クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
香港、仮想資産の発展に関する政府方針声明を発表
デジタル庁「Web3.0研究会」、「Web3.0研究会DAO」立上げへ
ブロックチェーンなしでトークンを発行できるプロトコル「Pear Credit」が発表
南アフリカのPick n Pay、Lightning対応のアプリを使って代金支払可能に
VitalikがEthereum ロードマップのアップデート案を発表
外国為替市場と決済を自動化し、クロスボーダー決済を改善する可能性のあるAMMの利用を調査する「Project Mariana」
Institutional DeFiの探求にむけた「Project Guardian」を紹介するOliverWymanのレポート
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●2008年10月31日にBitcoinホワイトペーパーが発表されてから明日で14年に
1.1.2. L2:Lightning Network
●Lightning Networkの基本 (6)
https://medium.com/nayuta-inc/lightning-network%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC-6-938025d60a2b
●Lightning Networkのオーバービュー概説記事
https://cryptopen.medium.com/a-full-overview-of-the-lightning-network-cb069a36b204
●Synonym・Tether・Holepunch、ブロックチェーンなしで誰でも中央集権的なクレジットトークンを発行できる新しいP2Pオープンプロトコル「Pear Credit」を発表。
HypercoreのP2P DHT機能とLightningチャネルの即時トランザクションを組み合わせることによって、「Lightning for data」を実現する。
これによって、ブロックチェーン上のトークンを事実上廃止できるとしている。
●発行者がピアツーピアのクレジット「トークン」を作成することができるピアツーピアのクレジットシステム「Pear Credit」の発表記事。
ギフトカード、リワードポイント、Stablecoinなどあらゆる形態のクレジットを発行したい企業にとって有効なツールとなるとのこと。
https://tether.to/en/tether-holepunch-and-synonym-launch-pear-credit-a-p2p-credit-system/
1.2. Ethereum
●VitalikがEthereum ロードマップのアップデート案を発表している
●ウォレットやweb3・NFT・L2など8分野に関する学習コンテンツ&クイズ
1.3. 他チェーン・要素技術
●ドコモとアスターネットワークがWeb3の普及に向け協力|株式会社NTTドコモ/Stake Technologies Pte. Ltd.
https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2022/10/31_00.html
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●南アフリカのPick n Pay、BlueWalletやMuunなどLightning対応のアプリを使ってBitcoinで食料品の代金支払いが可能に。39店舗が決済方法をテスト中
2.1.2. 投資
●Grayscale Investments、米国人が経済と暗号通貨をどう見ているかに関する調査結果を発表。
調査対象となった米国人の半数以上(53%)が、「暗号通貨は金融の未来」であることに同意し、44%の米国人が、「将来的に投資ポートフォリオの一部として暗号通貨を持つ」としている。
●Coinbaseが発表した、2022 3QのShareholder Letter。
3Qの受取利息は$101.8mと、前Q比213%増となった。
この理由として、第一にはUSDCのエコシステムへの参画を、二点目として顧客のフィアット残高から得られる利息が前期と比べ高い利息収入を生み出していることを挙げている。
https://s27.q4cdn.com/397450999/files/doc_financials/2022/q3/Q32022-Shareholder-Letter.pdf
●Apollo Global Management Inc、Anchorage Digitalとの提携を通じて、顧客に代わって暗号通貨を保有するサービスを開始
https://www.reuters.com/technology/apollo-holds-crypto-clients-it-expands-digital-assets-2022-10-31/
2.1.3. マイニング
●カナダ・ケベック州の電力会社Hydro-Québec、電力需要の伸びが加速する中、余裕を持たせるために、エネルギーを大量に消費する暗号通貨分野への供給を停止すると発表。
計画されている270メガワットの割り当てを中止し、他の場所に再配分する旨、正式に要請しているとのこと。
2.1.4. 社会生活
●エルサルバドルのBitcoin「革命」は惨憺たる結果に終わっている、とするBloomberg記事
https://www.bloomberg.com/news/features/2022-11-04/el-salvador-s-bitcoin-revolution-is-failing-badly
2.2. NFT
2.2.1. トラディショナルプレイヤー
●Instagram、クリエイターが独自のデジタルコレクティブル(NFT)を作成し、Instagram内外でファンやコレクターに販売可能に
https://www.facebook.com/creators/2022-launching-new-creator-tools
2.2.2. NFTエコシステム
●BCGに関するKearneyのレポート「“Play to Earn”という新しい価値の登場」
https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/play-to-earn
2.3. DeFi
