クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
Bitcoin2022 ConferenceにおけるLightningの話題のおさらい
米イエレン財務長官のデジタル資産に関するスピーチ
北朝鮮ハッカー「Lazarus Group」に対するOFACのSDN指定の更新により、「Lazarus」がRonin Bridgeのハッキングに関与していることが明らかに
Ethereumのmergeは、早ければ6月に行われるとされていたが、2022年後半まで行われないとする見方
日銀、中央銀行デジタル通貨に関する実証実験 「概念実証フェーズ1」結果報告書
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●MuSig2プロトコルの標準を提案するBIP。
Taprootアクティベートによって、Schnorr署名で取引承認可能となり、Taproot出力で使用できる集合公開鍵を作成できるようになったことを受けて提案されたもの。
MuSig2は、複数の署名者が1つの集約公開鍵を作成し、集約鍵の下で有効な通常のSchnorr署名を協調して作成できるマルチシグ。
MuSig2のTaproot出力は、実際には複数の署名者によって制御されているにもかかわらず、通常の単一署名者のTaproot出力と見分けがつかない点が特徴。
https://github.com/jonasnick/bips/blob/musig2/bip-musig2.mediawiki
●Merkle Sum Sparse Merkle Tree - Develop with pleasure!
> Taprootを利用したアセットオーバーレイプロトコルTaro
> の構成要素の1つであるMerkle Sum Sparse Merkle Tree(MS-SMT)の仕様について
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2022/04/10/171025
●Ed25519で決定論的な鍵導出をサポートするBIP32-Ed25519 - Develop with pleasure!
https://techmedia-think.hatenablog.com/entry/2022/04/15/203000
●Bitcoin 2022のハイライトトピックス集
https://bitcoinmagazine.com/industry-events/bitcoin-2022
1.1.2. L2:Lightning Network
●Bitcoin2022 ConferenceにおけるLightningの話題のおさらい。
Krakenに続きRobinhoodがLightningとの統合を発表するなど、Lightningを採用する取引所が増えた一方、POSソフトウェアへのStrikeの統合は、「Lightningが何千もの新しいマーチャントを受け入れる準備ができているか」の議論の出発点になるとの見方。
信頼性の低さから、店と顧客の双方にとって悪いUXになることの懸念も。
Breezは「使いやすいLightningウォレットを作ることがいかに難しいか」を強調している他、「流動性の量や流動性管理ツールの点から流動性市場としてまだ初期段階にある」としている。
●Arcaneによる、Lightning Networkのエコシステムマップ
●Arcane ResearchのLigjtningレポートのポイント
Lightning決済件数はこの1年で約2倍に伸びたほか、決済額は400%以上増加するなど、アドプションが急速に進展。
決済におけるLightning使用量は前年比で410%増と、キャパシティ(218%)・ノード(127%)・チャネル(127%)といった他の指標よりも大幅に上昇。
Lightningでの取引(入金・出金)は、今年のLightning決済ボリュームの1/3を占めている。
1.2. Ethereum
●Ethereum、PoS移行にむけて、メインネットからテストネットにデータをコピーするシャドーフォークを3回実施。
シャドーフォークネットワークは、平均ブロック時間13.8秒で180万トランザクションを処理したとのこと。
https://explorer.mainnetshadowfork1.ethdevops.io/
●Ethereumのmergeは、早ければ6月に行われるとされていたが、2022年後半まで行われないとする見方
1.3. 他チェーン・要素技術
●CoinGeckoのQ1 2022四半期レポート
https://www.coingecko.com/buzz/q1-2022-cryptocurrency-report
●4月9日(土)のイベントの動画|CryptoAge Japan Meetup #1 | CryptoAge
【From Web1, Web2 to Web3】20220409 CryptoAge Japan Meetup #1 | CryptoAge
●Web3についての私の第一印象 - 石ころのニュースレター!
