クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
Maker DAOの「機会の窓」についてのコラム記事
米SECのGary Gensler委員長のスピーチ
米ホワイトハウス「米国における暗号資産の気候およびエネルギーへの影響」ペーパーを発表
arcane researchによる「Bitcoinマイニングはエネルギー産業をどう変えるか」ペーパー
9月13日頃にアクティベートされると予想されているMerge
カスタマイズ可能な金融商品を定義・実装することを目的とした新しいトークン形式「Semi-fungible Token」の提案(EIP-3525)
Curve独自のStablecoin「crvUSD」について、Github上のインターフェースコードが公開
シンガポールDBS銀行、デジタルアセット取引所サービスをアジア全域の30万人の富裕層顧客に拡大へ
チャネルを作るごとに新しいLightningノードを作るLightningウォレット「Mutiny」
Web5の重要なコンポーネントである Self Sovereign Identity のビジョンについて、tbdの記事
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●Taprootについての解説スライド(日本語)
https://docs.google.com/presentation/d/1x9PzjrD87B4-7TZ7LewUEUAWwHjd1DTEfLHOIF3bw9Q/edit#slide=id.p
●【動画で学ぶブロックチェーン】BLS署名 - 安土 茂亨氏 - GBEC - Blockchain を推進するエンジニアリングコミュニティ -
https://goblockchain.network/2022/09/bls/
●Baltic Honeybadger 2022(day 2 )のライブストリーム動画
●Baltic Honeybadger(day2)アジェンダ
https://baltichoneybadger.com/agenda
1.1.2. L2:Lightning Network
●チャネルを作るごとに新しいLightningノードを作るLightningウォレット「Mutiny」
https://www.thrillerbitcoin.com/mutiny-launches/
●satsを蓄積するのに役立つアプリのリスト「Stack Sats」
https://www.stacksats.how/
●「Buy BTC」から「Stack Sats」の時代がくる?LNによる新たな収益モデル
●Diamond Handsレポート「Understanding Lightning」に基づく記事第3弾
https://bitcoinmagazine.com/technical/how-lightning-could-enable-decentralized
1.2. Ethereum
●9月13日頃にアクティベートされると予想されているMerge。
MergeがEthereum最大のアップグレードとされる理由は、PoSへの移行に伴うエネルギー消費や、ETHの新規発行量が年率約5%から0.5%を下回ることによる影響、ハードフォークによるアップグレードである点にある。
Mergeをリアルタイムを追跡できる方法の他、チェーンスプリットの可能性、フォークアセット「ETHW」などのトピックを紹介している。
https://www.galaxy.com/research/insights/how-to-watch-the-merge-ethereums-biggest-upgrade-ever/
●Mergeの舞台となる最後の大規模なネットワーク・アップグレード「Bellatrix」が、今週アクティベートされた
●カスタマイズ可能な金融商品を定義・実装することを目的とした、IDとValueのプロパティを持つ新しいトークン形式である「Semi-fungible Token」の提案(EIP-3525)
https://ethereum-magicians.org/t/eip-3525-the-semi-fungible-token/9770
●ERC-3525とERC-1155の違いについて。
ERC-1155とERC-3525は異なるシナリオを想定して設計されているものの、実用上は競合する部分があるとのこと。
バランスとしては、ERC-1155の方がシンプルで、ERC-3525の方が柔軟性があるとしている。
多くの場合、柔軟性と拡張性に富んだERC-3525を選ぶとよく、場合によっては、ERC-1155の方がシンプルな選択肢になることもあるとのこと。
1.3. 他チェーン・要素技術
●Web5の重要なコンポーネントである Self Sovereign Identity のビジョンについて、tbdの記事
Web5むけに使用される標準のリスト(Web5のSSIスタックの基礎を構成する上で最重要な15の仕様のみを掲載したもの)
クレデンシャルに関するワーキンググループを立ち上げ、これはKnow Your Customer (KYC)/Know Your Business KYB)、IDV、リスクスコアリングなど、分散型取引で使われるあらゆるクレデンシャルを対象としている。
