クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
BitMEX Research、CoinPoolのFAQ記事を発表
Web3におけるマーケティング:新しいマインドセット、戦略、指標
「NFTFi(NFT×DeFi)」の概要
Aave、Polygon・Fantom・Avalanche・Arbitrum・Optimism・Harmony上でV3を発表
コインチェック、NASDAQ上場子会社への移行について発表
IOSCO(証券監督者国際機構)のDeFiレポート
英国中銀BoEの暗号資産とDeFiに関するレポート「Financial Stability in Focus」
豪州上院議員、DAOもコーポレートガバナンスと法人格の基準を規定することを提言
三菱UFJ信託銀行の「ST研究コンソーシアム」が「セカンダリ・DLT拡張WG」第2期報告書を公表
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●CoinPoolのホワイトペーパーをうけ、BitMEX ResearchがFAQ記事をまとめている。
CoinPoolとは、多くのBitcoinユーザーが資金を1つのUTXOにロックし、オフチェーンでこのUTXO内で取引を行い、いつでもプールから資金をアンロック/引出できるようにするBitcoin上のプロトコル。
CoinPoolによって得られるメリットとしては、より低い手数料、即時確認、プライバシーへの代替アプローチを想定されている。
Lightningとの比較では、Lightning Network全体のルーティングを回避することによって、オンチェーン取引を介してチャネルを閉じる前に、より多くの支払いを行うことができるとのこと。
CoinPoolの主な欠点としては、引出を除く全てのアクションにプールユーザー全員の協力が必要なこと。
CoinPoolには、次回ソフトフォークで予想されているSIGHASH_ANYPREVOUTなどを必要とする。
https://blog.bitmex.com/coinpool-faq/
●Bitcoinの各種アドレスフォーマットについての紹介記事。
2022年2月現在、一般的に使用されているBTCアドレスタイプについて記載されている
https://rf5.github.io/2022/02/14/btc-address-intro.html
●Galaxy Digitalが2月に発表した、Bitcoinメッセージングプロトコル「Stratum v2」に関するペーパー。
Stratum v2の利点として、検閲耐性・セキュリティ・柔軟性などを挙げている。
https://docsend.com/view/szk48syby33q28zq
1.1.2. L2:Lightning Network
●TORを通してLightningノードにアクセス可能にするブラウザ拡張機能「Alby」。
Lightningを使って支払いを行っても、TORを通してプライバシーを保てるというもの
●Lighting Networkの流動性の価格設定について考察した論文。
インバウンドの流動性の価格を考慮した均衡価格はどうなるかを考えようとするもの
https://github.com/GaloyMoney/liquidity-fees-paper
●Blockstreamがリリースした、Lightningノード自動管理ツール「CLBoss」。
チャネルのリバランス、安い時のチャネル開設、Submarine swapsの実行、ルーティング手数料の調整などを提供
https://medium.com/blockstream/automate-lightning-node-management-with-clboss-84be2e8a7555
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●“イーサリアムの生みの親がクリプトの未来を憂う (TIMEより和訳)” by Taka
1.2.2. L2
●Loopring、GameStopの新しいNFTマーケットプレイスへ搭載されることを発表。
GameStopは以前、NFT取引プラットフォームの構築でImmutable Xと提携していたため、この声明の矛盾が指摘されている。
Moonbeam、Centrifuge、Efinity、HydraDX、OriginTrail、Parallel、Zeitgeist、Manta、AcalaなどのParachainからサポートするほか、Alameda ResearchといったPolkadotエコシステムを支えるVCも出資。
https://cryptobriefing.com/gamestop-nft-marketplace-plans-sow-confusion/
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●PolkadotのParachain群が、Acala NetworkのStablecoinサポートへ「aUSDエコシステム・ファンド」を立ち上げ