https://medium.com/@danfinlay/what-moxie-missed-on-web3-wallets-8dc572e7f39b
●Crypto Opsec
Chromeウェブストアなど公式ストアからダウンロードし正しい拡張機能をインストール。
暗号取引、DeFi、NFTなど複数のプロファイルを作成することによって、攻撃時の被害を制限。
Adblock Plusなどのアドブロッカーで詐欺広告を含む広告をブロック。
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●CBS NEWSの「60 Minutes」で特集されたBitcoin Beach。(ナレーションの書き起こし有り)
CBS NEWS「60 Minutes」での「Bitcoin Beach」紹介の抜粋①
CBS NEWS「60 Minutes」での「Bitcoin Beach」紹介の抜粋②
CBS NEWS「60 Minutes」での「Bitcoin Beach」紹介の抜粋③
https://www.cbsnews.com/news/bitcoin-beach-el-salvador-60-minutes-2022-04-10/
https://www.cbsnews.com/video/the-tech-behind-the-bitcoin-beach-wallet/#x
●CNBC、ポーランドに滞在するウクライナ人と、Lightning Networkを介した送金をテスト。
マイアミからポーランドに送金後、現地のBitcoin ATMからポーランド通貨で引き出すまでのプロセスは、3分もかからなかったとのこと。
https://www.cnbc.com/2022/04/13/watch-as-we-send-bitcoin-from-miami-to-a-ukrainian-in-poland-.html
●Wikimedia、暗号通貨による寄付の受け入れ停止について投票が行われ、232対94で停止賛成が多数
暗号通貨受入停止に賛成する意見
環境維持の問題
暗号通貨を受け入れることは暗号通貨を取り巻く問題を暗黙のうちに承認することになる
暗号通貨受入停止に反対する意見
エネルギー消費量の少ない暗号通貨の存在
暗号通貨は抑圧的な国の人々にとってより安全な寄付や金融活動の方法を提供
不換紙幣にも環境の持続可能性に関する問題が存在
https://meta.wikimedia.org/wiki/Requests_for_comment/Stop_accepting_cryptocurrency_donations
●Mozilla、暗号通貨寄付ポリシーを見直し、気候に関するコミットメントに基づいて、エネルギー消費の観点から、PoW暗号通貨を受け付けず、PoS暗号通貨のみを受け入れる旨を発表
https://foundation.mozilla.org/en/blog/reporting-back-on-mozillas-cryptocurrency-donation-policy/
2.1.2. 投資
●Kucoin、ナイジェリアの18歳から60歳までの人口の35%が、暗号通貨を所有または過去6カ月間に暗号通貨を取引とするレポートを発表。
この投資家の52%は、資産の半分以上を暗号通貨に割り当てている他、65%はP2P取引を通じ入金しているとのこと。
KuCoinのレポート「KuCoin's Into The Cryptoverse Report Reveals 35% of Nigerian Adults are Crypto Investors 」
KuCoin's_Into_The_Cryptoverse_Report_Reveals_35%_of_Nigerian_Adults.docx
●豪州の成年の5%に相当する100万人が暗号通貨を保有。保有者の2/3は男性。年代別では35歳未満が6割を占める
https://www.roymorgan.com/findings/8929-cryptocurrency-february-2022-202204120119
●Circle、 BlackRock・Fidelitなどから$400Mの資金調達を発表
https://www.circle.com/en/pressroom/circle-announces-400m-funding-round
●Binance、アブダビで仮想資産ブローカーディーラーとして営業する仮承認を取得。
子会社を通じて、中東・北アフリカの顧客にサービス提供可能に
2.1.3. マイニング
●Bitcoin 2022カンファレンスのマイニングステージにおけるトピック。
51%攻撃の脆弱性において、重要なのはマイニング機器の物理的な分布ではなく、ハッシュレートの所有権の観点からみるべき。
加えて、分散化は電源やASIC技術からもみるべき。
https://www.theblockcrypto.com/post/141407/four-key-takeaways-about-mining-from-bitcoin-2022
2.1.4. RegTech
●北朝鮮ハッカー「Lazarus Group」に対するOFACのSDN指定の更新により、「Lazarus」がRonin Bridgeのハッキングに関与していることが明らかになったとのこと。
FBIからも、Lazarus GroupによるRonin Bridgeハッキングへの関与を示す声明
2.2. NFT
●NFTプラットフォームのセキュリティ評価記事。
Ronin、Polygon、Immutable、Solana、Optimismなどについて、「コンセンサス・セキュリティ(ノード/検証者に対する攻撃)」「ブリッジ・セキュリティ(Ethereumとの間での資金移動)」の2点で評価。
https://immutablex.medium.com/a-guide-to-nft-platform-security-30d7129cedd3
●Animoca Brands、レースゲーム開発会社Eden Gamesを買収。同社の経験を生かし、P2Eゲームやブロックチェーンベースのレースゲームシリーズを構築予定
2.3. DeFi
2.3.1. DEX
●Uniswap、Uniswap Labs Venturesの設立を発表。
MakerDAO・Aave・Compound および ENSプロトコルのガバナンスシステムに参加予定。
投資先として、Tenderly・LayerZero・MakerDAO・Aave・Compound Protocol および PartyDAOを挙げている。
https://uniswap.org/blog/ventures
●Uniswapの2022年1Qレポート。2022年1QのUniswap取引量は、前四半期比で53.5%減になった模様
