クリプト・web3をめぐる今週のニューストピックを、①テクノロジー(Bitcoinなど)・②ビジネス(ペイメントやDeFi・NFTなど)・③規制まわり、で振り返る。
今週の注目トピックは、
中国の杭州インターネット裁判所、NFTの著作権侵害訴訟で初の判決
金融庁、分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスクに関する研究結果報告書を発表
Zionがv2となる「Decentralized Web Platform」を使用したWeb5アプリを発表
OpenSea、盗作やIP侵害・不正行為から保護するための取組みを発表
何がデジタル資産を強くするか - Bitcoinの源流の学会でブロックチェーンの成熟を考える -
IMF、「デジタル通貨とエネルギー消費」と題するペーパーを発表
BIS、DeFiレンディングについて速報レポートを発表
CelsiusとstETHのケースが示した「DeFi > CeFi」について
Polygonがコンテンツ大国の日本で拡大する4つの利点
ナイジェリア、金融包摂に向けて非スマホでもCBDC利用可能に
Circle、USDCと同じEuroバックとしたフルリザーブモデルのStablecoin 「Euro Coin (EUROC) 」を発行
AmexとAbraが協業し、Amexネットワーク上でのAbra Crypto Card ローンチを発表
Section1: Technology
1.1. Bitcoin
1.1.1. L2:Lightning Network
●Bitcoin Lightning Networkの開発者コミュニティDiamond Handsの活動サポート決定のお知らせ|株式会社オープンハウスグループ
事業での実装を目指して共同研究をはじめ、コミュニティと相互理解を計りながら、下記のような研究をしていく旨。
事業会社によるフルノードの運営
フルノードを利用した高セキュリティなデータ保管や不動産内でのパーソナクラウドの構築
住宅関連のIOTマイクロペイメントでの活用
ルーティングに関する情報収集
海外企業のLightning Network実装に関するレポート、業務提携の模索
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000181.000024241.html
●オープンハウスとLightning コミュニティDiamond Handsの提携について。
不動産トランザクションにおけるBitcoin Lightning Network利用にむけて、ビジネスむけ基盤の実践や研究を進める。
フルノード運用を通じてエコシステム理解を深めるとも。
●Bitcoin Pizza Day 前夜祭 〜Lightning Network決済を楽しむ会〜
Umbrelでうまくいかなかった原因を検証
Umbrelの中のLNDの操作
お店に導入してもらうウォレットの選定
https://tech.bitbank.cc/20220616/
●Zionがv2となるWeb5アプリを発表。Blockから新しくリリースされた「Decentralized Web Platform」を使用
アカウントを作成すること無くウェブサイトにログインできる
新しいストリーミングサービスに切替えても、自分の好みを維持できる
TwitterやInstagramを離れても、すべてのコネクションを持ち運べる
Lightning Networkが、モバイルアプリとリレーにおけるネイティブ決済インフラ
https://blog.zion.fyi/announcing-zion-v2-a-web5-app-44ac7d66b1e1
https://github.com/getZION/relay
●HTLCを用いたLightning Networkのペイメントルーティングについて
https://dev.to/tvpeter/routing-payments-in-lightning-network-using-htlcs-51fp
1.2. Ethereum
1.2.1. L1
●金曜日の Ethereum Core Dev call で、Proof of Work マイナー向けDifficulty Bomb を予防措置として延期することが決定。しかし、この動きが「Mergeを遅らせることを意味するものではない」とし、今夏に予定される Mergeが遅れることはないとしている
1.3. 他チェーン・要素技術
1.3.1. 他チェーン
●Polygonがコンテンツ大国の日本で拡大する4つの利点【インタビュー】 | coindesk JAPAN | コインデスク・ジャパン
https://www.coindeskjapan.com/149121/
1.3.2. 要素技術
●何がデジタル資産を強くするか - Bitcoinの源流の学会でブロックチェーンの成熟を考える -
