHdYmuB0P
1.2.2. L2
●Matter Labs、Q1 2023にEthereumのスケーリングプロトタイプのパブリックテストネット「Pathfinder」をローンチへ
https://www.theblock.co/post/175823/zksync-says-layer-3-testnet-pathfinder-will-launch-in-q1-2023
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●SolanaのDeFi「Mango Markets」、$100mの資金流出
ハッカーがオラクルの価格操作によってMangoから資金を空にすることができたとのこと
●Polygon zkEVM、パブリックテストネットのリリースを発表
https://blog.polygon.technology/polygon-zkevm-public-testnet-the-next-chapter-for-ethereum/
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●Google、デジタル通貨を用いたクラウドサービスの支払いを来年にも可能に。
「GCPのインフラサービスと、Coinbase Commerceサービスとの統合を通じて、当初はWeb3において暗号通貨での支払いを希望する顧客から暗号通貨での支払いを受け付ける
とした上で、今後、時間の経過とともに、より多くの顧客が暗号通貨で支払いを行えるようになるだろう」としている。
Coinbase Commerceは、Bitcoin、Bitcoin Cash、Dogecoin、Ethereum、Litecoinを含む10種類の通貨をサポートしている。
また、暗号通貨を保管・取引するサービスとして「Coinbase Prime」の利用を検討しているとのこと
●Bitcoinが使える場所マップ
2.1.2. 投資
●Bank of America Private Bankの調査によると、43歳未満の投資家は、変革期にあるデジタルアセット分野のどこかに最も大きな成長機会があると考えており、半数近く(47%)が暗号通貨を保有しているとのこと
●Bitcoinサービスを提供するNYDIGが、約3分の1の人員をレイオフしたとするWSJ報道
●Bettermentがローンチした暗号資産投資サービスのウェブサイト
https://www.betterment.com/crypto
●Grayscale Investments、Bitcoin Futures ETFを認めながらスポットETFを認めないのは差別的であると、SECに対して法的措置を開始
https://cryptoslate.com/grayscale-files-opening-brief-in-bitcoin-etf-battle-against-sec/
2.1.3. マイニング
●BitcoinマイニングサービスプロバイダのLuxor Technologies、店頭(OTC)Bitcoinマイニングデリバティブ商品を発表。
マイニング企業のハッシュレートを追跡し、機関投資家や投資家にマイニング業界への間接的なエクスポージャーを与えるもの
https://www.btctimes.com/news/luxor-mining-service-provider-launches-bitcoin-hashprice-derivative
2.2. NFT
●「NFTのランダム型販売に関するガイドライン」が共同公表
2.3. DeFi
●Tether、準備金からコマーシャルペーパーを完全に排除し、これらの投資対象を米国財務省証券(T-Bill)に置き換えたことを発表
https://tether.to/en/tether-slashes-commercial-paper-to-zero/
2.4. 金融機関のデジタルアセットサービス
●Mastercard、「暗号通貨を日常の支払い手段にする方法」として自社取り組みをまとめた記事を発表
①クリプトカード
米国ではGeminiと共同で、暗号通貨で報酬を支払うクレジットカードを開発
アルゼンチンでは、Binanceと共同でプリペイドカードを発売
欧州では、NFTアバターを入れてカスタマイズできるデビットカードを発表
②クリプト対応サービス
クリプトプレイヤーや発行者へのサポートを強化
クリプトトランザクションにおける不正行為を追跡・調査するサイファー・トレースの買収を完了
同社の技術をもとにCrypto Secureを立ち上げ
③ペイメント
Paxos、Circle、Evolve、Uphold など、クリプトに特化した企業と提携
④クリプトをネットワークで利用
Mastercardが承認した特定のデジタルアセットを同社ネットワークに導入する計画を進行中
⑤メタバースとNFT
CoinbaseユーザーはMastercardでNFTの支払い可能
6月には新たに8つのNFTマーケットプレイスとインフラプロバイダーに機能提供する計画を発表
●BNY Mellon、デジタルアセットのカストディ・プラットフォームの提供開始を発表
2.5. デジタル証券
●ブロックチェーン技術を活用した電子的取引に係る第三者対抗要件に関する実証開始について|株式会社 BOOSTRY
https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/etc/20221014/bstr20221014.pdf
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●OECD、暗号資産に関する報告および情報交換を提供する新たな透明性フレームワーク「暗号資産報告フレームワーク(Crypto-Asset Reporting Framework: CARF)」をG20に提出。
従来の金融商品とは異なり、金融仲介機関の介入なしに、また中央管理者が取引や暗号資産の保有状況を完全に把握することなく、送金や保有を行うことが可能。
暗号資産取引所やウォレットプロバイダーなど、新たな仲介業者やサービスプロバイダーを生み出したが、その多くは現在も規制されていない。
こうした動きは、税の透明性の進展を損なう一方で、脱税に利用される可能性を高めている。
今回のフレームワーク(CARF)は、OECD/G20共通報告基準(CRS)と同様に標準化された方法で、毎年、納税者の居住地域と自動的に情報を交換することによって、暗号資産取引に関する透明性を確保するもの。
顧客のために、または顧客に代わって暗号資産の交換取引を実現するサービスを提供する事業者または個人は、CARFに基づく報告義務を負うことになる。
3.2. 米国
●Coin Center、Tornado Cashのスマートコントラクトを制裁したとして、米国財務省を提訴。
「米国人が暗号通貨と関連資産を使用する際にプライバシーを維持するのに役立つオープンソースのソフトウェアツールであるトルネードキャッシュの使用を犯罪化した」と主張
https://thedefiant.io/coin-center-sues-treasury-tornado-cash
Coin Centerによる提訴の文面
https://www.coincenter.org/app/uploads/2022/10/1-Complaint-Coin-Center-10-12-22.pdf
Coin Centerの発表記事によると、提訴では4つの主張を述べているとのこと。
1) Tornado Cashの制裁は、法的権限を超えて行われたものである。
2) 財務省自身の規則と過去の大統領令でさえ、制裁コントロールの適用を個人、団体、またはその財産との取引に限定している。
3) Tornado Cashに制裁を加えるにあたり、財務省はその行動の付随的な影響を考慮せず、また、以前の制裁方針からの著しい逸脱に対する認識や正当性を示すこともなかった。
4) 個人的であった政治献金が、チェーン上で公開されなければならないため、米国人の結社活動は冷え切っている。
https://www.coincenter.org/coin-center-is-suing-ofac-over-its-tornado-cash-sanction/
●米国財務会計基準審議会(FASB)、暗号資産の評価に公正価値会計を用いるべきと発表。
企業は損失と利益を直ちに認識することが可能に。
審議会では、暗号資産を保有する企業が、当該資産をどのように測定すべきかについて審議が行われ、企業に対して以下を要求することを決定した。
暗号資産を公正価値で測定すること
公正価値の増減を報告期間ごとに包括利益で認識すること
暗号資産を取得するために発生した特定の費用(手数料等)を費用として認識すること
https://www.fasb.org/Page/PageContent?pageId=/meetings/pastmeetings/10-12-22.html&bcpath=tff
●米SEC、NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」を制作したYuga Labsによるデジタルアセットの販売が連邦法に違反していないかどうかを調査しているとの報道
3.3. 欧州
●英FCAによると、暗号資産に投資する場合には「全資金を失う覚悟」が必要であると
3.4. アジア太平洋ほか
●ブラジル当局CVM、暗号証券分類に言及。
株式、債券、新株予約権付社債などの構造をデジタルで表現したトークンを証券とみなされるとしている。
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