2.3.2. Stablecoin
●Tether(USDT)、Kusama上でローンチ。USDTをサポートする10番目のブロックチェーンに
2.3.3. 概論
●DappのQ1 2022概観レポート。
Yuga LabsのNFTは、EthereumのNFTコレクション上位100社のうち、時価総額の44%を占める。
NFT分野では、Ethereum以外での売却件数が増加。Avalancheの取引数は前四半期比582%増加、Solana・Polygonの販売数は前四半期比で34%増加。
DeFi分野では、Terraがstablecoinエコシステム および AnchorなどのDeFiプロトコルによって、2021年末からTVLが68%増加し、TVLベースでEthereumに次ぐ地位に(TVLの10%を占める)。
USTをBitcoinで担保するプロセスを開始し、Terraのトレジャリーウォレットは3月にSatoshiおよびMichael Saylorに次ぐ第三のBitcoin保有者になっている。
https://dappradar.com/blog/dapp-industry-report-q1-2022-overview
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
●韓国の新韓銀行、Korbitとの提携にて、現金から暗号通貨への取引を可能にする実名制の法人口座を開始。新韓が支援するカストディサービス「KDAC(韓国デジタルアセットカストディ)」を利用。
https://finance.yahoo.com/news/first-korean-bank-issues-crypto-032606409.html
2.6. 中銀デジタル通貨
2.6.1. 米国
●米DTCC、Digital Dollar Projectとの協働で、株式決済むけCBDCプロトタイプのトライアル実施へ。初のホールセールCBDC(中銀デジタルドル)のパイロットとなるもの
2.6.2. 日本
●第3回中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会 事務局説明資料
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220413a.pdf
●中央銀行デジタル通貨に関する実証実験 「概念実証フェーズ1」結果報告書|日本銀行決済機構局 2022 年4月
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220413b.pdf
●【挨拶】内田理事「CBDCを発行するとすれば」(第3回中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会) : 日本銀行
「CBDCがあるにせよ、ないにせよ、日本独自のシステム、ガラパゴスになることは避けましょう。いくら器用で工夫に満ちたものでも、世界の標準的なやり方とフィットしない仕組みは、デジタルの世界では決定的なディスアドバンテージになります。」
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko220413b.htm/
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●IMFの「Crypto, Corruption, and Capital Controls: Cross-Country Correlations」レポート
単純なクロスカントリー分析を通じて、暗号資産の利用と、汚職・資本規制・高インフレの歴史・その他の要因との相関関係を探った結果、暗号資産の利用は、汚職や資本規制の強化などと有意かつ正の相関があることが分かったとしている。
汚職が多い国や資本規制が多い国ほど暗号資産の普及率が高い傾向があり、暗号資産が汚職収益の送金や資本規制の回避に利用されている可能性が示唆される。
汚職の抑制と資本開放度を25%台から75%台にシフトすると、暗号資産の普及率はそれぞれ約2%と4%ポイント低下することが分かった。
以上を踏まえ、「この結果は、KYCアプローチなど、暗号資産を規制するケースを支持するものである」として締めくくっている。
3.2. 米国
●米イエレン財務長官のデジタル資産に関するスピーチ。
Bitcoinの二重支払い回避を行うトランザクション検証方法について言及した上で、デジタルアセットに関わるテクノロジーがもたらす機会と課題を乗り越えるための教訓を5点挙げている。
①デジタルアセットの推進者は「どこに住んでいても瞬時に取引ができ、コストが低い、より効率的な決済システム」を想定しているが、その期待に沿うものを判断するのは時期尚早であり、過去の「金融革新」は、しばしば勤労者世帯に恩恵をもたらさなかったと指摘。
②規制が技術革新に追いつかない場合には、サブプライムローンのときのように、弱い立場の人々が最大の被害を受けることが多いため、デジタルアセットの成長が同様の危険をもたらさないようにする必要がある。
③規制は、技術的中立性を保ち、提供されるサービスに関連するリスクに基づくべき。
④デジタルアセットに対するアプローチは、「通貨が現在の形になるまでには、何世紀にもわたるプロセスを要していること」と「今日、通貨主権と統一通貨は、経済成長と安定に利益をもたらしている」という点に基づいて導くべき。
⑤責任あるイノベーションを実現するために、協力し合う必要がある。
https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy0706
●米バージニア州、州政府認可の銀行が「適切なプロトコルを導入」し「リスクを慎重に検討」した上で、仮想通貨をカストディ可能とする法案を承認
3.3. 欧州
●スペイン中銀、暗号資産は多くの消費者にとって、支払いや交換の手段として適していないことを強調した上で、暗号通貨の購入を検知した場合に銀行が取ることのできる措置を発表。
アイデンティティ盗難やマネロンに関連すると疑われる場合に、投資プラットフォーム上で暗号通貨を取得する際に銀行からの送金をブロックできる旨、注意喚起している。
3.4. アジア太平洋ほか
3.5. 日本
●「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」(2022年3月)の公表について:金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r3/20220408/20220408.html
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