https://www.craft.do/s/29JaZFNHHitOP0
Section2: Business
2.1. アダプショントピック
2.1.1. ペイメント
●AmexとAbraが協業し、Amexネットワーク上でのAbra Crypto Card ローンチを発表。米ドルトランザクションに対して暗号通貨でのリワードを得られるというもの
https://techcrunch.com/2022/06/10/american-express-us-crypto-rewards-credit-card/
2.1.2. 投資
●Coinbase、18%の人員削減を発表
●BlockFi、従業員数を約20%削減する旨を発表
2.2. NFT
2.2.1. NFTエコシステム
●OpenSea、盗作やIP侵害・不正行為から保護するための取組みを発表。
新たな認証システムにより、本物のアカウントとコンテンツを明確に識別する他、コピーミント防止システムや検索機能の改善など。
コピーミント防止システムは、画像認識技術を使ってNFTをスキャンし、反転・回転・並べ替えなどによる重複の可能性を特定するもの。
また、主たる権利者と協力の上で、自動削除に向けた画像検出モデルを構築開始中としている。
https://opensea.io/blog/announcements/our-efforts-to-curb-fraud-and-plagiarism-and-whats-next/
2.3. DeFi
2.3.1. レンディング
●レンディングサービスのCelsius、出金・スワップ および 口座間の移動を一時停止と発表
https://blog.celsius.network/a-memo-to-the-celsius-community-59532a06ecc6
●BIS、DeFiレンディングについて速報レポートを発表。
DeFiレンディングプロトコルへのロック額は、2022年初頭には500億ドルに達した。貸し手は高金利に魅力を感じる一方、借り手は、レバレッジエクスポージャーを得たりポートフォリオを調整している。しかし、最近Terraが崩壊し、Celsiusが出金を制限したことによって、信頼が揺らいでいる。
DeFiレンディングの特徴は、暗号資産担保に大きく依存すること。これは、DeFiの市場参加者は匿名であるため、インフォーマルな評判に頼るといった、従来の審査手法で借り手のリスクを評価できないことに起因する。
金融仲介者は歴史上、情報処理能力の向上に注力してきたが、DeFiレンディングは情報収集を行わずに仲介を行おうべく、借り手に担保を求めている。こうした担保中心モデルでは、借り手は既に資産を保有している必要があるため、金融包摂のメリットが損なわれてしまう。担保ベースの融資は、十分な資産を持つ人だけに提供され、富の少ない人は除外されるため、匿名性と担保への依存は「金融の民主化」というDeFiの願望とは相容れない。
暗号資産担保への依存は、現実世界でのユースケースを妨げる。今後DeFiレンディングが実体経済に貢献していく上では、実体資産のトークン化(技術的な改善と法的枠組みの更新の両方が必要)と、情報処理の改善(信用スコアリングと評判の構築を可能にする本人確認)が必要となる。
ただし、これらの進歩は、システムを一層集中化させるため、DeFiと従来の金融の区別を曖昧にする可能性がある。
https://www.bis.org/publ/bisbull57.pdf
2.3.2. Stablecoin
●Circle、USDCと同じEuroバックとしたフルリザーブモデルのStablecoin 「Euro Coin (EUROC) 」を発行
https://www.circle.com/en/euro-coin
2.3.3. 概論
●金融庁 | 分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスクに関する研究 研究結果報告書 株式会社クニエ
主要プロジェクト調査としてUniswap・DAI・Aave、インシデント事例としてThe DAO・Flash Loan Attack・Ronin Network等をあげた上で、運用・開発・ガバナンス・金融市場との関わりにおけるリスクを特定し、それらのリスク低減策を分析している
https://www.fsa.go.jp/policy/bgin/ResearchPaper_qunie_ja.pdf
https://www.fsa.go.jp/policy/bgin/ResearchPaper_Summary_qunie_ja.pdf
出典:「分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスク等に関する研究」 研究結果報告書(概要版)スライド
●CelsiusとstETHのケースが示した「DeFi > CeFi」について
