クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
EVMモデルからプロパティを継承し、zk-rollup上で任意のSolidityコードを実行するzkEVM
EthCCで発表された、Ethereumの「100k TPS」に向けた5つのフェーズ
【金融法】資金決済法、犯罪収益移転防止法等の改正(ステーブルコインに関する規制の導入)について
英国、金融サービス・市場法案において、stablecon および と所謂「デジタル決済アセット」を支払い形態として規制へ
Web3と国家戦略~基礎編・実践編~
Minecraft、NFTはガイドラインとMinecraftの精神に反する希少性と排除のモデルを作り出す可能性があるとの見方を発表
W3CのDecentralized Identifier Working Group、Decentralized identifiers (DIDs)を定義する「Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0」をW3C勧告として発表
ブロックチェーン技術の未解決問題と、DAOやWeb3.0で新たに生じる問題とは
Square Enix、Lightning Network 用いたゲーム向けペイメントシステムZebedeeに出資
BITCOIN MINING COUNCILが発表した、2022 2QのBitcoinマイニングレビューレポート
Lightningノードのトリプルハットモデルと、Validated Lightning Signerプロジェクト
Bitcoin決済とLightning Networkを利用したライドシェアリングソフトウェア「Bullrun」のデモビデオ
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L1
●BITCOIN MINING COUNCILが発表した、2022 2QのBitcoinマイニングレビューレポートより(1/4)
全世界の総エネルギー使用量(165,317 TWh)で多くを占めるのは住居などの建築物や車両・軍産複合体であり、Bitcoinマイニングのエネルギー使用量(253 TWh)の割合は、0.15%
炭素排出量でみると、世界全体の炭素排出量に占める、Bitcoinマイニングが占める割合は、0.086%
Bitcoinマイニングのハッシュレートは前年比137%増 に対して エネルギー使用量は前年比63%増であり、46%の効率化
Bitcoinは、持続可能なエネルギーミックスが59.5%(BITCOIN MINING COUNCILメンバーは66.8%)であり、各国のエネルギーミックス(EU43.5%, 米国31.4%、日本16.3%)をリード
https://www.blocktrainer.de/wp-content/uploads/2022.07.19-BMC-Presentation-Q2-22-Presentation.pdf
●DLCのポンチ絵
●7/21に開催される、Austin BitDevs「Socratic 30」のアジェンダ
https://austinbitdevs.com/2022-07-21-socratic-seminar-30
1.1.2. L2:Lightning Network
●Square Enix、Lightning Network 用いたゲーム向けペイメントシステムZebedeeに出資
●銀座でラズパイを組み立てる【オープンハウス編】 | bcats | Spotlight
https://spotlight.soy/detail?article_id=2hgcnv33i
●Bitcoin決済とLightning Networkを利用したライドシェアリングソフトウェア「Bullrun」のデモビデオ
https://github.com/arcadecity/bullrun
●Lightningノードのトリプルハットモデルと、Validated Lightning Signerプロジェクト
Lightningは、トランザクションを処理し、銀行口座を管理し、サーバを動かすという3つの職務を、すべてシステム管理者が行う必要がある。
Lightningが「本当の」「大量の」Bitcoinをネットワークで動かす上では、こうしたトリプルハットモデルはビジネスにとってリスクが高すぎ、システム管理者にとってもストレスが大きすぎるため、この役割の統合を解決しなければならない。
この職務の重複を解決するには、「ノード」を3つの異なるレイヤーを持つものと考え、署名のレイヤーはロジックと流動性から分離することが有効だとしている。
1. 流動性:他のノードへのチャネル=「支払い可能か?」
2. ロジック:ルーティング・ロジックと支払いハンドリング=「どのように支払うか?」
3. 署名:ポリシーと承認=「支払うべきか?」
システム管理者はノードのロジックと流動性のみを管理し、承認は財務部門が管理する別のデバイスに移す。この場合、クラウド上のノードがトランザクションに署名するための秘密鍵を見ることがないため、システム管理者には一般的なホスティングプロバイダを選択できる。
http://sphinx.chat/2022/06/27/a-lightning-nodes-problem-with-hats/
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●EthCCで発表された、Ethereumの「100k TPS」に向けた5つのフェーズ(Merge・Surge・Verge・Purge・Splurge)
①The Merge:PoSへの移行
②The Surge:shardingによるrollupスケーラビリティ向上
③The Verge:Verkle Treesによる最適化(ノードサイズ縮小により膨大なデータ保存なくネットワーク検証が可能に)
④The Purge:余分な履歴データの削除
