Bitcoin・クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー・②ビジネス・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
将来のBitcoinトランザクションに条件を強制する仕組みである「Covenants」
Lightningをよりプライベートなものにする2つのアプローチ
EthereumメインネットのバージョンでShanghaiアップグレードをテストするシャドーフォークの成功を発表
ビットコインと暗号通貨を安全に自己管理する方法
Strike、決済大手のFiservと提携し、CloverCommerceのPOS端末で公開パイロットを開始
アフリカ・中南米・東南アジアのBitcoinコミュニティリスト
セキュリティ専門家、LastPassユーザーに対し暗号資産を移動するよう警告
国際決済銀行BIS、DeFiのテクノロジーに関するレポートを発表
欧州議会の経済通貨委員会、暗号資産を保有しようとする銀行に対して厳しい制限を課す旨を議決
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●将来のBitcoinトランザクションに条件を強制する仕組みである「Covenants」について。
現行のBitcoin scriptは、トランザクションinput(使用される資金)に対して条件を定義できる一方、トランザクションoutput(使用された資金が預けられる場所)の属性を制限する方法は無い
https://blog.keys.casa/why-bitcoin-needs-covenants/
●Bitcoinマイニングが環境やエネルギーにもたらす好影響についてのまとめスレ
●ゼロ知識証明のBitcoin上での推進。STARKsをTaroなどのBitcoin開発エコシステムに導入することを目指すと
●Bitcoin関連Podcast・YouTubeチャンネルリスト
https://www.lopp.net/bitcoin-information/podcasts.html
●Bitcoin Optech Newsletter #235(日本語訳)
https://bitcoinops.org/ja/newsletters/2023/01/25/
●KZG commitmentをRubyで実装してみた - Develop with pleasure!
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2023/01/25/215016
●ウォレットからラベルをエクスポート/インポートするフォーマットを定義したBIP-329 - Develop with pleasure!
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2023/01/22/170025
●ビットコインデベロッパー動向/マイニングで国立公園の自然保護 - by Kate
●3年後により重要になるのはビットコインかイーサリアムか | ビットコイナー反省会の動画書き起こし・要約
https://burry.co.jp/articles/ethereum-bitcoin-1/
1.1.2. L2:Lightning Network
●Lightningをよりプライベートなものにする2つのアプローチについて
1) オンチェーンとLightningの間のリンクを断つ。
オンチェーンUTXOとLightningの間のリンクを断つ上では、チャネルを開く前にUTXOをcoinjoinすることがシンプルだが、Splicing(オンチェーンでチャネルを閉じることなく更新できる、開発中の新機能)を使うことによって、チャネルのオンチェーン履歴をさらに難解にできる。
Splicingに加えて、Taprootもプライバシー向上に寄与する。
現在のLightningチャネルのoutputスクリプトはP2WSH(Pay to Witness Script Hash)であるのに対し、通常のBitcoinTxのoutputはP2WPHK(Pay to Witness Public Key Hash)であるため、LNチャネルと通常のBitcoinの支出を区別(およびリンク)できてしまう。
Taprootでは、双方のoutputがオンチェーンで同じに見えるようにできる(P2TR)ため、LNチャネルを開く上で用いるトランザクションを難読化するのに役立つ利点がある。
2) ルーティングデータにノイズを加え、タイミング解析を中断させる。
タイミング分析(ルーティング分析)の問題を軽減する上では、「Multipath Payments」「Timing delays」および「Blinded Paths」といった方法がある。
Multipath Paymentsは、1つのLightningペイメントを小さく分割した上で、それぞれを独自のルートで送る方法。支払いを分割することによって、攻撃者が特定の支払いに関する情報を得ることを難しくできる。
Timing delaysは、ノードがHTLCを受信してからルートに沿って転送するまでの間に遅延を加えることによって、敵対者がタイミング分析を通じて支払いを関連付けることを困難にするもの。
Blinded Pathsは、ユーザーが実際にどこに資金が送られるかを知ることなく、ネットワーク上で資金を送ることができるようにするもの。送信者は、トランザクションが宛先に到着したかどうかだけが分かり、宛先や支払が到達するまでに辿った経路を知ることはない。現行の仕様BOLT 11で実装できる。
●Taroについてのレポート記事
●スイスFinTech企業のMt Pelerin社、独自のオールインワンソリューションでLightningのエコシステムをサポート