https://thedefiant.io/polkadot-parachains-250m-fund/
●Cosmosのガイドライン記事。
CosmosウォレットやATOMのステーキング および Cosmos DEXを紹介している
●Cosmosの上位5つのプロジェクトとそのトークンについて。
Cosmos Hub、Osmosis(DEX)、Juno(スマートコントラクトプラットフォーム)、Secret Network(プライバシー重視のSecret Apps向け)、Astroport(TerraのDEX)
●FTXとAnimocaから$25mの調達を発表した、Terra上のゲームプラットフォーム「Com2uS」
1.3.2. 要素技術
●暗号資産カストディアンのセキュリティ対策についての考え方【第3版】を公開しました。 / CGTF (Cryptoassets Governance Task Force)
●The Graph R&Dロードマップ. The Graph Foundation | by The Graph Japan | The Graph Protocol Japan | Mar, 2022 | Medium
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●エルサルバドルの隣国グアテマラのSan Pablo La Laguna(Atitlan湖畔)。
Bitcoin BeachのあるEl Zonteまでは車で6時間ほどの位置にある。
El Zonteのような循環型のBitcoin経済を作るべく、12軒の観光業がチップや支払いにBitcoinを受け入れ始めているとのこと。
●El ZonteにあるBitcoinbeachのコワーキングスペース「Hope House」。
1日10ドルで、エアコン付きの部屋、エルゴノミックチェア、無料WiFi、十分な電源コンセントが利用可能
●Gemini Payments、アイルランドで電子マネーライセンスを取得し、英国同様にアイルランドでも電子マネーを発行可能に
●「Bitcoinを通貨ネットワークとして使うことによって、金融システムはより安く、より速く、よりイノベーティブで、よりインクルーシブなものになる」とする、Jack MallersのTweet
●Figure Technologies、暗号通貨担保とした住宅ローンを4月に開始する計画と発表
https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:6912213409501515778/
2.1.2. 投資
●Ledger Nano SとNano Xの中間モデル「Ledger Nano S Plus」のレビュー記事
https://decrypt.co/95319/ledger-nano-s-plus-review-a-top-hardware-wallet-refreshed-for-2022
●FTX Venturesがマネーアプリ「Dave」に出資。FTX USが暗号通貨パートナーとして暗号通貨サービスの提供を開始予定
https://decrypt.co/95650/ftx-ventures-invests-100-million-money-app-dave
●幻の大連合構想、仮想通貨3社が選んだ別離の道: NIKKEI Financial
https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUB148110U2A310C2000000/?s=1
●Thunder Bridge Capital Partners Ⅳ, Inc.との統合によるNASDAQ上場子会社への移行について |「今後、コインチェックはグループ内組織再編によりCCGの100%子会社となり、CCGは2022年中を目途にティッカーシンボル「CNCK」としてNASDAQに上場する予定です。」
https://corporate.coincheck.com/press/H9AiuHQj
(補足資料)当社連結子会社Coincheck Group B.V.のThunder Bridge Capital Partners IV, Inc.とのDe-SPACによるナスダック上場に関するお知らせ|投資家向けプレゼンテーション資料(マネックスグループ株式会社)
https://www.monexgroup.jp/jp/news_release/irnews/auto_20220322508686/pdfFile.pdf
●“グリーンリスト適用可能企業においては、JVCEAの審査確認を経ずして自社の審査を適正に行うことで、届け出のみで取扱いを可能にする” / “日本版グリーンリストの開始について
https://note.com/genkioda/n/n7194029b2ecf
2.1.3. マイニング
●石油ガス大手のExxon、廃棄されたフレアガスをマイニングに利用。