⑤The Splurge:すべてがスムーズに動くようにするための小規模メンテナンス
1.2.2. L2
●OptimismやArbitrumといったOptimistic rollupsは、stateが正直であることを保証するためにfraud proofsを用いるのに対して、zk rollupsは、暗号学的なproofs of validityを用いており、より強力な保証が得られる反面、機能を少し変えるだけで回路を大幅に変更する必要がある。
このように、zk rollupsは技術的に難しく複雑なので、その上に構築できる開発者はほとんどいないとされてきた。
これに対して、zkEVMは、zk-rollup上で任意のSolidityコードを実行できることから、期待されているとのこと。
●zkEVMは、Ethereumに見られるようなEVMモデルからプロパティを継承し、zk-rollup上で任意のSolidityコードを実行する。これにより、Ethereum開発コミュニティは、大きな変更を加えること無しに、既存のDappsやインフラをその上にデプロイできるようになる。
zkEVMを評価する上での視点として、「EVMとの等価性」「EVM互換性」を挙げている
等価性:rollupがEVMであるため、Ethereum上の既存コントラクトをコード変更なしに移植可能
互換性:rollupがデフォルトでEVMでないため、コントラクト実行をサポートするコンパイラに依存
「EVMとの等価性」「EVM互換性」で見た、3つのzkEVMを相違点
Scroll ZkEVM:op-codeレベルで EVMと等価
Polygon zkEVM:op-codeを変更することでEVMと等価になる
zkSync EVM:カスタムコンパイラを用いてEVM互換性を実現
Scroll ZkEVM
Ethereum EVM の実装に最も近いものの1つ
初期リリースは Ethereumのプライベートフォークで実行される
オープンソースだが、現在は一部のオペコードのみサポート
ユーザーはすぐにデモアプリやブロックエクスプローラーを使える
Polygon zkEVM
PolygonHermezチームによって構築され、最速のZK技術であるplonky2を用いている。
パーミッションレス且つ完全なオープンソース
ETHをデフォルトのネイティブガスとして使う予定
開発者・コミュニティ向けテストネットがまもなくゴーライブ
zkSync EVM
Solidity向けカスタムコンパイラを持つVMを使用するため、EVM互換性あり
さらにVyperもサポート
メインネットが100日以内に稼動予定
コードリポジトリは現在非公開
zkEVMソリューション(Scroll、Polygon zkEVM、zkSync、StarkNet)の比較スライド
●zkEVMのrollupとなる「zkSync 2.0」、100日後にメインネットローンチとするロードマップが発表
https://matterlabs.medium.com/100-days-to-mainnet-6f230893bd73
●Polygon、Polygon zkEVMローンチを発表
https://decrypt.co/105520/polygon-launches-new-scaling-solution-further-cut-costs-ethereum
●Optimism・Arbitrum・zkSync・StarkNetといった「L2のビッグ4」に続く新たなプレイヤーとして、Fuel・Scroll・Aztec・Immutable X および Polygonを含めたマルチL2環境について。
ScrollはEVM-equivalentの点で、同様にzkEVMを開発するzkSyncやPolygonと差別化していると指摘。Ethereumメインネットに展開されたコントラクトを、コードベースに重大な変更を加えることなく移植できるため、アドプションにむけた変化を加速することに寄与するだろうとの見方。
●zkEVMがNFTにとって重要な理由として、zk rollupはoptimistic rollupと比べ「①経済的インセンティブではなく暗号技術に支えられているためよりセキュアであること」「②NFT引出しが迅速なこと」および「③劇的に安い取引コストを提供できること」といった理由を挙げている。
さらに、今年後半に行われる予定The Mergeアップデートに続くL1ロードマップとして、shardingを通じてrollupsに大規模なスケーラビリティの向上を導入する「The Surge」が控えていることから、zkEVMの将来展望は今後さらに明るくなることが予想される、としている。
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 要素技術
●ブロックチェーン技術の未解決問題と、DAOやWeb3.0で新たに生じる問題とは | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02132/071500001/
●W3CのDecentralized Identifier Working Group、Decentralized identifiers (DIDs)を定義する「Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0」をW3C勧告として発表
https://www.w3.org/blog/news/archives/9618
●W3C、中央集権的な管理を不要にする「Decentralized Identifiers (DIDs)」(分散型識別子)の仕様が勧告に到達 - Publickey
https://www.publickey1.jp/blog/22/w3ciddecentralized_identifiers_dids.html
●W3Cが分散IDの規格を標準化、認証サービスの選択が可能に | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13333/