1.2. Ethereum
●メインネットのバージョンでShanghaiアップグレードをテストするシャドーフォークの成功を発表
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●仮想通貨業界レポート(日本語版)|CoinGecko
https://assets.coingecko.com/reports/2022/CoinGecko-2022-Annual-Crypto-Industry-Report-JP.pdf
1.3.2. 要素技術
●米FBI、HarmonyのHorizon Bridgeの盗難にLazarus Group(APT38)が関与していることを確認できたと発表。
今年1/13に、RAILGUNを使用して、盗まれた$60m相当以上のETHをロンダリングしたとしている。
●Bitcoin利用におけるプライバシー強化について、残高や取引履歴が公開されることにつながるとして、静的なBitcoinアドレスをコピー&ペーストして再利用しないこと等をあげている
●ビットコインと暗号通貨を安全に自己管理する方法について。
必要以上に取引所やカストディアル・プラットフォームに残してはいけない。
取引が必要な場合には、取引する金額だけをデポジットした上で、取引完了後に自分のウォレットに引き出すこと。
避けるべき3つのポイント
秘密鍵やシードフレーズを紛失すること。
秘密鍵やシードフレーズを他人に知られること。
インターネットに接続されたウォレット・デバイスや、盗まれたり押収されたりする可能性のある物理的な場所に、秘密鍵やシードフレーズを置くこと。
シンプルな対策は、メタルハードウェアウォレット(金属製のデバイスにシードフレーズを刻印するか、取り外し可能な金属製のタイルやリングを使って文字で書き出すもの)と電子ハードウェアウォレットデバイスを組み合わせた「2デバイスシステム」。
https://blog.bitfinex.com/education/how-to-safely-self-custody-your-bitcoin-crypto/
●Chainalysis、ランサムウェア被害者が攻撃者への支払を拒否する傾向が強まっているとするレポートを発表。
要因として、「OFAC勧告を受けて身代金支払の法的リスクが高くなったこと」「保険会社がサイバーセキュリティ対策の引受基準を厳格化していること」を挙げている。
https://blog.chainalysis.com/reports/crypto-ransomware-revenue-down-as-victims-refuse-to-pay/
●セキュリティ専門家、LastPassユーザーに対し暗号資産を移動するよう警告
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230121-2569264/
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●Strike、決済大手のFiservと提携し、CloverCommerceのPOS端末で公開パイロットを開始
Lightningを統合し、CashAppからTor越しのノードに接続。
90日間のパイロット期間を通じて、他のネットワークと比較した決済スピードとコストを測定した上で、Lightning利用可能としたマーチャントにもたらされる新しいビジネスをトラッキングしていく。
パイロット運用後に、Clover App Store上でローンチし、Cloverに直接統合することを検討。これにより、Lightningは、VISAやMasterCardなどのカードネットワークと並んで、デフォルトですべてのClover加盟店に受け入れられる決済ネットワークとなる。
2.1.2. 投資
●Tesla、$184m相当のデジタルアセット保有。第4四半期を通じて、デジタル資産の売却は行われず
https://news.bitcoin.com/teslas-q4-balance-sheet-shows-bitcoin-holdings-worth-184-million/
●FTXの債権者リスト
●BinanceのSWIFTバンキングパートナーであるSignature Bank、10万ドル以下の取引をサポートしないことに
2.1.3. マイニング
●Blockstream、マイニング事業拡大にむけて$125Mを調達。Kingsway Capitalがconvertible noteをリードし、Fulgur Venturesなどが参加したもの
https://www.prweb.com/releases/2023/1/prweb19127332.htm
2.1.4. 社会生活
●グアテマラのビットコイン・レイクに行ってみた|体験記寄稿1
https://coinpost.jp/?p=427125
●Bitcoin Lakeについてまとめたホワイトペーパー。El ZonteのBitcoin Beachをベースに
●Lightning Labのニュースレターに掲載された、アフリカ・中南米・東南アジアのBitcoinコミュニティリスト
アフリカ・中南米のBitcoinコミュニティ
Bitcoin Beach・Bitcoin Lake以外の中南米Bitcoinコミュニティ
東南アジアのBitcoinコミュニティ
●Chainalysis 2022年度 Geography of Cryptocurrency Report(日本語版)
世界の各エリアにおける暗号通貨のアドプション状況についてのレポート。日本におけるDeFi利用などに言及。
https://go.chainalysis.com/2022-geos-report-japanese-sign-up.html
2.1.5. RegTech
●国際決済銀行BIS、DeFiのテクノロジーに関するレポートを発表。