●Circle、BlackRockとの提携を通じて、BlackRock Advisorsが運用する政府系MMFであり、USDCの準備金の一部を管理する Circle Reserve Fund への投資を開始したことを発表。
https://www.circle.com/blog/deepening-our-partnership-with-blackrock
2.4. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.4.1. 米国
●BNY Mellon、機関投資家顧客調査のデジタルアセットへの移行が加速化しているとするレポートを発表
回答者70%が「カストディや執行などのサービスが信頼できる機関から提供されれば、デジタル資産の運用を増やす」と回答。
また、91%の機関投資家がトークン化商品への投資に関心を持っているとのこと。
●Fidelity、暗号資産取引アプリ「Fidelity Crypto」のアーリーアクセスを提供開始。
個人投資家が手数料を支払うことなく携帯電話からBitcoinやEtherを取引できるようにするもの。
●Bakkt、デジタル資産プラットフォームとして、Apex Fintech SolutionsからApex Cryptoを買収
https://www.businesswire.com/news/home/20221103005623/en/Bakkt-to-Acquire-Apex-Crypto
●Goldman Sachs とMSCI およびCoin Metrics、デジタルアセットの分類「Datonomy」を発表。コインとトークンをその使用方法に基づいて分類するもの。
デジタルアセットの分類フレームワーク「Datonomy」のWebサイトはこちら。
市場参加者がデジタルアセットのエコシステムを閲覧・分析するための一貫した標準的な方法を提供し、市場がどのように動いているかの透明性を高めることを目的として設計されたもの。
MSCI Inc.が発表した、デジタルアセットエコシステムにおけるリスクとリターンの機会を評価する方法を提供するデジタルアセットインデックスでは、「datonomy」が使用される予定。
2.4.2. 欧州
●Santander UK、顧客がモバイルバンキングおよびオンラインバンキングを使って暗号通貨取引所への支払いを確認した場合に、送信できる金額を制限することを発表。
1回の取引につき£1,000 ($1,120)の限度額を設ける。また、30日間の合計限度額は£3,000に制限される。
英国の顧客が暗号通貨詐欺の被害者となるケースが大幅に増加しており、当局FCAが暗号資産への投資のリスクについて消費者に警告していることを理由としている。
https://www.santander.co.uk/personal/support/fraud-and-security/cryptocurrency
2.4.3. アジア太平洋ほか
●フィリピンUnionBank、METACO Harmonizeのデジタルアセット・カストディ・オーケストレーション・プラットフォーム上で暗号通貨サービスを開始
https://www.metaco.com/press_releases/unionbank-live-metaco-harmonize-launch-crypto-services/
2.5. 中銀デジタル通貨
2.5.1. グローバル
●外国為替市場と決済を自動化し、クロスボーダー決済を改善する可能性のあるAMMの利用を調査する「Project Mariana」
BIS Innovation Hub Centre、Bank of France、シンガポールMAS、スイス国立銀行による取り組み。
https://www.bis.org/about/bisih/topics/cbdc/mariana.htm
2.5.2. 米国
●米NY準備連銀、クロスボーダーホールセール決済におけるFXスポット取引のシミュレーションをケースとしたホールセールCBDCプロジェクト「Project Cedar」のフェーズ1レポートを発表
https://www.newyorkfed.org/aboutthefed/nyic/project-cedar
2.5.3. アジア太平洋ほか
●シンガポールDBS銀、プログラム可能なシンガポールドルを使って発行されたバウチャーを用いたパイロットを開始。
スマート・コントラクト機能によって、キャッシュフローの増加と管理上のバックエンド業務の時間短縮を目指す。
https://www.theblock.co/post/181305/singapore-piloting-tokenized-fiat-smart-contract-capabilities
●インド中銀は、政府証券の流通市場取引の決済を対象とした、デジタルルピーの試験運用開始を発表。
リテール部門における試験運用も、顧客と加盟店からなるクローズド・ユーザー・グループで、1ヶ月以内に開始予定
https://rbi.org.in/Scripts/BS_PressReleaseDisplay.aspx?prid=54616
2.7. デジタル証券
2.7.1. アジア太平洋ほか
●シンガポールMAS、ホールセール調達市場におけるDeFiアプリケーションの可能性を探る「Project Guardian」において、初めてのライブ取引を完了。
DBS銀とJP Morgan、およびSBIデジタルアセットホールディングスが、トークン化されたシンガポール国債・日本国債・日本円・シンガポールドルからなる流動性プールを対象に外国為替および国債取引を実施したもの。
トークン化された日本円とシンガポールドルの預金を含むクロスカレンシー取引をライブで行なった他、トークン化された国債を売買するシミュレーションを実施。
Project Guardianを踏まえ、シンガポールMASはさらなる業界パイロットを立ち上げへ。
Standard Chartered銀行にて、貿易金融アセットトークンの発行を検討
HSBCとUOBにて、ウェルスマネジメント商品のネイティブデジタル発行により、効率性と投資家アクセス性を高める検討
●Institutional DeFiの探求にむけてProject Guardianを紹介するOliverWymanのレポート
DeFiが主流になるためには、金融業界で何十年もかけて開発されてきたものと同じか、それ以上のレベルのセキュリティ基準や保護措置を取り入れる必要がある。
DeFiプロトコルのパワーと効率性を、規制当局が求め、顧客が期待するレベルの保護と制御と組み合わせたシステムである「Institutional DeFi」を提唱している。