2023年1月1日までのゴールとして、SSI SDK および SSI Service の最初のベータリリースの発表などを掲げている。
SSI SDKは、DIDsおよびVCなどSSIに関連する一連の標準をカプセル化したもの。
SSI Serviceは、SSI SDKをラップしたJSON-APIウェブサービスであり、Web5上でユーザーを中心としたインタラクションを容易にするもの。
https://developer.tbd.website/blog/ssi-tbd-web5/
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●MicroStrategy、大企業がLightning Networkに参加するためのソリューションとして、①Lightningウォレット・②Lightningサーバ、③認証といったエンタープライズ向けアプリケーションを開発しているとのこと。
2.1.2. マイニング
●arcane researchによる「Bitcoinマイニングはエネルギー産業をどう変えるか」ペーパー
Bitcoinマイニングがエネルギーシステムに望ましい影響を与え、エネルギー生産の経済性を向上させることができる分野として、4つあげている。
電力グリッドの強化
Bitcoinのマイニングは、対応コストが低く、必要な粒度で即座に対応できること、そして常に電力需要があることから、デマンドレスポンスの最適な代替手段である(Figure2)。
テキサス州のERCOTシステムでは、Bitcoinマイナーがデマンドレスポンスを提供し、脆弱な風力発電と太陽光発電の電力グリッドを強化している。
再生可能エネルギーの経済性向上
Bitcoinマイニングは、場所を選ばない・中断可能・モジュール性という組み合わせから、再生可能エネルギーの最適な購入先となる。
マイニング業者は、風力や太陽光が余っている地域を探し出し、余剰エネルギーを消費するために必要な規模のデータセンターを建設することができる。
天然ガスのフレアリングの抑制
油田でのBitcoinマイニングは、過去数年間、米国・カナダを中心とした油田でのビットコインマイニングは大きな成長。
経済的なインセンティブだけでなく、最大の原動力は排出量を削減できること。
Bitcoinマイニングによるガスのフレアリングの軽減は、排出量削減のための最も費用対効果の高い方法(Figure4)。
1,000ドルの投資に対して、Bitcoinマイニングシステムは年間6.32トンのCO2換算の排出を削減するのに対し、風力は1.3トン、太陽光は0.98トン。
廃熱の再利用
Bitcoinマイニング収入で、暖房に使う電力コストを補助できる。
再エネでマシンを稼働させれば、CO2排出量を削減できる。
https://arcane.no/research/reports/how-bitcoin-mining-can-transform-the-energy-industry
2.1.3. 社会生活
●ロシア、クロスボーダー決済における暗号通貨の使用を合法的な支払い方法として有効にせずに続けることは「不可能」であることで、中銀と財務省が合意とのこと。タス通信伝
https://bitcoinmagazine.com/business/russia-to-legalize-use-of-crypto-in-international-trade
●エルサルバドル、ビットコイン普及遠く 法定通貨1年: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240W50U2A820C2000000/
2.2. NFT
●LG電子、Hedera上でNFTプラットフォーム「LG Art Lab」をローンチ。webOS 5.0以降を搭載したテレビで利用可能
https://www.theblock.co/post/167757/tv-maker-lg-electronics-launches-nft-platform-with-hedera/
●消費者庁|第45回インターネット消費者取引連絡会
資料1 NFTの動向整理
資料1(参考) NFTに関するアンケート
資料2 消費生活相談の動向について
資料3 NFTと法的課題
資料4コンテンツNFTの構造的な課題とそれに対する取組み、及びコンテンツ産業としてあるべきビジネスモデルの在り方
2.3. DeFi
2.3.1. Stablecoin
●Maker DAOの「機会の窓」についてのコラム記事。
米国によるクリプト取締りと市場下落をうけて、プロトコルは、目的を定義した上で、理想主義と現実の間のDeFiの闘争において味方を選ぶよう圧力をかけられている。
DeFi 1.0の斬新さは今や消え去っており、国際的な規制当局が力を発揮し始めたことため、現実世界に影響を与える「機会の窓」は徐々に閉じられつつある。
そのため、MakerのRune Christensen氏は、DAIが生き残った上で「公共の中立的金融事業」としての目的を果たすためには、ドルからのepegする必要があるとの見方を示している。
Rune Christensen氏の示す「Endgame Plan」は、現実世界アセット(Real World Assets:RWA)の統合に向けた動きを見せている。