余分な天然ガスを活用できる一方、マイニングの電力源を見出すことができるという意味でWin-Winの関係として注目されている。
アラスカ・ナイジェリア・アルゼンチン・ガイアナ・ドイツでも同様のプロジェクト立ち上げを検討中とのこと。
2.1.4. 社会生活
●エルサルバドル財務相が「Bitcoin債には最大15億ドルの需要がある」と語ったとのFT報道。
他の新興国によるBitcoin債の発行が続くかの見通しは、今回の募集の成否(申込み、投資家層の多様化、発行後の取引)に左右される、との見方。
https://www.ft.com/content/76e1293d-89fd-431a-abb4-9988b4343157
●エルサルバドル財務相、Bitcoin債の発売は9月までずれ込む可能性に言及
https://blockchain.news/news/el-salvador-delays-the-issuance-of-bitcoin-bonds
●米フロリダ州知事、企業が暗号通貨で税金を支払い可能とする意向示す
●米ポーツマス市、PayPalアカウントに暗号通貨を保存していれば、支払い方法としてPayPalを選択することによって、その暗号通貨を使って市への支払いが可能に。
暗号通貨はPayPalによって米国通貨に変換されるため、市の財務慣行に影響を与えることはない、としている。
●ホンジュラスにおけるBitcoinの法定通貨としての採用の可能性に関するコミュニケが発表。Bitcoin に見切りをつけ、代わりにCBDC路線へ
2.2. NFT
2.2.1. トラディショナルプレイヤー
●ブロックチェーンゲーム子会社 株式会社CA GameFiを設立 | 株式会社サイバーエージェント
「アジアや米国など世界に向けて、ブロックチェーンゲームに最適化されたオリジナルタイトルや他社IPゲームの企画・開発を行ってまいります。」としている
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=27445
2.2.2. NFTエコシステム
●DeFiance Capitalファウンダーが電子メールの添付ファイルを介したウォレット攻撃の被害に。
北朝鮮とつながりのあるLazarusグループの金融犯罪部門に類似しているとの指摘。
ソフトウェアウォレットに価値のあるNFTを保管しないように勧めている
●NFTに流動性を持たせ利回りを稼ぐ、またはDeFiで運用されているNFTを有効活用する「NFTFi(NFT×DeFi)」。
NFTを利用しStablecoinを借りるレンディングや、特定のNFTを期間限定で使用できるレンタル、フラクショナル化、価格発見プロトコル、NFTデリバティブ、NFT AMMなど。
https://medium.com/@ununifi/nftfi-landscape-3089b5f8315
2.3. DeFi
2.3.1. レンディング
●MKR低迷に伴い余剰資金が減少する中で大規模な清算に見舞われるのではないかという懸念から、MakerDAOの再生にむけた新しい提案「Aggressive Growth Strategy」が議論を巻き起こしている。
現実世界の資産(RWA)を持ち込み、投資家やベンチャーキャピタルに株式を提供することによって、問題解決を図るもの。
「Aggressive Growth Strategy」提案本文によると、資本調達を実現するための仕組みとして、「借入金の発行」「株式の売却・発行」という2つのアプローチの組み合わせが理想的だとしている。
https://thedefiant.io/makerdao-real-world-assets-proposal/
https://forum.makerdao.com/t/aggressive-growth-strategy/13958
●Aave、Polygon・Fantom・Avalanche・Arbitrum・Optimism・Harmony上でV3を発表。
対応チェーン間の「ポータル」では、Aaveガバナンスによって投票された「許可リスト」ブリッジプロトコルのみを提供し、クロスチェーン取引を促進することによって、異なるネットワーク上のAave V3市場間で資産をシームレスに移動させることが可能に
https://aave.mirror.xyz/2TnHYHQRnNhSG56Y4CcssulFArSVqrFbmAdYfU7Kxp0
2.3.2. 証券・デリバティブ
●Paradigm、Ribbon Financeへの投資ラウンドをリード
●ReFiとは?パート1 ー気候変動に関するクリプトの未知の世界を巡る旅 — Fracton Ventures
2.3.3. Stablecoin
●TerraのStablecoin「UST」をサポートするLuna Foundation Guard(LFG)、$3bのトレジャリーを元手にBitcoin購入に充てると発表。
LFGは、購入したBTCをリザーブメカニズムとして使用し、いかなる市場状況でもUSTのペグを1ドルに維持できるようにする予定。
https://agora.terra.money/t/bitcoin-reserve-pool/5259