これには、金融機関がAMLやKYC規制を遵守するためのIDソリューション、ハッキング事件の脅威を最小限に抑える強力なサイバーセキュリティ、万が一の場合に投資家に補償を行うための償還メカニズムが含まれる。
世界の1兆ドル規模の市場を効率化するためにInstitutional DeFiを利用することによるコスト削減と新しいビジネスチャンスは、発行者や投資家だけでなく、金融機関にとっても重要なものになる可能性
パブリックチェーン上でDeFiプロトコルを使ってトークンをどのように取引できるかについて、シンガポールMASのProject Guardianで実証されている。
https://www.oliverwymanforum.com/future-of-money/2022/Nov/institutional-defi.html
2.7.2. 日本
●野村のデジタルアセット子会社であるLaser Digital、Near上に構築されたDeFiインフラプロトコル「Orderly Network」のトークンラウンドに出資。
Laser Digitalは、年間約20のクリプトスタートアップに投資していくとのこと
https://www.theblock.co/post/181701/nomura-laser-digital-invests-orderly-network-token-round
●丸紅と常陽銀行およびオリックス銀行、デジタル証券準備株式会社への出資を発表
https://www.marubeni.com/jp/news/2022/release/00081.html
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米国財務省によるデジタルアセットの国家安全保障への影響に関するパブリックコメントを受けて(意見募集のRFCはこちら)、BPI(Bitcoin Policy Institute)が発表したレポート「国家安全保障のための戦略的資産としてのBitcoin」。
個人に力を与えるオープンなデジタルアセットは、自由の大義を推進するほか、権威主義の敵対者の目的を阻止し、さらに、国家安全保障の中核的な利益を推進することに役立つ。
Bitcoinのようなピアツーピア・システムは、米国が築いた自律性、自発的な協力、自由主義的価値の本質を表している。
政治と経済のデジタル化が進む中、米国が勝つためには、敵の閉じたシステムを無力化する、より強力なテクノロジーを推進するという伝統を継続しなければならない。
Bitcoinの世界的な普及は、抑圧的な国家に対して個人を力づけるものであり、疎外された人々が自己決定するためのツールとなる。
米国はこれらの技術が持つ長期的な可能性を戦略的に捉え、我が国と世界におけるこれらの技術の繁栄を促進するよう努力すべきである、と結んでいる。
https://www.btcpolicy.org/articles/bitcoin-as-a-strategic-asset-for-national-security
●米Blockchain Association、米財務省のデジタルアセットの不正資金リスクに関するパブコメへの回答を発表
デジタルアセットにおける犯罪活動のレベルは、ブロックチェーンの持つ透明性と、Chainalysisなどと法執行機関のパートナーシップを通じた押収成功などに見られるように、伝統的な金融と比べて低い。
暗号資産のAML/CFTが個人のプライバシー利益に合致し、米国の国家安全保障を守るために有効であることを確認するため上では、民間部門と公的部門の連携が不可欠。
米国が暗号技術革新のグローバルリーダーであり続けるために、あらゆる機関とさらなる協力関係を築くべき。
3.2. 欧州
●スイス金融市場監督局(FINMA)、AML法令を改正
仮想通貨を現金またはその他の匿名支払手段と交換する取引において、30日以内に(1日ごとではなく)リンクした取引について1000スイスフランの閾値を超えないようにする技術的措置が必要とするもの。
https://www.finma.ch/en/news/2022/11/20221102-mm-gwv-finma/
3.3. アジア太平洋ほか
●香港、仮想資産の発展に関する政府方針声明を発表
個人投資家が仮想資産に適切にアクセスできるようにする方法について公開協議を行う予定であり、仮想資産ETFの可能性に門戸を開いている。
仮想資産がもたらす技術的利益と金融市場でのさらなる応用を検証すべく、NFTの発行、グリーンボンドのトークン化、e-HKDといったパイロット・プロジェクトを検討。
https://www.info.gov.hk/gia/general/202210/31/P2022103000454.htm
3.4. 日本
●デジタル庁「Web3.0研究会」、「Web3.0研究会DAO」立上げへ
「構成員がDAOのユーザー体験を通じて課題や可能性を認識し、研究会の議論をより深度あるものとすること」を趣旨し、「構成員および事務局の自発的意思に基づき設立される任意団体」という法的位置付けとするもの。
行政がDAOに関わる際のロールモデルや、DAOの理解、ユースケースの公開などのアウトプットを想定したもの。
DAOとして、トークンの配布、投票などの機能。
参加メンバーは、Web3.0研究会の構成員および事務局(デジタル庁)。また、構成員が参加を許可したメンバーも対象範囲とするとのこと。
デジタル庁がDAOの作成、運営、ガス代の取りまとめ等を行なった上で、構成員がウォレットの開設、DAOへの参画・運営、議論への参加、ガス代の分担などを行う。
https://www.digital.go.jp/councils/43542a45-1ee6-4309-95f0-0893eb52d501/
●デジタル庁|【第2回 Web3.0 研究会】議事要旨
●税に対する公平感への悪影響が危惧される調査事例|国税庁
事例1: 調査をするための接触を一切拒否された事例:国内海外にわたり暗号資産の取引を行っていた納税者について、無申告が疑われたため調査を行おうとし、電話・書面で1年以上にわたり接触を試みるも無視された
事例5: 高額な所得を得ていながら無申告のままとしていた事例(暗号資産の売買等の取引において高額無申告)
https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4noukan9kai3.pdf
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