一方で、DAIには「wrapped USDC」であるとして批判されており、政府がCoinbaseとUSDCを支配した場合、Makerの担保の大部分が凍結されるリスクも負うことになる。
Circleのように、Coinbaseは好きなように(或いは強制されたときに)資産を凍結することができてしまう。
https://rekt.news/window-of-opportunity/
●Curve独自のStablecoin「crvUSD」について、Github上のインターフェースコードが公開されている
2.3.2. 概論
●DeFi業界の近況レポート。後半はL1競争やスケーラビリティ・マルチチェーン、トークンノミクス、デリバティブ、規制などのトピック
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
●シンガポールDBS銀行、デジタルアセット取引所サービスをアジア全域の30万人の富裕層顧客に拡大へ
2.7. デジタル証券
●販売相次ぐデジタル証券 不動産や社債の少額購入に魅力: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26AEO0W2A820C2000000/
●不動産セキュリティ・トークンの公募及び発行に関する協業について|三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000056997.html
Section3: Regulation
3.1. 米国
●米SECのGary Gensler委員長のスピーチ。
クリプト市場は証券取引法と相容れないものはなく、投資家保護は、基礎となる技術に関係なく同じように関連性があるとして、クリプトトークンやクリプト仲介業者について説明している。
クリプトトークンについては、市場に存在する約1万個のトークンのうち、大半は証券であるとした上で、トークンの中には、証券の定義に当てはまらない「非証券クリプトトークン」は、市場価値の大部分を占めるものの、ごく少数のトークンである可能性が高いの見方。
Bitcoinについては、最初の暗号トークンとして、貴金属のように取引され、投機的で希少価値が高く且つデジタルなstore of valueとして「デジタルゴールド」と呼ばれることがあるとしている。
その上で、ポイントは、クリプト証券トークン、非証券クリプトトークン、または別の商品であるかを判断する際に、ラベルではなく、商品の事実と状況を見ることが重要であると強調。
また、仲介業者については、CFTCが非証券クリプトトークンや仲介業者を監督・規制する権限を強化する必要がある限り、クリプト証券トークンや仲介業者の規制をSECで維持しながら、目標達成にむけ議会と協力することを期待するとの見方。
最後に、この分野で起業しようとしている人たちに対して、伝統的な金融機関であれ、クリプトネイティブ企業であれ、最初からコンプライアンスについて当局と協力する方が、はるかにコストがかからないのでそうしてほしい、と結んでいる。
https://www.sec.gov/news/speech/gensler-sec-speaks-090822
●米ホワイトハウス「米国における暗号資産の気候およびエネルギーへの影響」ペーパーを発表
暗号資産技術の中には、資産の生成・所有・交換に相当量の電力を必要とするものがある。
暗号資産は、米国の炭素汚染ゼロを達成するための取り組みを阻害する可能性がある。
暗号資産による温室効果ガス排出などの環境負荷について
2019年9月から2021年8月まで、Bitcoinが使用する電力の平均30%は、水力発電、太陽光発電、風力発電、その他の再生可能資源から供給されていた。
この期間、中国の水力発電がBitcoin用の再生可能電力の大部分を供給していた為、2021年9月に中国が暗号資産の採掘を禁止した後、Bitcoinに使用される再生可能エネルギーは減少した。
その後、米国での暗号資産マイニング活動が増え、今では世界のBitcoinの活動の1/3以上を米国で占めている。
暗号資産マイニングは、メタンと再生可能エネルギーで駆動できる
現在、暗号資産企業は、メタンによる発電を利用する方法を模索しており、米国の気候目標達成に役立つ可能性が高い。
グリッド電力を使用する暗号資産マイニングで、温室効果ガス排出量をゼロにする方法として、次の2つを挙げている。
1)採掘のための新しいクリーンな電力源を建設または契約すること
2)既存の再生可能な電力を使用すること
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2022/09/09-2022-Crypto-Assets-and-Climate-Report.pdf
3.2. 日本
●急増するブロックチェーン応用ビジネス、証券規制はどこまで及ぶか
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02132/090200007/
●金融庁、「2022事務年度金融行政方針」で「Web3.0 等の推進に向けたデジタルマネーや暗号資産等に係る取組み」について言及
https://www.fsa.go.jp/news/r4/20220831/220831_main.pdf
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