流動性プロバイダーがETHを引き出し、主要なstETHホルダー(Alameda Research等)がポジションを終了した結果、stETH/ETH比率低下によるダメージを被っているのは、CeFi。
Celsiusは、stETHに大きなエクスポージャーを持っているが、DeFiプラットフォームではなく、銀行のようなもの。
今回のCelsiusとstETHのケースは、DeFiのユースケースである透明性の重要性を再確認させた、としている。
https://newsletter.banklesshq.com/p/zero-degrees-celsius-lite?s=r
2.5. 金融機関のデジタルアセットサービス
2.5.1. 米国
●JPMorganのOnyx Digital Assets、institutional-grade DeFiプランをConsensus 2022で発表。
米国債やMMFをトークン化することでDeFiプールの担保として使用できると。
また、W3C verifiable credentialsを使ったデジタルIDレイヤーを組み込むことで、KYCを可能にする考え。
2.6. 中銀デジタル通貨
2.6.1. グローバル
●IMF、「デジタル通貨とエネルギー消費」と題するペーパーを発表。
デジタル通貨同士や既存の決済システムと比較し、環境に優しいCBDCの設計のための示唆を導くとしている。
現金・カード・銀行決済など、決済にはエネルギー・環境のコストが無視できないものになっている。
暗号資産のエネルギー消費量は、①合意メカニズムがPoWかどうか・②パーミッションレスシステムかパーミッションドネットワークかという、DLTネットワークの2つの設計要素によって大きく異なる可能性がある。
設計オプションによっては、現行の決済システムと比較して、より高いエネルギー効率を実現することが可能。
CBDC は、現在の決済システムよりもエネルギー消費量の少ないインフラを使用するように設計することも可能。
●Visa Economic Empowerment Institute、CBDCを検討する政策立案者むけレポートを発表
2.6.2. アジア太平洋ほか
●ナイジェリア、金融包摂に向けて非スマホでもCBDC利用可能に。
SMSと同様に動作するUSSD(Unstructured Supplementary Service Data)コードを使用することによって、決済サービスを拡大。
●香港HKMA、イスラエル中銀およびBIS Innovation HubとリテールCBDCの共同研究「Project Sela」を発表。
リテールCBDCにおけるサイバーセキュリティ問題を扱い、2022年末までに完了予定
https://www.hkma.gov.hk/eng/news-and-media/press-releases/2022/06/20220617-3/
2.7. デジタル証券
2.7.1. 日本
●「国内セキュリティトークン / デジタル証券業界カオスマップ 2022」を発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000023933.html
Section3: Regulation
3.1. アジア太平洋ほか
●中国の杭州インターネット裁判所、NFTの著作権侵害訴訟で初の判決。
NFTはデジタル商品であり、NFT販売は契約に別段の定めがない限り、アートの知財の移転やライセンスを意味しないこと、などを示している。
無許可NFTの販売は、著作権者の「頒布権」を侵害するものではなく、代わりに「情報ネットワークによる通信権」を侵害するもの。
NFTの正当な創作者は、単に原著作物の複製物を保有する者であるべきではなく、原著作物の著作権を保有する者、又は正当なライセンスを取得する者であるべき。
NFTプラットフォームの審査義務は、通常のECプラットフォームより相対的に高くなるはず。
NFTビジネスは、その性質上、より多くの「信頼(trusts)」を必要とする。
NFTプラットフォームにとって、NFTの原作品の著作権所有に明らかな欠陥がないことを確認することは極めて重要。
そうでなければ、NFT取引のチェーン全体が非常に不安定になり、すべての関連当事者の利益が損なわれる。
NFTプラットフォームは、プラットフォーム上のNFT販売から手数料を受け取るため、より高い水準の注意義務を負う必要がある。
NFTプラットフォームは、審査メカニズムを確立し、各原作物の著作権所有権を確認するために合理的な努力を払うべき。すなわち、ユーザーがプラットフォームを通じて作品に基づくNFTをmintする前に、著作権所有権を証明するための証拠の提出を求めるべき。
NFTプラットフォームは、権利侵害NFTの拡散を阻止するための効果的な削除メカニズムを備えるべき。例えば、所定アドレスに当該NFTを送ることによって、burnの上で流通から排除するなど。
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