2.4. DAO
●DAOトレジャリーの総額は$9.5Bで、内訳はEthereum上に$8.2B、Solana上に$1.3Bとのこと
https://decrypt.co/95470/dao-treasuries-ethereum-solana-deepdao
●Web3におけるマーケティング:新しいマインドセット、戦略、指標 (a16z Futureより和訳)
●透明性と分散型コラボレーションを活用して、生活や社会を変えていくために新しい方法で働くDAOの取組例。
Unchain Fund
人道支援を目的としたファンドレイジングに取り組む
ウクライナの銀行と提携し、個人に直接資金を分配するオンラインカードを発行
利用者はこのカードを使って、食料購入やサービス支払に充当できる
Marma J Dao
小児疾患患者むけといった草の根コミュニティーの支援
Aurora DAO
Auroraプロトコルを管理する分散型取締役会として働くDAO
保有者が、プロトコルに関わるハイレベルな事項やその他管理運営上の決定事項について投票
Developer DAO
Web3空間における開発者の教育を加速させることを目的としたDAO
誰もが無料で参加可能な奨学金プログラムも提供
Komorebi Collective
女性やノンバイナリーの人々が設立した暗号化企業を支援することを目的としたDAO
SailGP DAO
プロスポーツ向けのコミュニティエンゲージメント・アクティベーションプラットフォーム
メンバーが、提案を通じて、選手選考・チーム運営について発言可能
https://near.org/blog/a-deep-dive-into-daos-life-changing-daos/
●トークン報酬に関するParadigmの解説記事
プレローンチ/ポストローンチによる相違点などについて。
プレローンチの場合、価値は将来のローンチイベントに大きく左右されるが、行使により課税。
ポストローンチの場合、受領者は受領後すぐに課税。発売後のトークン付与が権利確定の対象となる場合、市場価値に基づいて申告所得が発生。
https://www.paradigm.xyz/2022/03/token-compensation-a-brief-explainer-for-job-candidates
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.5.1. 米国
●JP Morganの「Payments are eating the world」レポートで示された「POWER」フレームワーク
P: Platform
O: Online
W: Wallets:暗号通貨、Stablecoin
2021年7月現在、ブロックチェーンウォレットのユーザー数は世界で7500万人を超え、2015年から23倍に増加しているとのこと。
取引だけでなく融資や決済・保険などに適用されることで、DeFiと総称される、より高速で安価な全く新しい金融サービスのシステムを構築できる可能性があるとしている。
E: Embedded
R: Real time
●Goldman Sachs、Galaxyで初の現金決済型暗号通貨オプション取引を実行
Non-Deliverable Bitcoin Option (NDO)と呼ばれるBitcoin関連商品を取引したもの。
https://www.thestreet.com/investing/cryptocurrency/goldman-sachs-helps-bitcoin-take-a-major-step
●レイ・ダリオ氏のヘッジファンドBridgewater、初めてクリプトファンドを支援へ
●Fidelity、スイス証取SIXに米ドル建ておよびスイスフラン建てのBitcoin ETPを上場。
これによって、SIXでは、18のデジタル通貨に基づく208の商品にアクセス可能に
●BlackRock、ロシア・ウクライナ戦争が国際取引のツールとしてのデジタル通貨の採用を加速させる可能性に言及。
グローバルなデジタル決済システムは思慮深く設計すれば、マネロンや不正のリスクを減らしつつ国際取引の決済を強化できるとし、顧客の関心の高まりを受け、デジタル通貨とStablecoinの研究を進めているとも。
●Goldman Sachsが172人の顧客に対して実施したデジタルアセットに対する意識調査。
60%が、今後1~2年の間にデジタルアセットの保有額を増やすと予想。
うち32%は、保有額を「大幅に増やす」見込みとしている。
55%が、総資産の最大5%を割り当てているという。
https://www.theblockcrypto.com/linked/139124/goldman-sachs-crypto-survey-march
2.5.2. 欧州
●欧州の中央証券保管所(CSD)を運営するEuroclear、Fnalityへの出資を発表。
10月にはホールセール向けにsyntheticCBDCとなる決済通貨を、英国中銀に預託されたポンドを使って発行予定としている。