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. 投資
●Coinbaseの前プロダクトマネージャーがインサイダー取引で逮捕
https://www.btctimes.com/news/former-coinbase-manager-arrested-for-insider-trading
2.1.2. 社会生活
●米カリフォルニア州、候補者が暗号通貨による選挙寄付を受け付け可能とするルールを承認
2.2. NFT
2.2.1. NFTエコシステム
●BitGo、機関投資家向けNFTカストディプラットフォームを立ち上げ
https://blockworks.co/bitgo-launches-first-nft-custody-platform-for-us-institutions/
●Minecraft、NFTはガイドラインとMinecraftの精神に反する希少性と排除のモデルを作り出す可能性があるとの見方を発表
https://www.minecraft.net/en-us/article/minecraft-and-nfts
2.3. DeFi
2.3.1. Stablecoin
●アルゴリズムStablecoinを巡る様々なイベントが起きた中で、相対的な安全性を、①清算・ペグ維持のアルゴリズム・②裏付けとなる担保に分けた上で、(その破綻は)「アルゴリズムを使用した結果破綻するのではなく、むしろ担保の設計に起因している」と指摘している
担保の設計リスクは、「1) Stablecoinのmintに要する担保の量」「2) 担保を構成する資産の質」に大別できるとし、アルゴリズムStablecoinのカテゴリーから「担保不足のペッグコイン」(内生的担保を使用するものを含む)を分けて評価することが最善だと述べている。
1) Stablecoinのmintに要する担保量の評価
過小担保(1$のStablecoinをmintに1$未満の担保)
完全担保 (1$のStablecoinをmintにちょうど1$の担保)
過剰担保(1$のStablecoinをmint鋳造するために1$以上の担保):最もリスクが低い
2) 担保を構成する資産の質の評価
内生的担保(発行プロトコルに固有):デススパイラルに陥りやすいため、大きく割り引いて評価する必要
外生的担保:リスクが低い
●Circle、Stablecoinのポリシー原則を発表
https://www.circle.com/blog/payment-stablecoin-policy-principles
2.3.2. 概論
●CoinGeckoの四半期レポート(2022 Q2)日本語版
2.4. DAO
●Balaji Srinivasanが発表した「The Network State: How To Start a New Country」
https://thenetworkstate.com/
●「The Network State: How To Start a New Country」に対するVitalikの論評記事
https://vitalik.ca/general/2022/07/13/networkstates.html
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.5.1. 欧州
●BNP Paribas、Fireblocks ・ METACOと協業でデジタルアセットカストディ参入
Section3: Regulation
3.1. グローバル
●世界経済フォーラムWEF、暗号通貨とStablecoinがもたらすマクロ経済への影響に関するホワイトペーパーを発表
https://www.weforum.org/whitepapers/the-macroeconomic-impact-of-cryptocurrency-and-stablecoins/
3.2. 欧州
●英国、金融サービス・市場法案において、stablecon および と所謂「デジタル決済アセット」を支払い形態として規制へ
3.3. アジア太平洋ほか
●パラグアイ議会、マイニング向け税制・規制の枠組みを定める法案を承認。
この法律の規制枠外でマイニング活動を行ったり、暗号資産サービスを提供したりする個人または法人を制裁するもの。
3.4. 日本
●資金決済法、犯罪収益移転防止法等の改正 (ステーブルコインに関する規制の導入)について
https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/220719_2.pdf
●【金融法】資金決済法、犯罪収益移転防止法等の改正(ステーブルコインに関する規制の導入)について | アンダーソン・毛利・友常法律事務所
https://www.amt-law.com/publications/detail/publication_0025263_ja_001
●JVCEAが目的全体を脅かす危機に陥っているとする、FT記事。
「どんな審議をしたのか、意思決定のプロセスはどうなっているのか、なぜこのような状況になったのか、役員の責任はどうなっているのか」などが不明である旨、
金融庁から厳しい警告を受けていたとのこと。
https://www.ft.com/content/75a05077-6ac8-4365-a8c5-28fc8928b505
●Web3と国家戦略~基礎編~|増島雅和|note
https://note.com/masamasujima1976/n/n850a490d55b7
●「アンホステッドウォレットについての政策対応」「アンホステッドウォレットの「国富」」などについて
Web3と国家戦略~実践編~|増島雅和|note
https://note.com/masamasujima1976/n/n97b872b05645
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