決済、アプリケーション、インターフェースの3層から成る「DeFiスタックリファレンスモデル」を用いて、技術的プリミティブと金融機能のスタック層コンポーネントを整理している
https://www.bis.org/publ/work1066.htm
2.2. DeFi
●1月のStablecoinの時価総額は10カ月連続で減少。アルゴリズム型Stablecoinの市場シェアは現在1.71%(2022年4月の過去最高値12.4%から低下)
https://www.cryptocompare.com/media/43977177/stablecoins_jan_vf-2.pdf
2.3. 中銀デジタル通貨
2.3.1. 欧州
●欧州ECB理事、デジタルユーロがプログラマブル・マネーにならない旨の発言。
ユーザーは条件付きの支払いが可能ではあるものの、それはユーザーのコントロールの範囲内であり、CBDCには使用方法に関する制限が含まれない、という見方。
https://www.ledgerinsights.com/ecb-digital-euro-cbdc-not-programmable-money/
2.3.2. 中国
●中国Blockchain-based Service Network (BSN)の技術アーキテクトである香港Red Date Technology社、StablecoinとCBDCの相互運用性にむけたプロジェクト「Universal Digital Payments Network (UDPN)」を発表
2.4. デジタル証券
●デリバティブ業界団体ISDA、デジタルアセットのデリバティブに関する定義を示すペーパーを発表。併せて破綻時のイベントに関するホワイトペーパーも示している
https://www.ledgerinsights.com/isda-digital-asset-standards-derivatives/
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米SEC Hester M. Peirceコミッショナーのスピーチ。「2022年に表面化した問題からの教訓」と「規制フレームワークを開発する際の指針」について述べている
1) 2022年に表面化した問題からの教訓
①問題を解決するために規制当局を待つべきでない。良い行動を促すために自ら行動。規制による解決策は、最後の手段であって最初の手段ではない。規制当局が強制力を以って解決策を押し付けるよりも、自発的に協力して物事を解決する方が遥かに優れている。民間で自主的に設計・実施されるソリューションは、より効果的なだけでなく、技術およびそれによって達成することを理解しているため、よりカスタマイズが可能。
②暗号資産の核心は、「知らない人といかに安全にやりとりするか」という信頼の問題を解決することにある。従来のように央集権的な仲介者や政府に期待するのでなく、暗号技術・ブロックチェーン・ゼロ知識証明などの技術が、新しい解決策を提供できる。
③暗号資産は、一枚岩であるかのように語られるべきではなく、それぞれの長所に基づいて評価されるべき。
④プロトコルの設計や中央集権的なインフラ提供者の問題は、広範囲かつ悲惨な結果をもたらす可能性があるため、プロトコルをテストし、インフラに組み込まれるインセンティブを慎重に分析することが重要。
⑤暗号資産は中央集権的な仲介者への依存を減らすことができる反面、企業が暗号に積極的に関与している限りにおいて、他の企業と取引するときと同様の予防措置を講じるべき。顧客の信頼を得るために必要な措置としては、準備金の証明・資産と負債の監査・内部統制監査などの仕組みが重要。
⑥伝統的金融の教訓の多くが、暗号資産にも適用できる。例えば、高いリターンには高いリスクが伴う/カウンターパーティとそのエクスポージャーの量を賢明に選択することが重要/担保が重要/レバレッジは利益を拡大するだけでなく損失を拡大する/利益相反に気を付けること、など。
2) 規制フレームワークを開発する際の指針
ブロックチェーン間の違い、レイヤー1ブロックチェーンとその上に構築されたチェーンやアプリケーションの違い、そして暗号資産間の違いを認識する
どの分野を規制するか、いつどのように規制するかを慎重に決定する
政府の規制は政府の承認の印と同じではないことを明確にする(規制されたとしても、自身でデューデリする必要がある)
伝統的な事業体を暗号資産から遠ざけることは、現実的でもなければ投資家保護にもならない
暗号資産の核である分散化は、金融システムのレジリエンスを支える上で有効なため、分散化を維持することも重要
https://www.sec.gov/about/commissioners/hester-m-peirce
●ニューヨーク金融サービス局(NYDFS)、倒産などの場合の顧客保護を強化すべく、顧客資金を別口座で管理することを義務付けるなどとしたガイドラインを発表
3.2. 欧州
●欧州議会の経済通貨委員会、暗号資産を保有しようとする銀行に対して厳しい制限を課す旨を議決
欧州議会議員(MEP)は、銀行が暗号資産および暗号資産サービスに対するエクスポージャーを開示し、暗号資産に関連するリスク管理方針を具体的に説明することを求めている。
また、欧州委員会は、暗号資産へのエクスポージャーに対する専用のプルデンシャル処理に関する立法案を2023年6月までに提出するよう要請されている。
●スイス当局FINMA、SIX Digital Exchange(SDX)によるトークン化されたデジタルユーロを使用した取引・決済を含むユーロ建て債券の発行を認可
https://www.ledgerinsights.com/sdx-exchange-euro-bonds-digital-euro/
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