Fnalityは2016年からコンセプト開発されてきたものの、2021年に英国中銀が、異なる金融機関の資金をco-mingleできるオムニバス中央銀行口座を認める決定をしたことによって、その立ち上げの道のりが加速しているとのこと。
https://www.ledgerinsights.com/euroclear-invests-in-fnality-blockchain-based-synthetic-cbdc/
2.5.3. アジア太平洋ほか
●豪州4大銀行のANZ銀、豪ドル建てStablecoin(A$DC)の支払いを、パブリックパーミッションレスブロックチェーン取引を通じて実行することに成功したと発表。
https://media.anz.com/posts/2022/03/anz-completes-landmark-stablecoin-payment
●ANZ銀は自行でEthereumのスマートコントラクトを作成し、Fireblocksプラットフォームを介してデプロイ。
コントラクトはOpenZeppelinによる監査を受け、Chainalysisによる取引スクリーニング・監視を実施
https://www.ledgerinsights.com/anz-issues-blockchain-stablecoin/
2.6. 中銀デジタル通貨
2.6.1. グローバル
●BISイノベーション・ハブと豪州・マレーシア・シンガポール・南アフリカの4中銀、「Project Dunbar」にて国際決済のためのマルチCBDCプラットフォームのプロトタイプを開発を発表
https://www.bis.org/press/p220322.htm
2.6.2. 米国
●FRB議長、デジタル通貨にはプライバシー確保や識別可能な性質必要
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-24/R97TV0T1UM0W01
2.6.3. 欧州
●英国中銀BoEとMIT DCI、CBDCに関する12ヶ月間の研究プロジェクトにおける協力に合意。
MITのDigital Currency Initiativeチームと連携し、CBDCシステムの設計に関わる潜在的な技術的課題、トレードオフ、機会、リスクについて調査する予定
2.6.4. 日本
●日銀、CBDC実証実験(概念実証フェーズ2)の開始を発表。
CBDCに様々な「周辺機能」を付加して、その実現可能性や課題を検証するもの。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220325f.pdf
2.7. デジタル証券
●三菱UFJ信託銀行が主催する「ST研究コンソーシアム」、「セカンダリ・DLT拡張WG」第2期報告書を公表。あわせて、「Progmat 5.0プロジェクト」及び「資金決済WG」を開始へ
https://www.tr.mufg.jp/ippan/pdf/sec-dlt2_report.pdf
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●IOSCO(証券監督者国際機構)のDeFiレポート
DeFiの普及の背景にあるステークホルダーのインセンティブとして、以下のように整理している
初期の投資家:新技術に資本配分する機会
暗号資産保有者:市場が流動性を渇望しマーケットメーカーを提供
TradFiとCeFiの市場参加者:多様でより高いリターンが期待できる代替プラットフォーム
ブロックチェーン・コミュニティ:スケールにむけた奨励
暗号資産のアーリーアダプター:製品やサービスに投資できる場所
リスクとして、フロントランニング、フラッシュローン、不法行為リスクのほか、技術系リスク(ブロックチェーン・スマートコントラクト・オラクル)、ガバナンスリスクなどを挙げた上で、暗号資産取引プラットフォームの中央集権化や、伝統的な市場へのリスクの波及について言及している。
●世界銀行による、暗号資産のマクロ分析レポート
1) 各国の月次取引量の変動は、国レベルの最近のマクロ経済動向よりも、米国の実質長期インフレ期待、米国実質国債利回り、金・暗号資産価格などのグローバルな関連要因によるところが大きい。
2) IT導入が進んでいる国や、送金への依存度が高い国において活発。
3) このように暗号資産は、リスク資産、潜在的なマクロヘッジ、クロスボーダー取引をサポートする潜在ツールとして認識されている。
https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/37115
3.2. 米国
●米NY州議会、州内でのPoWマイニングを2年間禁止する法案本日審議中とのこと。
米Blockchain Associationは、「マイニングをできるだけクリーンなものにするよう努力してエネルギー消費を研究すべき」と主張している。
●米イエレン米財務長官、クリプトについて「金融の安定性、消費者投資家の保護、不正な取引への利用など」の懸念から懐疑的としつつ「恩恵もあり、決済システムにおけるイノベーションは健全なものであり、イノベーションを実現する規制環境構築へ提言を行いたい」旨を回答
●米国科学技術政策局による「デジタル資産のエネルギーおよび気候への影響に関する情報提供」。
大統領令が「デジタル資産が気候変動への取り組みやクリーンで信頼できる電力網への移行を阻害・促進する可能性を検証する報告書を提出するよう」求めたことを受けた意見募集
●米国司法省、NFT売却時に調達した資金を持ち逃げしたとしてFrostiesスキームに関わる2名を告発。電信詐欺・マネロンを行うための共謀での刑事訴状として
3.3. 欧州
●暗号資産とDeFiに関する英国中銀BoEのレポート「Financial Stability in Focus」。
金融安定化へのリスクとして、「システミックな金融機関に対するリスク」「中核的な金融市場に対するリスク」「決済への利用によるリスク」を挙げている。
1: システミックな金融機関に対するリスク
英国の銀行による暗号資産市場へのさらなる関与は財務的損失や業務の混乱リスクを増大させる可能性。
決済用Stablecoinの成長により、金融システムにおけるノンバンクの役割が増大する可能性。
2: 中核的な金融市場に対するリスク
機関投資家のポートフォリオに組み込まれ始めている。
Stablecoinの裏付け資産の構成は、大量の償還に対処するのに十分でない可能性。
3: 決済への利用によるリスク
Stablecoinは、決済においてますます重要な役割を果たす可能性。
暗号資産およびDeFiが英国の金融システムの安定性に及ぼす直接的なリスクは、現時点では限定的ではあるものの、成長のペースやより広範な金融システムとの相互接続の可能性から、将来的に多くの金融安定リスクをもたらす、としている。
https://www.bankofengland.co.uk/financial-stability-in-focus/2022/march-2022
●英当局FCA、暗号資産へのエクスポージャーを有する規制対象企業に対して既存義務への注意喚起となる通知を発表。
非規制対象業務を明確に区別すること
FCAへの登録
金融犯罪に悪用されるリスクに対処する適切なシステムとコントロール
などを挙げている。
https://www.fca.org.uk/news/statements/notice-regulated-firms-exposure-cryptoassets
3.4. アジア太平洋ほか
●豪州上院議員、デジタルアセット・エコシステムの基礎を築く「デジタルサービス法案」において、DAOについても会社法の下に置いてコーポレートガバナンスと法人格の基準を規定することを提言している。
「最初の株式会社がアムステルダム証券取引所に上場して以来の重要な進展」だとしつつも、「DAOが法人税を支払う義務はない」ことから、「課税基盤に対する本質的な脅威であり緊急に規制されなければならない」としている。
DAOを法的に認める上では、以下の観点で最低限の基準を立法化する必要があるとのこと。
法域内における責任者
ホールセール/リテールのDAOを区別する消費者保護フレームワーク
監査・保証・情報開示に関する基準
有限責任
DAOのガバナンスプロトコルを標準化するためのルール
DAOとあわせ、税制についてもトピックに挙げている。
既存の税法をデジタルアセットのエコシステムに全面的に適用しようとすればこの分野は窒息してしまう一方、デジタル資産の税制は効率的・効果的であるのにアナログ経済が既存の制度に縛られるという世界も作りたくないというジレンマも吐露。
「アナログ経済で適用される税法をデジタル世界に適用することを検討しているが、10年後には逆の話になっていることは想像に難くない」とし、デジタルアセット税制を構築するプロセスは、「規制環境を一掃する一世一代のチャンス」と述べている。
https://www.andrewbragg.com/post/address-at-blockchain-week-2022
●マレーシア通信省、Bitcoinなどの暗号通貨を合法的な送金として採用するよう政府に提案しているとのBloomberg報道。
●タイ当局、2022年4月1日から決済手段としての暗号通貨の利用を禁止すると発表
https://decrypt.co/95748/thailand-bans-crypto-payments
●インドで新たなクリプト税制が導入。
トレーダーがあるデジタルアセットの取引による損失を、別のデジタルアセットで得た利益と相殺することを妨げるものとして、多くの反発
https://www.btctimes.com/news/new-indian-crypto-tax-policy-hurts-traders
●インド、2022年財政法案を可決し、仮想デジタル資産(VDA)の譲渡による損失は、別のVDAの譲渡によって生じる所得との相殺が認められなくなることに。あわせて、暗号資産への30%の所得税課税が明確化。
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